↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
PR
18/32

俺達は作戦開始までヤクルス生き残りの蔵前君を預かる事になった…蔵前君は絶対に俺よりも女性経験は少ない!もしかして童貞かも!俺は少しあっちのカーストが上がったと思った。…えへへ。       

カーテンが開けられて暖炉の間に明るさが戻った。


「やれやれ、まだ相当暑いわね~。

 現場の地下は涼しかったと蔵前君が言ってたけど。

 そこに辿り着くまでが大変そうね。

 みんな体調管理をしっかりしておいてね。」


リリーが残りのコーヒーを飲みながら思い出したように言った。


「それと、私達のハンドシグナルは覚えているわよね?」

「ああ、大丈夫だリリー。

 インカムが有ると言っても使えない状況も有るからな。」


四郎が答えてリリーが笑顔になった。


「しかしあの酸を吐き出す奴は厄介だな。

 悪鬼メンバーでも手や足を失うかも知れん。」


明石が呟くとリリーが深刻な顔に戻って頷いた。


「うちであの酸を中和する薬品を作ったけど、実験が出来ないからぶっつけ本場、その時にならないと効くかどうか判らないけどね。

 スプレーと液体入りのボトルを支援班が持って行くわ。」

「まぁ、何もないよりましじゃろ。

 いや、あるだけかなりましじゃの。」

「そうね、はなちゃんの言う通りよ。

 あっ、彩斗達ちょっとこっちに来てくれる?」


リリーはそう言うとダイニングに行った。

俺達がついて行くとリリーが振り向いて困った顔をしながら言った。


「あのね、作戦時まであなた達で蔵前君を預かって欲しいんだけど…。

 私達は作戦準備でしっちゃかめっちゃかで忙しいのよ。

 ここなら自然があってのどかな所だから、蔵前君の傷ついた心も多少は癒せるんじゃないかとね…。

 どう?お願いできるかしら?」

「うむ、お安い御用だ。

 お、彩斗、宜しいかな?」

「俺も賛成だよ。

 皆は?」


皆が頷いてリリーがほっとした表情になった。


「ああ、助かるわ。

 ガスマスクの装着とか蔵前君は慣れているから教わったりしておいてね。」


リリーがそう言うと暖炉の間に歩いて行った。


「彼も大変だな。

 2回も同行したメンバーが彼を残してほぼ全滅だなんてさ。」

「私達で優しくしてあげようね。」

「そうね、彼は凄い状況を生き残った戦士だから、ね、はなちゃん?」


真鈴に言われたはなちゃんが少し俯いた。


「お?はなちゃんどうした?」


喜朗おじが尋ねるとはなちゃんが顔を上げた。


「なんじゃろうか?

 あの蔵前君からの…何と言うか…何かが…いや、良く判らんじゃの。

 じゃが、わらわも彼を受け入れるのに賛成じゃの。

 あの歳で修羅場を潜り抜けてきた奴じゃから温かく迎えてやろうじゃの。」

「かなりの修羅場をくぐって来たばかりだからはなちゃんも蔵前君の心の傷に感化しちゃったのかもね。

 私達で面倒見てあげようよ。」


圭子さんがそう言ってみんなが頷いた。

俺達が暖炉の間に行くと足元に大きなバッグを置いた蔵前君とリリー、リリーがノリッピーと呼ぶスコルピオ隊長と、そして30代くらいの男女2人づつが立っていた。

ノリッピーが一歩前に出て俺の手を握った。


「いや、吉岡君ありがとう!

