02 それは理
静は意識して、しっかりと深く呼吸をし、未だに牙をむくヨカゼを見やった。
「……分かった。黙る。これで良い?」
『ええ、良いわよ』
「けど、そうだね。他三人だけで、あくまでも共通認識として話し合いたい。それは可能?」
『この世界に関与しなければ』
僅かに震える声を気にしていられる余裕はなかった。
『けど、こちらの言葉で話してはいけないわ』
「……それは、分かった。けど、どうやって?」
『話そうと思えば出来るわよ?』
「分かった。だから、膝から降りてくれると嬉しいのだけど」
『そうね』
ヨカゼは僅かな唸りを残し、ようやく静の膝から降りた。それと同時、静は両手で顔を覆うと体を丸めて、どうにか震えを止めようとぜぇぜぇと呼吸を繰り返した。
今、周りがどんな顔をしているのか分からない。というより気にしていられなかった。
未知数の恐怖が今、静を満たし、そして溢れてだそうとしていた。
「静様……っ」
耳の近くに、ルイスの声が聞こえた。
途端、未知数の恐怖が溢れ出す前に止まった。
なんと現金なことだろうか。ルイスがいるだけでここまで安堵してしまうなんて。
静はまだ満ちている恐怖に、無理やり鼻で笑い飛ばし、最後に大きく深呼吸をして顔を上げた。
「ん、大丈夫」
「……どう見ても、そのように見えませんが」
ルイスは静の前に跪き、顔を大きく歪めながら見上げていた。
静は無理やりに笑みを浮かべて誤魔化し、すぐ横に駆け寄ってきていたリーリアに視線を向けた。
「大丈夫だから」
「……はい」
絶対にそうとは思っていないのは、リーリアの返事からありありと伝わった。
もちろんその通りだった。しかし周囲にいる、この世界の人間達は皆、強い動揺を見せる他、その場で祈りを始める姿があった。
伊織は無言で静を見て、奈緒は動揺している真咲をどうにか落ち着かせようとしていた。
静は周囲を一通り確認した後、ルイスへと視線を戻し、口を開いた。
るいす。――、――?
静の耳に届くのは、聞き馴染んだ日本語だ。いつもと、この世界に落ちてからも変わらずに聞こえてきた言葉。
そしてルイスの表情はさらに歪みが深まった。
「……何を仰っているのか、分からないのですが」
不思議と、ルイスの言葉はしっかりと日本語として聞こえてきた。どうやら聞き取りは問題なく、一方的に言葉を変えられるようだった。
静は意識して、言語をこの世界、この国の物へと変える。
「ちゃんと変わってたみたいだね。ああ、けど一方的にだけど、こっちの世界の言葉はちゃんと聞こえたから話しかけてくる分には問題ないよ。あ、今のはね。これ、通じてる? って聞いた」
「そうですか。それはそれとして、二度と聞きたくはありませんでした」
「素直だね。慣れて」
「……承知しました」
ルイスも、おそらくリーリアも聞きたくなかったものだろうと静は理解しているつもりだ。
何せ静が力をほとんど失った時、言葉が通じなくなったのだ。その時のことを思い出させるには十分なものであるが、今後はこれを使わざる得ない状況になるだろう。
苦々しく頷いたルイスの頭を軽くわしゃりと撫でれば、ルイスは振り払いながら立ち上がった。仕える相手に対しては非礼な態度であるが、静は一切それを気にせずにヴィンセントへと顔を向けた。
「その認可についてだけど、そちらで勝手に話をして。さすがに死にたくない。というか、魂ごと消されかねないし」
「……ああ、そうするとしよう。というかな、お前、さすがに無鉄砲すぎないか?」
「やらないと分からないよね。こういうのって」
へらり、と静が笑うと、ヴィンセントは大きく息を吐きだしながら腹をさすった。さすがに今ので胃が痛くなったらしい。
申し訳ないな、と静は思いつつ、次に伊織を見る。
――。
こうかな。と、伊織は言った。
ヴィンセントの目がわずかに丸くなった。
――。
――、――。
