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読まれるエンタメ物語のテンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
第1章:基本のテンプレ

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13/24

13フェイズ理論

やあ(´・ω・`)


ようこそ、主人公の成長のための構成「13フェイズ理論」へ。


これまで三幕構成をベースにした様々な型(三幕八場、10点構成、英雄の旅など)を紹介してきた。これらは主にハリウッドの土壌で育った強力な武器だ。


だが、日本のクリエイターの中には、アメリカ産のテンプレはどうもしっくりこないと感じる人もいるだろう。そんな君に紹介したいのが、「13フェイズ理論」だ。


これは、三幕構成という大きな箱を、主人公の局面フェイズの変化という視点で13のステップに精密に刻み直したものだ。納得させるストーリーを作る鍵として挙げられ、幅広く応用できるとされる。


俺たちの連載テーマである「読者の期待を外さない」という点において、この13フェイズは恐ろしく相性がいい。


なぜなら、これは幕という広い空間で作家を迷子にさせるのではなく、「今、主人公の精神状態はどういう局面か?」という細かな節目で現在地を教えてくれる、最強のコンパスだからだ。


今日は、この13フェイズ理論をWeb小説にどう組み込むかを叩き込もう。


◆ ◇ ◇ ◇


1. 13フェイズ理論とは何か?


13フェイズ理論とは、日本の映像産業で活躍した金子満氏が、普遍的な物語の分析から導き出した構成論だ。この理論の最大のテーマは「変化をいかに納得させるか」にある。


三幕構成において主人公は必ず変化(成長)するが、「なぜその変化が起きたのか?」「どうすれば観客はその成長を嘘くさくないと感じるか?」という問いに対する、ひとつのアンサーだ。


まず用語から整理しよう。


フェイズ(Phase)とは局面、段階、相の意味だ。ストーリーをイベントの羅列ではなく、局面の変化(状況や心理状態が変わること)に応じて分割していく考え方だ。


金子氏の膨大な過去作品分析から導かれたストーリーが最も面白く転がり、観客の感情が揺さぶられる変化が、次の13段階だ。


1.日常(主人公の問題・欠落)

2.事件(日常を壊すきっかけ)

3.決意(問題に立ち向かう決意)

4.苦境(未知の世界で壁にぶつかる)

5.助け(師匠や仲間、アイテムによる導き)

6.成長・工夫(助けを得て前進する)

7.達成・転換(前半の山場。大きな成果を得る)

---(ここから後半)---

8.試練(新たな壁。ここで助けが消える)

9.破滅(古いやり方が通用せず、どん底に落ちる)

10.契機(立ち直るためのヒント、自己覚醒)

11.対決(最後の勝負)

12.排除(障害・敵を排除する)

13.満足(フェイズ1の問題が解決された状態)


流派によっては、物語の前提を示す「0.背景」を置くこともあるが、そこには主人公のアクションがないので、あくまで「主人公の13フェイズ」として解説する。



この理論の最も美しく、そして残酷なギミックは、真ん中にある。


前半(フェイズ4〜7)は、「助けのある成長」だ。師匠が教えてくれる。チートスキルが助けてくれる。仲間が守ってくれる。そのおかげで主人公は成長し、フェイズ7(転換)で一見大成功を収める。


だが、後半(フェイズ8〜10)は違う。「助けのない破滅」だ。師匠が死ぬ。チートスキルが封じられる。仲間と離れ離れになる。


これまで頼っていた杖(助け)を奪われ、主人公はフェイズ9(破滅)で徹底的に叩きのめされる。

そして、誰の力でもなく、自分自身の内面からフェイズ10(契機)を見つけ出し、立ち上がる。


「助けのある成長」から「助けのない破滅と自立」へ。


これが、主人公の説得力のある変化を生み出す最強のエンジンなんだ。


◆ ◇ ◇ ◇


2. 13フェイズ理論の使い方


使い方のコツ

・13個のイベントのチェックリストを作るのではなく、13回の局面変化表を書くこと。

・各フェイズの時間は一律じゃなくてもいい。一瞬で終わることもあれば、長く続くこともある。

・作品によっては特定のフェイズがないこともある。

・作品によっては特定のフェイズのまとまりが繰り返されることもある。


これらに気を付けて、各フェイズを見てみよう。



■第1幕(対立:問題の提示)


