465話目 三層世界一の花婿 ワカミケヌside
ワカミケヌ視点です!
星神様は地上における最大級の神力を誇る神になった。
星神の重力場による時間の速度調節。
ヤマタノオロチの神力で大雨や逆に日照りなどの天変地異による自然災害。
それらを使って脅迫した。
時間や自然、根本的で壮大過ぎるものを盾に脅されたら、ちっぽけな僕たちにはどうすることもできない。
そういうわけで、
尾張の地は星神様に簡単に乗っ取られ、カグヤマ殿を始めとする大和中央国の生き残りたち(以後は”尾張族”とする)は残らず星神様の家来となってしまったのだ。
「あーあ、これからどうなるんだろう………」
僕は溜息をついた。
ここは火上の館のツノヒメの部屋で、ツノヒメはウカノミタマ殿の膝の上ですやすや眠っている。
オシクモは尾張族の御曹司として、これからのことを決める為に会議に頻繁に駆り出されている。
僕はまあ部外者なので、ここでツノヒメたちとまったりと寛いで居るしかない。ここの護衛も必要だしちょうどいいけどね。
「ツノヒメ様は未来の夢を見ておられます。
きっと、この夢見の力で正しい方を指し示すことができるはずです」
ウカノミタマ殿がツノヒメの小さな頭を優しく撫でながら言った。
ウカノミタマ殿はツノヒメの能力に全幅の信頼を置いているようだ。
「うーん、そうかなあ〜」
夢見の力を利用している割には、今回の事といい後手に回っている気がする。
「もっともっと、早く予言できないと意味ないんじゃない?」
前回は夢を見て直ぐに、星神様のミトシ様の身体の乗っ取りが起こったように見えた。悪い出来事には、それに対処できるよう準備期間が必要なはずだ。
「確かにそうですね。ツノヒメ様がお起きになられたら直ぐに夢の内容を聞いてみることにしましょう」
ウカノミタマ殿からは感情というものが感じられない。まるで僕だけがやきもきしているみたいな気分になる。
「あ〜あ、やれやれ……」
ミトシ様もツノヒメも、本物のムラクモも、星神様に人質に取られたようなものだ。
悔しいことに、僕や尾張族の中で星神様へ対抗できる者は今のところいない。
そして、ミトシ様の女王然とした振る舞いに疑問を感じる臣下はいても、ニギハヤヒの末の愛娘ということや、天界に出仕していたキャリアもあり、いずれ一族の重要なポジションを得るだろうと思われていたのもあり、彼女の台頭は下々の者たちには好意的に受け入れられているようだった。
(とにかく、ニギハヤヒの奴が帰ってこないことには尾張族はどうにもならないだろうな)
なんだかんだ一族の棟梁といったところだ。
タギシミミが子分のカラスを使いに送ってニギハヤヒを早く帰すように動いているというけれど………
「僕はツノヒメと一緒に居られればいいんだけどね」
それでも、僕はこのままツノヒメとタギシミミとオシクモを連れて、大和の地に残してきた日向国残党を集めて大和に小さな国を樹立したいと考えていた。
ニギハヤヒが戻る前にここを立ち去りたいのが本音だ。
星神様さえ出てこなければ、と悔しくてしょうがない。
『ここに国を樹立するゾ』
突然、星神様が皆を集めて言った。
(国だなんて、僕と同じ思考回路じゃないか)
権力者が考えることなんて短絡的なんだなと、自嘲する。
「王国樹立、ですか?確かに、この尾張は実質、国の様なものですが……しかし……」
カグヤマ殿が言い淀む。
『何が問題アル?』
「実は、この地は既に最高神の天神が建国した”タカミ天王国”の領国内に当たるのです。
ですから、勝手に別の国を作るのを我々も遠慮していたのですが…………」
『最高神の天神んン?』
「はい。
もちろん言わずと知れたタカミムスビ神です。
天地開闢の始神、造化三神、現在はこの地球三層世界を一手に引き受けていると噂されています」
『……ヤツは、ワシと同じ宇宙神だゾ……』
「あ、そうですよね?では、かの神と面識がお有りですか?建国は問題にはなりませんか?」
星神様は、ここ暫くは尾張湾の上に浮かんで地上を見守ってきたと話していたので、当然タカミムスビ神には出会ったことがあるはずだ。
『……………………』
星神様はなぜか黙ってしまう。
ちょっと顔色が悪いような?
「もしや、力関係が………」
オシクモが僕の後ろでボソッと呟く。
『…………………言ったダロウ。ヤツのせいでワシが空に上がったという話ヲ』
「あ、ああ!そうでしたね!?
そもそも、造化三神でこの三層世界の力を三分していると言われています。他のニ神がお隠れになった分、タカミムスビ神が世界の力を一手に引き受けていると考えられます。最高神ですから圧倒的に強いのは当然ですね。いや、星神様も充分にお強いのですが……」
カグヤマ殿が慌てて言い繕う。
同じ宇宙神とはいっても、ニ神には神力に雲泥の差があるということかな?