続いて奈緒が、こうね。と話した。そして落ち着いたらしい真咲が、ねぇこれ、出来てるの。と、話した。
ざわつく周囲の様子から見て、ちゃんと日本語を話せているのを確認した静は、少し考えてから立ち上がる。もちろん忘れずにシルドラを片手に乗せる。そして奈緒の椅子のひじ掛けに遠慮なく腰かけた。
それを見た伊織もまた、すぐに理解して立ち上がる。足元にいるウーロを一度だけ撫でてから奈緒の椅子の背もたれに回った。最後に真咲もまた静のようにひじ掛けに座った。
先ほど退いたヨカゼは、ついでと言わんばかりに軽い足取りで奈緒の元へと歩みより、その付近で伏せるように座る。と、残されたウーロがすかさずに動きだし、伊織の足元まで移動し、律儀にまたとぐろを巻いた。
「じゃ、わたし達は別で話すから」
「……せめて、ちゃんと椅子に座って話せ」
「面倒」
「お前達聖女だろうが。とくに静、教育に悪いことをするんじゃない」
「ごめんねぇ」
まるで母親のようなことを言ってくるヴィンセントに、静は一切悪びれずに言葉だけの謝罪をした。
そして、静含め四人は、日本語で言葉を交わし始めた。
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奈緒は遠慮なく、静の頬に触れた。
「顔色がまだ悪いわよ」
「後で休むよ。それよりごめんね、うかつ過ぎた」
「仕方が無い……って、言うのは軽すぎるけども。こればかりは本当に仕方が無いことだと思うわ。下手したら私がそうなっていたかもしれないもの」
誰一人として、これがいけないことだとは知らなかった。
ただ自分達の知識というのは、何でもかんでも話すべきではないと思ったから話さないと決めたわけだが、まさかその行為が正しいものであったなんて思いもよらなかった。
「ねぇ、シルドラ。確認、だけど……って、通じてるの。これ」
『通じている。触れてはいけないものならば、そのように伝える』
「ありがとう」
先ほどのこともあり、静はつい控えめにシルドラに問う。と、シルドラは何一つ変わらずに、言葉だけに留めることを明確に告げた。
静は小さく息をつきながらも礼を言い、そして続けた。
「何で奈緒は無事だったの」
『あの人間が言っただろう。ほとんどが知っている知識であったと』
「けど、一部は知らないことだった」
『とはいえ、こやつが告げたのは、ほとんど知られているものに混ぜられたもの。砂に埋められた小さな石』
「砂と石って、ほとんど同じじゃない?」
『そうかも知れんな。しかし、見る者によっては異なることが分かるであろう?』
「……奈緒はほとんど知られている知識を言っただけだったから無事だった。そしてユアンは、その中に隠されたまだ知らない知識を自発的に見つけだすことが出来た」
『そういう事だ』
なんとも捻くれたことか。
しかしユフィアータも同じように必要最低限のことしか教えてはくれなかった。つまりは神として、これが最大の譲歩ということだ。
「もうあっちの話はしない方が良いね」
「そうね……」
「奈緒?」
何故か、奈緒は罰の悪そうな、歯切れの悪い相槌を打った。
どうしたのか、と見つめ続けていれば、観念したように奈緒は大きく息を吐き出した。
「料理とか、実はそれも教えてて……」
「ああ、だから最近の料理おいしくなったんだ」
「分かる? あ、けど教えたって言っても、ちょっとした一手間とかよ?」
朝食は奈緒と真咲の二人が作ってくれる。そして昼食と夕食は大神殿の食堂にいる料理人達が用意してくれるのだ。
それだけでも有難いことではあるが、近頃の料理は何だかより旨味を感じるようになった。その原因は奈緒だったらしい。
それについて、シルドラは無反応を示している為、これも許容範囲らしい。
「料理って言えば、あれよね。マヨネーズがあるのはびっくりしたわ」
「それ、私も!」
そう言えばと、真咲はこの国にある調味料の一つの名前をあげた。
