聖国の滅亡
※前半拷問回につき注意されたしっ!!※
―――ラモルタ聖国王城
「さぁ~てお掃除、お掃除♪」
玉座の間に辿り着けば、そこは既に血の海であった。まぁ、ここに来るまでにも生者には出会わなかったがな。部下たちは素晴らしい仕事をしてくれたらしい。そしてそんな血の海な玉座の間で、部下たちに調教されていた男女を見据えてニタリとほくそ笑む。
「はい、お土産~」
そう言って部下に放り投げさせたのは。
「ぎゃふっ」
その聖女だったものを見て男女は絶叫した。
『ぎゃああぁぁぁっっ!!!メリアあああぁぁぁっっ!!!』
「お、とぉさま。おがぁ、さま。だず、げで」
聖女は手のない腕を伸ばすが、男女はそれを無慈悲に払いのける。
「え゛」
聖女だったものは驚いて目を瞠る。
「お願い、許してぇ!私たちは助けてぇっ!」
「そうだ。これを好きにしていいから!わしは助けろ!むしろこの女も!」
「何ですってぇ!?私は聖女よぉ!?」
やれやれ。自分たち身内であってもなりふり構わずになってきたか。
「最後のショーにこいつらは邪魔だな。飽きてきたろ?」
『確かに』
『ゆぅことが全部同じなんだもぉん』
「もういらないから、殺っていい」
その俺の言葉を聞いた途端、男女の顔が真っ青になり俺に手を伸ばそうとしたが。部下たちがケラケラと笑いながら乱切りにして行く。
「あ、ごめんな、サクラ。殴らせてやるつもりが、忘れてた」
サクラを振り返り、今からでもやる?とサインを出せば。
「いや、もういい」
そう言われてしまった。
「ならせめて、最後のとっておきのショーを見せてやろうか」
「どうせ拒めないんでしょ?あなたの命令には従わないといけない」
「あぁ、その通り」
そう言うと俺は空中に手をかざし、準備していたものを転移させた。
「ぎゃあぁぁっっ!?いったぁ、ここ、は?」
「ひぃうっ!?やだっ!おうちかえしでええぇぇっっ!!!」
マリアはともかく、マリアの男の方は完全に幼児化してんじゃねぇか。あ、そう言えばゲイ専門の調教趣味の部下を看守に入れておいたんだった。面白くなりそうだったから。
「さて、これが何だかわかるか?悪女」
俺がニタリとほくそ笑めば、マリアは俺をキィっと睨む。
「メリアに何をしたの!?ひどい、こんなっ!」
「お前らだってひどいだろう?俺の大事な弟を聖剣の生贄にしようと毒を盛り、それが失敗すれば大量の生贄を対価に異世界から勇者を召喚する。更にその勇者を生贄にして聖剣を産みだそうとした。その報いを受けさせているだけだよ」
「んなっ!?それが世界のためで、世界を救うことになる!」
「何をバカ言ってんだ。世界なんぞどうでもいい」
「は?」
「俺は俺が寵愛するものが存在すればどうでもいい。その弊害となるならどんなものでも甚振り殺す。それが信条だ」
「残虐非道な悪逆王子め!」
「ま、それが原作小説での愛称だけど、今は一応王弟だからな。悪逆王弟」
「変わらないじゃない!愚王として君臨したアンタと!」
「―――そうだな。固執し続けることに関しては変わらないな」
「玉座に?」
「それがわからないから、お前らは愚かだ」
「なっ」
「さて、俺はお前にたっぷりオシオキをしてやる」
「や、やめなさいっ!」
「無理。俺、執念深いからァ。あぁそこの幼児化男と聖女、あと好きにして」
『『『りょーかーい』』』
部下たちが笑みをたたえながら次の獲物へと群がっていく。その光景にマリアはすかさず聖女に手を伸ばすが。
ガッ
俺はマリアの手を踏みつけた。