『────お前!ワシを愚弄するナ!?
かの宇宙神は、尾張湾をぐつぐつ煮込んではいたが同じく宇宙神であるワシが先にこの地を守護しているのに気づき、驚き慄いて遠くへ逃げて去ったのだろウ!ソウダソウダキットソウダ!』
「え!?ほ、本当ですか?」
カグヤマ殿が目を丸くする。
『ああ!本当ダ!だからこの地に勝手に新しい国を建国することに何の遠慮も要らなイのダ!』
「はあ……」
『よし決めた!!
今からここは“尾張国”だ!
ワシが王だ!みんな分かったナ!!』
「あなた」
「…………」
カグヤマ殿とホヤヒメ様は困ったように顔を見合わせた。
随分簡単に言ってくれるが、この尾張地域はほとんど国のようなもので、寧ろ僕なんかは来た時は国だと思っていた。
建国への準備は既に整っているような状況だろうに、それを、この心ない星神様に全て横取りされるなんて、僕も国を運営する一介の国王だった身として本当に気の毒に思えるのだ。
こうして、ミトシ様に憑依する星神様は強引に尾張国の王となった。
『建国祝賀パーティーを開くゾ!』
「「パ、パーティーですか??」」
星神様の指示によって建国祝賀パーティーの準備が始まった。
文字を書ける僕は大八洲(日本列島)の津津浦浦の有力者たちへ招待状を書く手伝いをさせられている。
タギシミミは部下であるカラスたちを総動員して各地へ届けさせていた。
一部のカラスが憑依したという男アヒラ人間たちは、人間の身体を活用して僕の招待状を書く手伝いをしてくれていた。
人間より識字率が高い元カラスなんて本当に驚きだ。
「というわけでナ。
次にワシに必要なのはオットだな」
「・・・・・・・?」
徹夜で招待状を書きまくる、僕の背後から声がした。
振り返れば、唐突に星神様だ。
回りを見渡して見れば他には誰もいない。
カグヤマ殿とホヤヒメ様は星神様の側近として慌ただしく建国に向けて飛び回っていて館にはいない。もう相手ができるのは僕ぐらいしかいなかったからここに来たのだろうか?
僕は用心して、隣で寝ていたツノヒメを抱っこして答えた。
「”オット”……?ですか?」
聞いたことがない言葉に、失礼にあたりつつも聞き返す。この星神様の言葉のイントネーションはいつもすごく奇妙で分かりにくい。
「ウム、大八洲(日本列島)中で最も強き婿を迎えようと思っているのダ。つまり、三層世界一の花婿ダナ」
「なになに?婿?………あ!もしかして、”夫”………のことですか………?」
「え?何と仰っしゃりましたか?」
ウカノミタマ殿が気配を察知して急いで部屋へ戻って来た。
僕はウカノミタマ殿と目が合い、首を振った。
かの神が何を言いたいのかさっぱり分からない。遥か昔から存在する隕石の神様だなんて、バックボーンが僕とは違い過ぎて何を考えて何を言い出すかなんてこれっぽっちも想像ができないというものだ。
「ワシは大八洲一番の最強の姫、ミトシ姫ダからナ。ワシに相応しい夫が必要だろウ。
ワシと結婚できれバ、もれなくこの尾張国の王になれるのダ。どうだ、光栄ダロウ?」
「えーと、え、遠慮します…………………」
「お前ジャなイ!お前は三層世界一の婿じゃないだろう!」
まさか、この神が誰かと結婚まで考えているとは思いもしなかった。
あれ?性別どっちなの?女なの?
『というわけで、その旨、招待状にシカとしたためヨ』
「え〜!?建国パーティー&お見合いパーティーのお知らせってことですかあ???」
予想外の仕事が追加させられたとなって、僕はつい不満の声が溢れ出てしまう。
大体、既に出してしまった招待状はどうするというのか。
『うむ、ヨ・ロ・シ・ク・ナ』
星神様はニヤッと笑う。
「はあ、なるほど。こんな風にミトシ様の笑顔が美しいのであれば、心を動かされ喜んで婿になる者もいるかもしれませんね。
しかし、結婚が決まるまでは、なるべく口を開かないことをお勧めします」
ウカノミタマ殿が冷静に助言する。
「話し方だけじゃないよ。振る舞いも、他にも色々気をつけることが山ほどあるよ?
いい?
最強の姫君が最強にモテるとは限らないんだからね!」
僕はもっともっと冷静だった。
『何ィィ!!?』
星神様は猛烈に睨んでくるけど、これは事実だ。
重大な事実は隠すことができない。
僕は、ツノヒメを抱っこしている腕にぎゅっと力を込めた。
「本当、恋愛ってシビアな世界なんだから!」
『お、オオぉ…………?』
星神様は新しい世界と聞いて、
ちょっとたじろいだように見えたのだった。
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