マヨネーズ。そう、まさかのマヨネーズが存在していたのだ。
それがあると知った時、静は内心ガッツポーズを決めた。確かに味や風味は多少異なるが、それでもマヨネーズであることには変わらなかった。
素晴らしいかな、マヨネーズ。
「あれ、異国の調味料なんだそうよ」
「そうなの?」
「そう。偶然入ってきたとか。で、それをさらにアレンジしたらしいわ」
奈緒の説明に、三人はそろってへぇ、と声を漏らした。
「というか、話が反れてるわよ。私のせいかもだけど」
「気にしてないよ」
おいしい話題になると話が反れるのは仕方がの無いことだ。
静はわざとらしく奈緒に寄りかかると、もう、と奈緒は言いながら小さく笑った。
奈緒を笑顔を見れたことに静もまた自然と笑みをこぼし、しかしすぐに笑みを消して手の中のシルドラを見つめた。
「シルドラ、もう一つ確認だけど。この国だから教えてはいけないの? それともこの世界?」
『そうだ。この世界だ』
「何故?」
『理だ』
それ以上は言えない、とシルドラは言うように、それ以上は何も発しなかった。
ということは、これが限度という事だろうと静は察した。
「……理って言われたらそれまでだな」
「そうね。これはそういうもの、としないと……」
理。自然の法則。この世界の仕組み。
いや、おかしい。それはきっと悪であると決めるのは、あくまでも発展した世界に生きてきた側の傲慢でしかない。もちろん求められているのならば別であるが、世界が否定をしている以上、従う以外の選択肢はない。
この世界で生きると決めた以上、敵対してはいけない。郷に入っては郷に従え、という言葉があるように、この世界に馴染む必要があるのは静達の方だった。
「わたし達がやることは神へ祈り願うこと。それだけ」
「とは言え、料理は手を抜かないわ」
「あたしは変わらずに歌って、遊戯盤で遊ぶわ」
「えっと。じゃあ私、いろんなもの見つける!」
静が今後にやることを口にすれば、奈緒はそれでもと料理に対し強い情熱を見せた。真咲は変わらずに突き進むらしい。が、心配になるのは伊織だった。
静、奈緒、真咲もそろって伊織を見つめてしまった。
「え、駄目?」
「……今度はヴィンセントだけを巻き込みなさいよ。静じゃなくって」
「うん、分かった」
一番に見えて、一番に沈黙する金の聖女。さらに好奇心旺盛と来ている。一人では無茶なことはしないだろうが、何かあった時が一番困る。
ただ奈緒の口ぶりに、静はちょっとばかり不服を感じたが前回のあれがある為、大人しく聞き流し、ついでだからと気になっていたことを話すことにした。
「ついでだから、話すけど」
「どうしたの?」
「やっぱりその、召喚術について気になるというか……」
ああ、と奈緒は小さく頷き、聞く姿勢を取った。だから静は遠慮なく話を続けた。
「新たな神を据える為に使われたわけなんだけど」
「そうね」
「そのさ? あれって……というか、召喚術があるのって、この国だけなのかなって思って」
国。どころか世界さえも巻き込んでしまう恐ろしい魔術だ。
何せ、異国の神使であるヨカゼを召喚し、異世界から静達を召喚したのだ。挙句、どういう原理なのかは不明であるが彼の神までも召喚に至った。
これほど強大な魔術が、本当にこの国にしかない特別な魔術であるのか。静にはどうしてもそうは思えなかった。
「……そうね。この国にあるってことは、他の国にもある可能性があるわけだもの」
「だよね」
「下手をすれば、私達以外の人間も召喚されている可能性だって……」
そう。事実、同じく異世界から、おそらくは蛇であろうウーロも召喚した。であれば、同様に異世界から他の人間をすでに巻き込んでいたとしても何一つおかしいものはなかった。
何せあれは、何かしらの魂を飲み込もうとする魔術。決して逃げられるものではない。
静はこの中で一番に詳しいであろう、眷属であるシルドラに問う。
「いるの?」
