即位記念パーティー
―――スオウの新王即位記念パーティーには魔物の国から魔王・王太子夫妻、そして各国からの国賓が招かれた。
此度の聖国滅亡に激震した人間の国もあるだろうが、しかしながらリューナ王国が魔物の国との間を取り持ってくれるならと此度の騒動に賛同してくれる国も多い。それほどまでにあの国は嫌われていたのだと思うと、やはり生々しいものを感じる。
元々たいした資源も特産品もないのに聖女と聖剣の存在を掲げて、多くの国に不利益な要求を突きつけ恨みを買ってきた国である。それも無理はない。聖女と聖剣が消えたことで魔物の国に脅威を感じる人間の国が我が国に泣きついてくると言うケースも無きにしも非ず。こちらとしては真面目に交遊・貿易をする気があるのなら力を貸すし、たんなる庇護を求めるという腰抜けなら相手にしない。それだけだ。
その席の末席に俺とハスキ、そしてスザナは席を設けている。たまに独身のスザナ目当てにどこかの女が近寄って来てやたらとボディタッチをしようと試みるケースもあるが、“指を斬り落とされたいか?”と、ニタリとほくそ笑めば俺の特徴やしっぽを見て青ざめ逃げていく。ふんっ。王弟になっても悪逆の名は廃れないんだよ。俺の弟に近づくんじゃねぇっ!と威嚇しておく。
更に、俺と言う夫が隣にいるのにハスキに声を掛ける男に関しても同様だ。“首を落とされたいのか?”そうニタリとほくそ笑み俺が追い払っているので俺たちの周りは奇妙な空気に満たされている。
本当ならば結界で遮断してアイツらの目に映らないようにしたいのだが。しかし威嚇し俺のものに手を出せばどうなるか、と言うのをわからせるのも重要なことである。
「ふ、ふふふ、相変わらず面白いね。何のために出席してるの?」
クツクツと笑いながらこちらにきたのは、魔物の国の王太子・カヤ兄だ。その腕にはドレスアップさせられたサクラが不満げな顔でこちらを見ていた。
「サクラ。改めて紹介しよう。リューナ王国の王弟・イザナ。私の従弟だ」
「この姿ではよろしく、だったかな?サクラ妃」
俺がニタリとほくそ笑むと、何かを悟ったのかサクラはハッとする。
「まさかあなただったなんて」
「貴様は勘がいいな。まぁ、いい。俺の妻のハスキと弟のスザナだ。以後お見知りおきを」
にやっと微笑めば、何故か苦渋の表情を浮かべるサクラ。
「こちらこそ末永く頼むよ」
そう言って妖艶に微笑むカヤ兄に、サクラは怪訝な表情を浮かべる。
「どうした?我が愛しのサクラ」
サクラに向ける表情は甘く蕩けるような微笑である。それを見た周囲からはどよめきが聴こえる。
「もうちょっとそう言うふうに愛想よくしたら?」
まぁ、言わんとすることも分からなくはない。基本的にカヤ兄は面白そうなこと以外にはひどく冷淡だ。俺もあんな微笑は初めて見た。
「無理だな。番以外に向けようとはこれっぽっちも思わない」
「諦めろ。そいつはひと一倍竜の血が濃い」
「お前もね、イザナ」
「あぁ、違いない」
そう言ってふたりで苦笑し合っていればハスキとスザナはきょとんとしているものの、何故かサクラからは鋭い視線を向けられる。相変わらずいい目をしている。カヤ兄が気に入り虜にしたいと誘惑するのも分からなくはない。
俺が誘惑するのはハスキだけだがな。何だかサクラとカヤ兄のイチャイチャを見て恥ずかし気に顔を逸らすハスキ。
「ダメだ、ハスキ。俺の方だけを見ろ」
「い、イザナ、さまっ?」
ハスキの顎を掴んでこちらに向かせ、軽く口づけを落とす。ハスキは瞬時に顔を赤らめ、俺の腕に顔を隠すように擦りついてくる。やばいなにこれ。今すぐベッドに連れ込みたい。もうパーティーサボって退席してもいいか?
カヤ兄もそれを見てサクラに口づけを贈り、固まっているサクラを引っ張って会場の外に連れ出す。いや、アイツらだけずるいんだけど。俺もそろそろ、と思っていれば、アセナとゼフラがこちらに来た。
「貴様ら自分の夫はどうした」
「妹成分を補給しに来たのだ」
「スオウは行っておいでと言っていたわ」
「いや、なんなんだそれは」
意味がわからん。
「せっかくのお披露目のパーティーですもの。かわいい妹を愛でないといけないわ。あなたもそんな風に威嚇ばかりしているから、周囲が脅えてしまっているじゃないの。スオウからも“王弟として愛想を振りまいてくれないとお兄ちゃん悲しい”と伝言を受けたわ」
「ふんっ、俺のハスキとスオウに色目を使うからだ!目を見つめるだけでもその目玉に指を潰したくなってくるっ!」
あと、スオウからの伝言は割とどうでもいいな。―――うん。
「これは重症だな」
「竜の血特有なのよね」
苦笑しつつも姉ふたりが持ってきたケーキにハスキが興味を持ったので、仕方なく会話は許可したが。むぅ~、何か悔しい。横のスザナを見やれば。
「お兄さまはかわいいです」
と、わけのわからないことを言われてしまう。―――何故だ。
―――
そして、この即位記念パーティーで婚約者のハスキと弟のスザナへの溺愛をアピールしてアピールしまくった結果、影で“ヤンデレ王弟”と呼ばれているとナユタから後日報告が上がったのは別の話である。
(完)
これにて本編は完結です<(_ _)>。この後は閑話などをUP予定です。引き続きお楽しみいただければ幸いです(〃´∪`〃)ゞ。




