↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/12

12.結局何も伝えられない(リーデック視点)

「……用事など、ないのだろう。」


シャルルローズが部屋を出て行きドアが閉まるのを見届けてから、ユリウスに問いかけた。

ユリウスは先ほどまでシャルルローズが座っていたソファに腰を下ろす。


「兄さんにはね。ルルのことが心配だったから、様子を見に来た。」


"ルル"とユリウスが呼ぶことに、思わず眉間を寄せた。


「……さっきから思っていたんだが。いくら学生時代の友人とはいえ、既婚女性を愛称で呼ぶのはどうなんだ?」


ユリウスが俺の目をじっと見る。


「これまで何も言ってこなかったのに、今更だね。」

「…………確かに、今更かもしれないが。」

「大丈夫だよ。社交の場では呼んでない。兄さんも呼んでないのに、弟の俺が呼んでると余計な憶測をされる可能性があるしね。ルルを困らせるようなことは絶対にしない。」


ユリウスは両腕を組むと、難しい顔をした。


「あちらの王子殿下は兄さんがミューゼット妃の護衛をしてるって知ってるの?」

「ご存知のはずだ。」

「それはまた……随分と心が広い方なんだね。」

「…………どういう意味だ?」

「だって普通は嫌だろう。妻の元婚約者だった男が、自分の目が届かない場所で妻の近くにずっと侍っているなんて。」

「…………。」


(シャルルローズが元婚約者の男と会っていたとしたら。)


実際にはシャルルローズは婚約したことはなかったので、元婚約者の男は存在しないが、なぜかユリウスが相手で想像してしまう。

さっき親しげに笑い合ってる二人を見たせいか、鮮明にその情景が浮かんできた。

…………胸の奥がムカムカする。


「……嫌だろうな。」

「ルルもそれは同じだと思うよ?」


そう言われて、ハッとユリウスの顔を見る。

ユリウスの目に怒りが滲んでいるように感じた。


「その顔、やっぱりルルの気持ちなんて何も考えてなかったんだね。それじゃあきっとルルに何のフォローも入れてないんだろ?」

「…………あぁ。」


シャルルローズの気持ちなんて、「ミューゼットが無事であれば喜ぶだろう」ということしか考えていなかった。


(いや、だが……シャルルローズが嫉妬などするだろうか。)


夫婦ではあるが、仮初のようなものなのだ。

俺がシャルルローズに向ける気持ちとシャルルローズが俺に向ける気持ちは違うものだ。


「…………俺がルルを幸せにしたかった。」


切ない想いを必死に飲み込むように、ユリウスが目を伏せる。


(ユリウスも……運命を狂わされたひとりだな。)


全ての事情を打ち明けてしまえば、ユリウスの苦しみも軽くなるかもしれない。

ユリウスは離婚を待って、シャルルローズにすぐに愛を打ち明けるはずだ。


(シャルルローズも……きっと受け入れるだろう。)


ユリウスに向ける気兼ねのない穏やかなあの笑顔。自分に向けるものとは違う笑顔で、そのことに胸がキュッと締め付けられる。

ユリウスなら、シャルルローズを必ず幸せにできる。

ユリウスにならば、離婚後のシャルルローズを安心して託すことができる。


(そう……思うのに。)


結局何も伝えることは出来ず、思い空気のままただ時間だけが過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。