 うちでも蔵前君の面倒を見たいんだけど今全員が凄い忙しくてね。

 作戦当日までよろしく頼むよ。」


蔵前君が頭を下げて小声で挨拶をした。


「ヤクルスの蔵前信二です。

 御厄介になります。

 よろしくお願いいたします。」


俺は蔵前君の礼儀正しさとさっきの映像を思い出して心が痛くなった。

まだ20代そこそこ、いや20にもなっていないかも知れない田舎風の大人しそうな若い男があの修羅場を潜り抜けて来たと…。


「蔵前君宜しくね。

 ワイバーンの吉岡です。

 自分の家だと思って寛いでね。」

「はい、ありがとうございます。」


四郎達が蔵前君に挨拶をし握手したり肩を叩いたりしてバッグを持ち、暖炉の間に続く書斎に連れて行った。

そこにははちゃんにせがまれて買った大きなベッドもあるので、はなちゃんは真鈴とジンコの部屋に移り、蔵前君を泊める事にした。


「さて、そして司ちゃんと忍ちゃんの護衛を連れて来たんだ。

 普段は岩井テレサの屋敷に勤務している者たちだが腕は立つぞ。」


ノリッピーが護衛の者たちを紹介した。


男と女、悪鬼2人と人間が2人それぞれペアを組んでいた。

男と女の人間の護衛は司と忍の学校の補助教員と言う形で学校内で、男と女の悪鬼の護衛は司と忍の登下校、そして学校周辺を固めると言う事になった。


「明日の午前6時には明石君のマンションに護衛が向かうよ。

 本当はもっと付けたいんだけど、なにせ人手がね。」


ノリッピーがすまなそうに言ったが俺達は多忙な所に護衛を付けてくれて感謝した。


「それじゃ私達はまた別に行くところが有るから失礼するよ。

 護衛の者達は司ちゃんと忍ちゃんに顔合わせの挨拶を済ませてから帰るよ。

 よろしく頼むね。

 ワイバーンに幸運を。」


リリー達は引き上げ、護衛の者達は司と忍と顔合わせをした。

護衛とは言え子供の扱いに慣れているようで司と忍と直ぐに仲良しになったようだ。

自分達に本物の武装した護衛が付いた事で司と忍はかなり舞い上がってはしゃいでいた。

やれやれ子供は気楽だなと思った。


護衛が帰り、俺達は蔵前君の部屋に行き恐縮している蔵前君をなんとか和ませようと話しかけた。

蔵前君は実の父と母が悪鬼になったそうだ。

家族で中華料理店を営み、一人息子の蔵前君は高校を卒業してから親の店を手伝いながら親と共にヤクルスとして悪鬼討伐をしていたそうだ。

蔵前君の両親はカスカベル襲撃の時に命を落としたとの事だった。

蔵前君は今年の四月に20になったとの事だった。

司と忍や加奈が遠慮なく蔵前君に話しかけて少し心配になったが、蔵前君の表情も少し緩んで来た様で時々微笑むようになり安心した。


午前中、ガスマスクの脱着の仕方を心得ている蔵前君の指導で俺達はガスマスクの脱着の訓練、サブマシンガンやピストルとナイフ類のコンビネーションの練習をして、昼食をとる頃には蔵前君も俺達に少し馴染んだようだった。


「蔵前君、あの地下から脱出した後、君はどうしたんだい?」


昼食の時、明石が蔵前君に尋ねた。


「ええ、あの後は樹海を突っ切って侵入前の待機場所に行きました。

 待機メンバーに報告をした後で追手の確認をしながら数時間過ごしました。」


明石が頷いた。


「なるほど、襲撃や侵入してきた奴をわざと1人か2人生かして逃がして置いて追手を掛けて敵の所在をあぶりだすと言うのは戦う集団の常道だからな。」

「ええ、そしてそこで追手が来ない事を確認して更に別の護衛と共に何件かセーフハウスを移動して、それからリリーさんの家に護衛付きでしばらくいました。

 その間にリリーさん達に状況報告をして今日はリリーさんの家からここまで来ました。」

「うむ、なるほど、岩井テレサ達もその辺りの対策はとっているようで安心したな。

 あの書斎にも少し小さいがテレビもあるし、映画や何かを見て気分転換するんだったら暖炉の間にあるのはリリーの家と同じ大きさのテレビが有るから好きに見れば良いぞ。」

「はい、ありがとうございます。」


四郎が言うと蔵前君ははにかんだ笑顔で答えた。


「蔵前君は可愛いわよね~!」

「もっと笑えばきっとモテるよ~!」

「加奈と同い年なのに弟みたいで可愛いですぅ~!」


真鈴達女性陣に蔵前君は評判が良かった。

俺も蔵前君の純朴で奥手な感じを見て、絶対に9回野郎にはまだなっていないと、いやいや、まだ童貞だろうと確信していた。

俺より若い男を俺より女性経験が少ないであろう若い男を迎えて少し嬉しかった。


午後に気分転換も含めてごく軽めのハイキングに出かけた。

屋敷に戻ったら再びサブマシンガンなどのコンビネーション練習と地下での戦いを想定した訓練をする予定だった。

そして夕方に明石一家と喜朗おじはそれぞれの家に帰る事になった。

今日は8月31日で明日の9月1日から学校が始まり、『ひだまり』の営業再開なのだ。


俺がしょったリュックから顔を出していたはなちゃんが囁いた。


「彩斗。」

「うん、何はなちゃん?」


つられて俺も小声で答えた。


「どうやら彩斗は自分よりもあの回数が少ない、いや、経験も無いかも知れぬ年下の男を見て優越感に浸っているようじゃの。」

「…いやいやそんな事は無いよ。

 だけど蔵前君の様子を見ればあまりそっちの経験は…。」

「うきゃきゃきゃ!

 彩斗は甘いのじゃの!」

「え…。」

「蔵前君は既に高校の時に彼女が出来ておって高校を卒業する時にはもう50回野郎にはなっていたじゃの。」

「え…。」

「高校の彼女とは別れたがその後もう一人の女性と付き合ってもう100回野郎にはなっておるじゃの。」

「え…。」

「その彼女とも親がやっている中華料理屋やヤクルスの活動が忙しくて別れてしまったが、彩斗よりもずっと女性経験はあるじゃの。」

「え…。」

「さてさて、彩斗が100回野郎になるのはいつの事じゃの。」

「…。」


足が止まり、地面に両膝をついて俯いてしまった俺に四郎達が声を掛けた。


「お~い彩斗、どうした?」

「…いや…なんでもいないよ。」


…俺は…この中で一番女性経験が少ない事に変わりなかった。

100回野郎…いつになったら辿り着けるんだろうか…それどころかユキと早く会って10回突破を達成しないと…作戦開始まで時間があるのだろうか…俺はあんな気持ちが良い事を一桁の経験で死んでしまうのか…いやだいやだいやだ!

俺は絶対に生き残る!

俺たち全員が生き残って、俺の10回突破パーティーを開くんだ!

俺は固く心に誓った。


え?死亡フラグ?知らねえよそんな事。







続く





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。