『どう答えて欲しい?』
「ああ、うん。分かった。大丈夫」
問いに問いを返すのはあまり良いものではない。
だが、今のシルドラからの問いで十分理解した静はそれ以上聞くことを止めた。
「いるわね」
「前にいたのか、今もいるのか分からないけども。ただ、今はあまり、これについて話さない方が良いかもね」
「そうね。あくまでもこれは私達の想像でしかないもの」
奈緒もまた十分に理解したようで、力強く断言した。
しかしこれはまだ憶測。もちろんシルドラの言葉は嘘ではない以上、限りなく真実ではあった。とはいえ、その人間が果たして同じ地球出身の人間か、それともまた別の世界からの人間かさえ分からない以上、憶測の域は出なかった。
それにだ。むやみやたらにこの世界の住人を混乱させるのは良いものではない。だから静達はこの場で沈黙を選んだ。もし出会ったら、それはその時に考えるべき問題だと思って。
静はさて、と思考を切り替えた。
「それより、今は敵が近くにいることに対して考えないとだ」
「けど、静はちゃんと休まないといけないと思う」
「……うん?」
突如として伊織がそんなことを言って来たことに、静は小さく首を傾げて伊織へと視線を向け、口元を大きく引きつらせた。
黄金の丸い瞳と、薄い微笑み。
先ほど、ヴィンセントに向けたものと同じものだった。
「あ、はい。休みます。はい」
「すぐだよ。すぐ」
「はぁい」
さらに言うと、いつも沈黙している伊織がこれほどまでに忠告してくるのだ。
確かに妙に腹の底がぐるぐるとしていたし、視界がわずかに揺れていた、ようなもの感じていたが静はすべて気のせいだと投げ捨てていた。だが一時にしてしまえば、それは一気に静を蝕み始める。
静は小さく息をつめ、それから耐えるように息だけを吐きだした。
伊織の言葉には大人しく従わなければ。
もはや本能的に当然のように受け入れた静は、迷わずにルイスを呼んだ。
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るいす。
妙に幼いような舌足らずな発音が、小さく響いた。
誰もが気づかないような音だったが、ルイスはすぐに気づき、静へと視線を向けた。
「静様。言葉を変えてください」
「ああ、うん。ごめん」
「話を終えたのですか」
「うん。それでね、わたしだけ先に戻らせてもらおうかと思って」
奈緒が座る椅子のひじ掛けに軽く腰を掛けたまま、静はなんてことなく言う。
ルイスはまさかの静からの申し出につい両目を丸くし、無言で驚きの表情を浮かべた。それはもちろん、控えていたリーリアも同様だった。さらに言えば静をよく知る者達も、珍しい、と言わんばかりに静に視線を向けていた。
「ねぇ、なんでそんな驚いた顔してんの」
「まさか自主的にそのようにおっしゃられるとは思わず」
「……伊織に言われましたぁ」
静は集まる視線に耐えきれなかった様子で素直に告白する横で、伊織は満足げに笑顔を浮かべていた。
なるほど、伊織相手ならば仕方が無いなと、ヴィンセントは強く納得した。
「ああ、さっさと戻れ。顔色が悪い」
「はいはい。知ってるよ」
黒髪や明かりのせいもあるだろうが、先ほどのあの一件から静の顔色はより白さが目立っていた。
わざとらしく肩をすくませる静は、目の前で手を差し出すルイスに対し、何故かそこから動こうとはしなかった。
「静様?」
「……すみません。すごく気持ち悪くってぇ」
「何故、限界まで耐えているんですか。馬鹿ですか」
「もう遠慮なく言うようになったねぇ」
どうやら自ら動けないほど体調が悪くなっていたようだった。
ルイスは口では遠慮なく静へ暴言に近いことを言いながら、丁寧に静を腕の中へと抱え上げる。静は慣れている様子でそれを受け入れつつ、すぐにルイスの腕の中で体を小さく丸めた。
「ヨカゼ。静様の見張りを頼む」
『良いの?』
「何故聞くんだ」
