第21話「誓いの二人」:A1
「クソッタレ……!」
悪態をつきながら、ゼライドがまた一機エイグを撃退する。
それ自体は大した労力は要さないが、如何せん数が多すぎる上、まるで獣を相手にしているかのようなのだ。
赤く光る双眸や、野性的で不規則な機動がよりそう思わせる。
なにより、浮遊したまま怪しい光を放つばかりで動かないルーフェンが常に気がかりであった。
一度姿を消せば次に何が起こるか分からない以上、常に気を配る必要があり、無駄な消耗を強いられている。
(イアル、通信は!?)
『駄目です、どれも通じません。ファイド・クラウドに逃がす気はないようです』
(つうか、この勢いはPLACEを潰すついでに見えるな……!)
多数のエイグはそのすべてがブリュードの二人を狙っているわけではなく、そのまま共通の目的地を目指しているように見える。
PLACEの前線基地がどこにあるのかは不明だが、ファイドは把握していても不思議ではない。
(てこたァ、ほっときゃ勝手にPLACEと三つ巴になるか?)
『それまでに彼女のルーフェンが動かないことが前提になりますが……』
(……なんで動かねえんだ、アイツ?)
また一機蹴飛ばしながら、ルーフェンを一瞥するゼライド。
出撃した以上は、何か目的があるはずなのだが。
まさか、ただの威圧ということはないだろう。
その気になれば、次の瞬間には自分たちを粉々にもできるはず――怪訝さを強めた矢先、脳内のレーダーと視線の先からルーフェンが消えた。
「ッ!!」
反射的に、ゼライドの全神経が警戒心を強めた。
どこから来るのか、雑兵を蹴散らしながら感覚を研ぎ澄ませる。
しかし、いつまで経っても攻撃される様子はない。
自身だけが高速で移動しているというのならば、何秒も事が起きないのはおかしい。
考えられるのは、ただ一つ。
(……ボウズのところに――!?)
刹那、空中で何かが爆発した。
否、衝突が何倍ものエネルギーとなって伝播したのだ。
そして、そこにいたエイグすべての体勢を強制的に崩し、何が起きたのだと目を奪わせる。
「――ァァァァァアアアアアアウトォォォォォォォ――――――ッ!!!!!」
徐に、ピントを合わせるように。
金属を摩擦するような甲高い音が、聞き慣れた少年の絶叫に変わっていく。
そこにあったのは、ぶつかりあう翡翠色と至極色の炎。
二つの『紅蓮』が、想いの花弁を散らしながらそこに咲いていた。




