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未来への約束 最終話

「静香…好きだ…好きなんだ!」

痛みを感じるほど強く抱き締める流。

静香はそっと流の背中に手を回し、目を閉じた。

「静香」

流も抱き締めていた手の力を抜き静香と同じように目を閉じた。





長くはないが短くもない、

それほどの時間、何も話さず抱き合っていた2人の沈黙を破ったのは静香だった。

「流」

静香は流の名前を呼ぶと閉じた目を開け、流の肩を押す。

抱き締める力を緩めていた流の腕は肩を押したことですぐに静香を離した。

「私ね!ずっと自分は流のこと見守って支えられるだけで幸せだと思っていた」

「…………」

「でもそんなのいい訳だったの、近づいて拒否されるのが、自分が傷つくのが怖かっただけ」

「…………」

「流の事まだ少し怖いけど、今も大切な人だって思ってる」

静香は深く深呼吸すると1歩後ろに下がり話しを続けた。



「だけどね…今は流よりも大切にしたい人がいるの、強引で我儘そうに見えるけど、とっても優しい人」

顔を歪めつつ静香の話しを黙って聞く流に静香は微笑みかける。

「私が今ここにいられるのはその人がいたからなの。勇気がなくて臆病で情け無い私をずっと見守って支えてくれた、その人の側にいたい」

「…俺じゃ無理なのか?」

「私はその人が…巧のことが好きなの」



その言葉を聞いた流は一言苦しそうに呟いた。

「………そうか」

「流…」

辛そうな顔で呟く流に静香は流の名前を呼んだが、

その後の言葉が思い浮かばず、悲しげに顔を伏せた。

「静香がそんな顔するな……もう行けよ」

「…うん」

静香は落ちていた鞄を拾うと流に背を向け歩きだした。

流が去って行く静香の背中を黙ったまま見つめていると、

歩いていた静香の足が止まり、クルッと流を振り返る。

「流、好きだって言ってくれてありがとう!私も流のこと大好きだったよ!」

静香はそう言うと満面の笑みを見せ、そのまま反対を向き走り去って行った。

「ごめんな、ありがとう」

静香が走り去り誰静まり返る中流はまた呟いた。








「聞いちゃった~」

ガチャッというドアの開く音と共に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「彬」

中山は今出てきた男子更衣室ドアに寄りかかった。

「盗み聞きか悪趣味だな」

「あのな、俺が着替えてたら勝手にお前が告白し始めたんだろ?でっ?どうだった静香ちゃんに振られた気分は?」

中山の笑いを堪えるか様な声に流は中山を睨みつける。

「睨むなよ、俺が散々言っただろ早く謝れって…後悔しただろ?」

「…ああ」

「…ったく本当に面倒な奴だよな流って」

「うるせえ」

「しかたない!俺が慰めてやるか」

流の肩に腕を載せようとしていた中山を無視し、

流はそのまま門に歩きだした。

「オイ流!待てよ!」

中山は笑いながらその後を追いかけた。








静香は学校が見えない所まで行くと立ち止まり息を整える。

(びっくりした…でも流と話せて良かった)

流の告白に驚いた静香だったが、

告白を聞いた時巧への気持ちを流に言ったお陰で、

静香自身も巧への想いを改めて確認することが出来た。

(早く巧に会いたいな…あれそういえば)

そう思った時、静香は巧から

〝学校まで迎えに行くから待ってろ″

というメールが来ていたのを思い出した。

慌てて鞄から携帯を出すと巧からメールが1通と着信が1件残っていた。

メールを見ると

〝今学校に着いたぜ何処にいる?″

と書いてあった。

受信時間は静香が前のメールを見て直ぐの時間。

着信はメールの後すぐに来ていた。

(もしかして見られてたの?もし抱きしめられていたところだったら…)

不安になった静香は、直ぐに巧に折り返し電話を掛けるが、

何度掛けても巧が電話に出る事は無かった。

静香はメールで

〝今どこにいるの?″

と書き巧に送り、学校の近くを闇雲に捜し始めた。



巧がいないか辺りを捜すがいくら捜しても巧は見つからず、

携帯にも連絡はこない。

(どこにいるの?巧が行きそうな所…思いつく場所なんて)