先ほどの一件があったにも関わらず、ルイスはヨカゼを呼ぶ。おそらくヨカゼはまさか呼ばれるとは思ってもいなかったのだろう、伏せていた頭をぱっと上げた。そしてルイスの意味の分からないと言わんばかりの言い方に、気をよくしたらしくすぐに大きく尾を振りまわしながら立ち上がった。
『ふふふっ、ちゃんと見張るわね!』
ヨカゼは軽い足取りでルイスの傍らに並ぶ。ルイスは静を抱えたまま一礼し、リーリアもまた同様に一礼をしてからそろって紅星の間を後にした。
ヴィンセントは三人と一頭が出て行った扉がきっちりと閉じられたことを確認し、伊織へと目を向けた。
「伊織が言うほどの状態だったのか。静は」
「言わないとずっと残ってそうだったもん」
「馬鹿だろ」
ヴィンセントもまた同様に静に対して遠慮なく言葉を吐き出した。しかし誰も不敬だと言わない程度に静はあれこれとやらかしているのだから仕方が無いものだった。
「しかし……、こうも我らが銀の聖女はよく体調を崩されるわけだが……。ユフィアータの影響か? 伊織」
「ちょっとあるかも」
「そう見えるということか。目覚めてから変わらないのか」
「ちょっとずつだけど綺麗になってるよ」
「良いことを聞いた。だが、何故あれは平気そうに動いているんだ」
「うーん……。たぶん、前のあの状態に慣れちゃったからだと思う」
ついで、とヴィンセントはそのまま、沈黙ばかりの伊織に問う。伊織は沈黙すれど聞けば答えるのだ。まるで愛娘達や、あのシルドラと呼ばれる眷属のように。
とはいえ、どの言葉も曖昧であるから、言葉の真意を読む必要があるのだが。
その問いかけで、わずかに良いことを聞くことが出来た。だが同時に、静があれほど平常時と変わらない様子を見せられる理由を知ってしまい、ヴィンセントはつい口を閉じた。
ユフィアータが眠りについた。故に、銀の聖女、静は全身を痛みで焼かれてしまった。
これについてヴィンセントはルイスから報告を聞いていない。話を聞くべきではなかった。まだ、今は。
何せ今はまだ、ユフィアータの力が完全に戻っているわけではない。故に、静は本調子にはなっていない。だから話を聞くのは、完全に事が終わってからだとヴィンセントは決めていた。
「けど、ルイスがいるから大丈夫だと思う。それに今は痛くはないみたいだし」
「……そうだろうな。おそらくは」
伊織からまるで、慰めのような言葉をもらい、ヴィンセントはふっと小さく笑みをこぼした。
静の隣にルイスがいる。あの執着心の強さには、さすがのヴィンセントも正直引くが、それでも無茶無謀ばかりの静の動きを把握している上に、未だに男性恐怖症である静が唯一触れられる存在なのだ。
そして、互いを愛し合っている。
素晴らしいことだとヴィンセントは純粋に思う。今この場で我らが神の彫像へと祈りを捧げたくなるほどに。
だが祈るのは話を終えてからだと、すぐにヴィンセントは思考を切り替えた。
「こちらの話は終わった。結論から言えば、それはそれとして勝手に使うことにする」
「わぁ」
「とはいえ、騒がしいから議会には出席する」
「……議会?」
「後で説明する。で、ようやく本題に入るわけだが」
静とルイスがこの場にいない以上、この話については後回しになる。だが次の話は二人がいなくても何一つ問題ない話だった。
「真咲。本当に構わないんだな?」
「当然でしょ? むしろあたしの力、思いっきり試せるんだから楽しみにしてるんだから」
何故、この場にこれほどの人数が集まっているのか。
それは潜んでいる敵を見つけ出す為の話をする為だった。
導きの光。我らが空の聖女である真咲は、なかなかに好戦的な笑顔を浮かべていた。
視界の端で、黙って控えているカルロスはそれに対して非常に面倒と言わんばかりに顔を歪めたかと思うと、片手で顔を覆っていた。
これはこれで面白い反応だとヴィンセントは思いつつ、それでは、と話を始めることにした。