【フェイズ1:日常】

主人公の現在の状況と、抱えている「問題・欠落」を提示する。

主人公がいかに未熟か、あるいは不遇な環境にいるかを描く。読者が「応援したい」と思うための共感の土台作りだ。


例:無能と蔑まれる村の少年。/社畜として擦り切れた毎日を送るサラリーマン。/王子に愛されず、冷遇されている悪役令嬢。



【フェイズ2:事件】

日常を破壊し、主人公を否応なく巻き込む「きっかけ」。


この事件が起きなければ、主人公は一生フェイズ1のぬるま湯(あるいは地獄)にいたはずだという、強烈な外的要因が必要だ。インパクトのある「つかみ」を設定するのがコツだ。またこのフェイズを最初にもってきてそのあとに日常を入れてもOKだ。


例:突然のトラック転生。/理不尽な婚約破棄宣言。/勇者パーティからの追放。



【フェイズ3:決意】

問題に立ち向かい、未知の世界へ踏み込む「決意」。


ここで第1幕が終わる。事件の結果、戸惑いや拒否を経て、やるしかないと腹を括る。あるいは不可抗力で境界線を越える。ここから主人公の目的(生き残る、復讐する、幸せになる)が確定する。作品の方向性はここで決定する。


例:追放された辺境で生きていくと誓う。/「こんな国、こっちから捨ててやる」と新天地へ向かう。



■第2幕(葛藤:成長と破滅)


ここからが13フェイズの真骨頂だ。第2幕は「前半(4〜7)」と「後半(8〜10)」で明確に性質が変わる。


《前半:助けのある成長》


【フェイズ4:苦境】

未知の世界(第2幕)に足を踏み入れた主人公がぶつかる最初の「壁」。


決意したはいいが、右も左もわからず苦戦する。以前の常識が通用しないことを思い知らされる。読者に「簡単にはいかないぞ」とプレッシャーをかける。自分一人では解決できないような事態に陥る。


例:異世界の魔物にボコボコにされる。/辺境の土地が荒れ果てていて作物が育たない。/商売を始めようとするが、ギルドに邪魔される。



【フェイズ5:助け】

苦境を打破するための「導き」が現れる。


主人公を導く「師匠」「仲間」、あるいは「チートスキル」「伝説の剣」「システムメッセージ」でもいい。主人公を上のステージへ引き上げる外部からのサポートだ。


例:大賢者の幽霊に出会う。/ユニークスキル「超鑑定」が覚醒する。/追放先で心優しい獣人たちに助けられる。



【フェイズ6:成長・工夫】

助けを得て、主人公が学び、努力し、「前進」する。


師匠の教えを実践する、あるいはチートスキルの使い方を工夫する。主人公が目に見えて強くなり、状況が好転していく。読者が最もストレスフリーに俺TUEEEを楽しめるパートだ。苦境でもやっていけるという成長を書くことが大事だ。


例:スキルを使って領地をどんどん開拓する。/仲間と共にダンジョンをサクサク攻略する。/新しい魔法を開発する。



【フェイズ7:達成・転換】

前半の最大の成果(山場)。偽りの勝利。


ミッドポイントに該当する。助けを得て成長した結果、中ボスを倒すなどの大きな成功を収める。だが、これは借り物の力や外部の助けによる成功に過ぎない。この後、必ず落とし穴が待っている。絶対にやってはいけないのはすべての問題を解決させること、内面の問題など依然として問題を残すことが大事。そうでないと物語が終わってしまう。


例:街を脅かす巨大魔物を倒し、英雄扱いされる。/商会が大成功し、莫大な富を得る。/ヒロインと結ばれ、幸せの絶頂にいる。



《後半:助けのない破滅と自立》


【フェイズ8:試練】

主人公から「助けを奪う」。新たな壁の出現。


ここから空気が一変する。フェイズ5で得た助けが消える、あるいは通用しなくなる。主人公は自力で立ち向かわざるを得なくなる。最初は何とかなるが、徐々にうまくいかなくなる試練がやってくる。


