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ウラニス戦記  作者: 7s9
第二章 入隊編

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媒覚の均衡変化

第15話 媒覚の均衡変化



導入


ヒュラ

「魔の世界戦のような大惨事が、再び起こるとも限らないっていう抑止力ですか?

メレピンの消耗は、戦闘が行われた両者の間に、媒覚の均衡変化をもたらす、とも聞きます。

媒覚の均衡変化は、空腹感も伴います」


ルーク

「万が一の恐怖が抑止力じゃ、ダメでしょ?」


セルラ

「媒覚の均衡変化は、ただの空腹感程度のものではない。

不可避な感覚面での精神暴力とすら言える。

物理的な身体とは無関係な、平和的武力行使。

それはつまり、原理的な限界がない、って事だ」


ヨダ

「飢餓状態で数年間も死ねない事もある。

そうなれば、精神をまともに保てないのは当然。

自殺者も当然多く、そのような事例は珍しくない」

山場1


ナーク

「幻覚や、場合によっては、不可解な依存症状とかも現れる。

当然、他の感覚にも悪影響をきたし、多くの不快感を味わう」


ヨダ

「平たくまとめると、

媒覚の均衡変化で、多方面に感覚障害。

メレピン枯渇で空腹感と飢餓状態。

感覚障害のうち、第六感に作用すれば確実に幻覚。

幻覚やトラウマを中心に、各種の依存症」


ルーク

「で結局、何が肝心かって言うと、媒覚の均衡変化で、

両者、が誰を指すかだ。

不明な事も多いが、知られている限りでは、メレピンやステレオには、知覚者が認識する社会構成に順応する性質がある」


ヨダ

「それらを利用する共同体内では、媒覚を通して共有される」


セルラ

「つまり、媒覚の均衡変化は、全ての民に適用される。

僕らはこの星全ての民を代表して、代理戦争をするわけだ」


ナーク

「この星の民の全員が巻き込まれるって説明、忘れてたな。

苦しむことになるのは、戦闘員よりむしろ、一般人だ。

負ければ、この星の民全員が無差別に苦しみに巻き込まれる。

ましてや、重い条約を違反するなんて、論外だ。

違反しようものなら、地獄が目に見える」



ルーク

「僕らは、直接の武力行使と破壊を伴う暴力を完全放棄した。

この仮想戦争技術、ステレオは、それと引き換えに、ウラニスの民が手にした武力さ」


ヒュラ

「そもそもステレオを放棄したら、一切の武力を持たない国家を建てたら、どうなるのですか?」


ナークが驚いた顔でヒュラを見た。

セルラが、ヒュラを前に、少し警戒しながら構えた。

ヨダが、何を考えているかわからない無表情の顔で、ヒュラをまじまじと見つめる。


その場の空気が凍りついた。ステレオは、仮想戦争の基盤。

ステレオの技術は平和の象徴であった。


その存在価値に疑問を抱く事自体、危ぶまれる。

と言っても、実際に疑問を抱く場面は、そう多くはない。


山場2


ルーク

「魔の世界戦以降は、こう取り決められている。

『任意の社会は、ステレオの技術を有す事、そして、ステレオを有する社会集団である事を、国家承認の条件とする』

要するに、ステレオを持たない国家なんて存在しない。

国家であるならステレオ技術は存在するんだ」


ヒュラ

「それは、学校で教わりました。

結局、ステレオの存在意義は僕の中で未だ不明です」


ルークが不本意に笑みを浮かべた。

「いい事を教えてあげよう。

昔、とある非ステレオ武装の国家が、メレピンを利用した文明国家と争ったらしい。

その結果、その衛星の半分が消し飛んだそうだ。

悪魔の4条件って、太陽消滅の話で聞いた事があるだろう?」


ナーク

「その話は上層部関係者でなきゃ、してはいけないはずでは?

なんなら2年前くらいまで、機密事項だったとか」


ルーク

「彼をB級最上位のように待遇するんでしょ?

敵の要求内容を全部目の当たりにしたんだ。

ステレオ武装を悪く思われるよりは、説明した方がいい」


ルークはおどけたような態度で言った。

「この事は、内密にね、ヒュラ」


後日、ヒュラは、いつになく真剣な面構えのナークに、非ステレオ国家の話を聞かなかった事にするよう、しつこく強く念押しされた。



世界規模の大戦争の開幕間近で、ルーク達は対策を練りながらウラニス7の各国の重鎮との話し合いも進めた。


民が知覚するメレピンと媒覚は、所属組織内での共通認知により、互いに影響し合う。

その詳細は定かではないが、媒界への知覚機能の制御技術も相まって、ウラニス7の全ての民は、媒覚を通じて'繋がれて'いる。


これは、ウラニスの全ての集団社会に共通する事である。

したがって、各国の仮装戦争の結果、勝敗は、その国々の民の感覚の自由度と豊かさ、精神に関係する重要問題である。


このような問題に対処すべく、各星に存在する特殊機関の中でも、バリリオンズはウラニス7における軍事組織であった。

ハドラリアーは、そんなバリリオンズと同様に、他の6つの惑星の特殊機関を総称した呼び名である。



ハドラリアーを追い返すべく、戦場に選ばれたのは、半径40kmのほぼ円形の島。

中心に本陣を構えて、陣形を展開する事となる。



ヒュラ達はナークにステレオの機能操作と基本的な身体の動きと技の利用を練習していた。





ヒュラたちは、各種の戦闘ツールを素早く引き出して利用する練習と、フィールドを広げる鍛錬、戦術を考えてそれに合わせた動きを試す訓練を行った。

それには、リンクエフェクトという媒覚を鍛える必要がある。基礎鍛錬は、フィールドや特殊能力ステートを拡張し利用するための最重要訓練内容だった。







引き


そして、その日はやってきた。


戦争開始後〜5分後

ナーク

「いいか、これは削り合いの戦争だ。消耗戦を強いられる。

むやみやたらに敵を倒しまくる必要はない。

自分の実力とメレピン、体力や戦局を考えて粘り強く戦え。

僕たちは敵の襲撃中心地から遠く離れた北東部で、敵の侵攻を止めるんだ」




ヒュラは開始5分後にナークの部隊の隊員として戦場の北東部で、メレピーの隊形の外縁部に配置された。

ここから、敵をゆっくりと押し込んで、中央の本陣に合流する事を目標としている。


目前には、数百体から数千体のメレピーが、蠢いて、ヒュラ達の方へゆっくりと進行している景色が広がっていた。

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