静香は立ち止りしばらく考えると

また走りだした。






公園の中に入った静香は1人でベンチに

俯いて座る巧を見つけ掛け寄った。

手を伸ばせば巧に触れることの出来る距離まで静香が来ると、

巧は急に立ち上がり

「来るな」

今まで静香が聞いたことのない様な低い声を出した。

「え?」

困惑し立ち止る静香に巧は唇の端を上げ喋り始めた。

「何だよアイツはいいのか?抱き合って仲直りしたんだろ?わざわざ俺に別れ話しに来たのかよ、別にいいぜ別れてやるよ、暇で遊んでただけだからな」

「巧…」

静香の呼び掛けにも無視して巧は喋り続ける。

「そろそろ飽きてきたところだったしさっさと「巧!!」」

静香は巧の言葉をさえぎり巧の体に抱きついた。

「…何…してんだ」

「誤解させるような真似してごめんなさい。謝るから…だからそんな顔しないで」

「……そんな顔?」

「巧…泣きそうな顔している」

静香は巧の胸に耳を当てたまま話し続ける。

「確かに流に告白されて抱きしめられたの…その時私抵抗しなかった」

巧の体がビクっと震えた。

「今でも流は私の憧れだから…嫌われているのはやっぱり…悲しかったから、でも流が好きだから抵抗しなかったんじゃないの!私は巧が好き!」

静香は巧にすがり付く様に腕に力を入れた。

「だから、お願い…好きなの、別れるなんて言わないで!」

そう言った静香の頬に一粒上から水滴が落ちていた。

ゆっくり静香が顔を上げると巧の目から涙が零れていた。




「抱きしめられてる静香を見て、ああもう側にいられねえんだって思った…静香がアイツに本気で惚れてるの知ってたからな…静香は優しいからきっと別れたいなんて言えねえだろ?だから俺から別れようって…俺は」

「巧…」

「なあ…ホントは離したくねえよ…ずっと静香の側にいたい」

「離さないで、私もずっと巧の側にいたいの」

「いいんだな?もうお前が離してくれって言っても離さないからな」

「うん!」




静香が笑顔を見せると巧は、

いきなり静香を自分から離し後ろを向いた。

「どうしたの?」

巧の後ろから不安そうに声を掛ける。

「今俺の顔見んじゃねえ!」

自分の手で目元を擦る巧にクスッと小さく笑う静香。

「今私のこと離さないって言ったばっかりなのにもう離しちゃうの?」

「うるせえ!からかうんじゃねえよ」

怒鳴る様に言っても照れ隠しだと分かっている静香は、

そんな巧の言葉も可愛く見えてしかたなかった。

(もう私は大丈夫だ)

そう確信した静香は巧の前に回り込み、

右のポケットから青いハンカチを出すと巧に差し出した。

「使う?」

「おいこれって」

静香が差し出したハンカチを見て驚く巧。

「巧に借りていたハンカチやっと返せるね」

「ずっと持ってたのか?」

「うん…お守りに」

「お守り?」

静香は恥ずかしそうに小さな秘密を打ち明けた。

「1人で不安な時にこのハンカチ触って勇気をもらってたの」

「………」

「今思うと巧の代わりにしてたのかも」

「………」

「ずっと借りててごめんね」

「………」

静香を見つめたまま微動だにしない巧に声を掛ける。

「巧?」

「…あ?…ああ構わねえよ…もう…いいのか?」

「うん…これからはずっと巧と一緒にいるから平気」

「……お前は!!」

「キャ!」

巧は静香の腕を引くとそのままギュッと静香を抱きしめた。



「あんまり可愛いこと言うんじゃねえよ」

「そんなこと…言ってないよ…」

「言ってる…なあ」

「何?」

「俺のこと好きか?」

「…好きだよ」

「ホントか?」

「巧が大好き」

「なあ」

「何?」

「…キスしてもいいか?」

「…えっ」

「嫌なら嫌って言えよ、俺はいくらでも待つ」

「…嫌じゃないよ」

「いいのか?」

「うん」

巧の手がそっと静香の頬に触る。

静香が目を閉じると静香と巧の唇がゆっくりと重なった。







ます最初にお待ち下さっていた皆さま本当に申し訳ありませんでした!!!

次回最終回と言ってから半年以上お待たせしてしまうとは……

謝ることしか出来ないです…ごめんなさい。



この物語では「昔も大事だけれど今を大切にしたい」というテーマで書き始めました。

最初は流と巧のどっちとくっつくか決めずに書き始めたので、

もし流なら昔の約束にこだわっていた流が、

昔の約束よりも今静香ちゃんを大切にしないといけないと思いなおし、

くっつくみたいな話しにしようかなと思っていました。

ちなみにその時の巧は性格が破滅的に悪く

途中で性格悪いことが分かるみたいな感じにする予定でした。

でもよく考えると新しく出会った巧と今を幸せに生きる方がいいのかな?

と思い今の物語になりました。

途中で巧とくっつけようと決めてから、巧の性格は一途ないい奴になりました(笑)



さて長くなってしまいましたが、

この辺りで終わりにしたいと思います。


少しでもこの物語を読んで楽しんでいただけたら幸いです。

誤字脱字の報告、感想などありましたらお待ちしています。

最後までお読み下さりありがとうございました!!


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