例:頼りにしていた師匠が殺される。/チートスキルが敵の結界で封じられる。/味方だと思っていた仲間に裏切られる。



【フェイズ9:破滅】

自力ではどうにもならず、大失敗して全てを失う「どん底」。


古いやり方(借り物の力)にしがみついた結果、最悪の事態を招く。主人公のプライドはへし折られ、読者も絶望を味わう。ここでしっかり落とさないと、次の復活のカタルシスが生まれない。


例:敵の罠にハマり、手に入れた領地も財産も奪われ、牢屋にぶち込まれる。/ヒロインが洗脳されて敵に回る。/「俺の力なんて、結局偽物だったんだ」と泣き崩れる。


【フェイズ10:契機】

どん底の中で見つける、立ち直るための「新しい気づき」。


誰の力でもない、自分自身の内面から解決策を見つけ出す。自分の弱さ(フェイズ1の問題)を真正面から認め、それを乗り越える覚悟を決める。ここで主人公は「真の自立」を果たす。


例:牢屋の中で、亡き師匠の本当の言葉の意味に気づく。/「チートに頼らなくても、俺にはこれまでの経験がある」と立ち上がる。/絶望の中で、泥臭く剣を握り直す。



■第3幕(変化:解決と満足)


【フェイズ11:対決】

自立した主人公が、最後の勝負の舞台へ向かう。


第3幕への突入。もう迷いはない。覚醒した主人公が、全てにケリをつけるために敵の本拠地へ乗り込む。


例:牢屋を脱出し、単身で魔王の城(あるいは憎き王子のいる王城)へ乗り込む。



【フェイズ12:排除】

自分自身の力と工夫で、敵(障害)を完全に「排除」する。


クライマックスのバトルや断罪劇。フェイズ7(借り物の力での勝利)とは違う、本物の主人公の力による勝利を描く。大事なのは成長した主人公の力で勝利をもぎ取ることだ。


例:チートなしの純粋な剣術で敵の急所を突く。/自らの言葉と集めた証拠で、悪役たちを完全に論破し、社会的地位を剥奪する。



【フェイズ13:満足】

フェイズ1の「問題」が解決され、新しい自分になった状態を示す。


敵を倒して終わりではない。主人公の内面的な欠落が埋まり、「精神的な満足」を得て物語が幕を閉じる。


例:過去のトラウマを乗り越え、本当の仲間たちと笑顔で乾杯する。/復讐を終え、誰にも縛られない自由な生を謳歌する。



【メリット】

・成長を設計できる:13フェイズなら、「助けがある区間」と「助けがない区間」を分けることで、ご都合主義ではない真の自立(成長)を描ける。

・連載向けの落とし穴センサー:フェイズ9(破滅)と10(契機)があるおかげで、中盤がぬるま湯になりにくい。破滅→契機のセットは、読者の心拍数を強制的に跳ね上げる劇薬だ。

・個性を殺さない:先述の通り、これは局面の変化の型だ。「どう破滅するか」「どう立ち直るか」の描写に、君の変態的な性癖や個性を全振りできる。


【デメリット】

・イベントの羅列になりやすい:フェイズを埋めることが目的になると、ただの工程表になる。各フェイズは前の局面から精神状態がどう変わったかが命だ。

・フェイズ9(破滅)の履き違え:ここを「ただの胸糞展開」や「過剰な悲劇」にすると読者が逃げやすい。破滅は、主人公を絶望させるためのものではなく、次のフェイズ10(契機)で自立させるための必然的な底でなければならない。



◆ ◆ ◆ ◇


3. Web小説での使い方


Web小説、特になろう系やカクヨムのランキング作において、この13フェイズは劇薬になる。


なぜか?


今の量産型テンプレといわれるWeb小説の多くが、フェイズ4〜7(助けのある成長)だけで無限ループしているからだ。「女神にチートスキルをもらう(助け)」→「無双する(成長)」→「ヒロインにモテる(転換・成果)」→「また別の街で無双する」……。


一部のWeb読者はストレスフリー展開を求めているから、これでも読まれる。だが、それだけでは「消費されるだけのファストフード」にしかならないし、ある程度同じ展開が続けば確実に飽きられる。作者も途中でネタ切れする。そしてエタって、別のテンプレ作品に浮気される。


またWebでは読まれるけど、本では売れないという現象にもつながる。だって本で買わなくたって似たような作品はWebにごろごろ落ちてるしな。君の書いた作品じゃなくてもいいんだ。


もしフェイズ4〜7だけで無限ループしたいならそれ以外の部分、例えば個性的なキャラクター、個性的な設定、描写の上手さなど別の差別化要因が必要だ。


ストーリーだけで他との差別化をしたいなら、フェイズ8(助けの喪失)とフェイズ9(破滅)から逃げてはいけない。



【Web小説向けの運用目安】

Web小説での一番のコツは、13フェイズを長編作品全体(全1000話)に当てるのではなく、本一冊くらいの文量、例えば30話の章ごとに当てることだ。


長編連載では、局面の切り替えがこまめに起きないと読者がダレるからだ。


フェイズ1〜3(導入:1〜5話):できるだけ早く駆け抜けろ。Web読者はここが遅いとブラウザバックする。「日常」は最小限でいい。


フェイズ4〜7(前半:6〜15話):「助けと成長」を、短い成功と短い代償で刻む。フェイズ7(転換)を、その章の中ボス戦などの山場にしてカタルシスを与える。


フェイズ8〜10(後半前:16〜20話):ここが最重要だ。「助けの喪失→破滅→契機」は、絶対に間延びさせるな。破滅(絶望)を何話も長引かせると、Web読者は胸糞悪いと逃げる。谷底に落としたら、すかさずフェイズ10(契機)のロープを垂らして、読者に酸素(希望)を渡せ。


フェイズ11〜13(終盤:21〜30話):「対決→排除→満足」を伏線回収の連打として短く強く描く。



【よくあるWeb小説の失敗とフェイズ診断】

自分の小説がつまらないと思ったら、この診断を使え。


【症状】中盤がダレる、同じことの繰り返しになる

【原因】フェイズ4〜6が「修行・説明・小勝利の繰り返し」になっており、局面が変わっていない。だからフェイズ7(達成・転換)が山場として機能していない。


【症状】主人公の成長が薄っぺらい。俺TUEEEに飽きる

【原因】フェイズ8で「助け(チートや仲間)」が消えず、後半も誰か(あるいは強力なスキル)が何とかしてくれている。自力で這い上がる「破滅・葛藤」がないから、成長が浅く見える。チートを一度封印しろ。


【症状】シリアス展開を入れたら読者が激減した

【原因】フェイズ9(破滅)がただ苦しいだけの胸糞展開になっており、フェイズ10(契機・希望)の提示が遅すぎる。読者は快楽への戻り道を失って離脱したのだ。


逆に、熱狂的に支持される作品は単純だ。


「助けのある成長」で読者を気持ちよくさせ、「助けのない破滅」でハラハラさせ、最後に自力で立ち上がって最初の問題を解決する。


この落差ギャップこそがエンターテインメントの正体だ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


金子満の13フェイズ理論は、三幕構成を局面変化の指標として13に刻み、主人公の説得力ある変化(自立)を作るための、極めて実践的な実務テンプレだ。


あなたの次の章(または作品)について、各フェイズを1文で埋めてみてくれ。内容が薄くてもいい。だが「前の局面から何が変わったか」だけは必ず意識しろ。


1.日常:主人公の「問題・欠点」は何か?

2.事件:日常を引き裂く「きっかけ」は?

3.決意:未知の世界へ踏み込む理由は?

4.苦境:どんな「壁」にぶつかる?

5.助け:誰(何)が「導いて」くれる?

6.成長:助けを得て、どう「前進」した?

7.達成:前半の「最大の成果(山場)」は?

8.試練:どうやって「助け」を奪う?

9.破滅:自力ではどうにもならない「どん底」は?

10.契機:立ち直るための「新しい気づき」は?

11.対決:最後の勝負の舞台は?

12.排除:どうやって障害を打ち破る?

13.満足:フェイズ1の問題はどう「解決」され、どんな自分になった?


この13行が埋まれば、君の物語は決してブレない。連載中に「今、何を書けばいいんだっけ?」と迷子になっても、「今はフェイズ8(試練)だから、主人公から武器を奪う局面だ」と即座に復帰できる。


さあ、主人公を徹底的に甘やかし、そして絶望のどん底に叩き落としてやれ。


今回は以上だ。解散!

【参考】

沼田やすひろ (著), 金子満 (監修), 超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方

沼田やすひろ (著), 金子満 (監修), おもしろいストーリーをつくろう

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