「ぐぅっ!メリアは、メリアだけは助けて!」
「何故」
「私の大切な妹なのぉっ!」
「スザナだって俺の大切な弟だ」
「メリアは聖女なのよ!?」
「どうでもいい」
「んなっ!?」
「お前らが生贄にしようとしたスザナにも俺がいるし、お前らが散々殺してきたやつらにもいるんだよ。大切な存在がな。お前らの命だけじゃ、たりないくらいに」
そして俺は棘の鞭を振り上げる。
「いやああぁぁぁぁぁっっ!!!」
マリアの絶叫と共に激しい鞭の音が響き渡る。それはやがてマリアが動かなくなるまで。背中が血肉で真っ赤に染まるまで。
そして振り返れば。すっかり元の形がわからなくなったものが、2体。
「さて。お掃除はそろそろ終わりにしようか」
俺は仕上げにマリアの体に氷の杭をありったけ打ち付けると、今度こそマリアは絶命した。
「撤収するぞ」
俺たちはサクラを連れ、聖王都が一望できる丘の上に転移した。そして朝日が昇るとともにほどなくして。
「あぁ、来たな」
俺がにやりとほくそ笑んだ先に見えるのは。大量の軍隊がこちらに、―――いや王城めがけて突っ込んできたのだ。
「あれは、何?」
サクラが驚愕しながらそれらを見つめている。
「魔王軍だな。聖女が死んで結界が消えた。更には聖剣を造る術は材料ごと消えた。だから魔王が攻めてきた。それだけだ」
「魔王が、―――魔王はどうしてこの国を攻めるの?」
「ふっ、長年侵略されて大勢の魔物が犠牲になったからな。更にはこの国は魔物の血を受け継いだ人間を蔑む。魔物は例え人間の血を引いていようと種族のつながりが深いんだ。だからこの国を許すことはない。魔王軍にかかれば半日で終わるんじゃないか?」
「え」
「ふふっ、魔物は魔法が優秀だからなァ」
「あなたも魔物なの?」
サクラは揺れ動く俺のしっぽを見やる。
「半分な」
「魔物の国のひと?」
「いや?俺はその隣国の人間の国のものだ。ちょっとした私怨があってなァ?そのついでに魔物の国が危惧していたものも消え失せたから、あちらも攻める絶好の機会だった。ただの利害の一致だな」
「私怨だけで、ここまでするなんて」
「この国のやつらを助けてとかは言わないのか?人間なのに」
「何の義理もないわよ。突然異世界に誘拐されて、生贄にされるところだったのよ?」
「確かに。しっかりと現実を見ているやつは嫌いじゃない」
「―――そう。私、これからどうしたらいいんだろう」
「知らん」
「冷たいわね」
「俺は弟と婚約者以外は興味がない」
「本当に人格破綻者ね」
「それは俺にとっては褒め言葉だ。部下にとってもな」
そう言うと、部下たちから不気味な笑いを返される。
「―――っ」
サクラはちょっぴし睨みながらも溜息をつく。
そんな時だった。
「何だ・・・ここで油を売っていたのか?お前ら」
突如やってきた男に俺は顔を見上げる。黒い髪に瞳孔が縦長の赤い瞳。頭にはずんぐりとした歪んだ金色の角が生えており、その内側には突起が数本生えている。首にはうっすらと鱗が見えており、後ろからは竜のしっぽが揺らめいている。
「いや、アンタこそここで何してんの?カヤ兄。侵略は?」
「聖女も聖剣もない。腐りきっているこんな国、すぐに片付くさ。俺は単にお前の顔を見に。―――ん?」
「何だ」
「ほぅ、つまりはそれが召喚者か?」
カヤ兄が興味深そうにサクラの顔を覗き込む。
「な、何?」
サクラはきょとんとしていたが。
「お前、私の番になるか?」
「な、つがい?何を言ってっ」
「私は竜の魔物だ。だから生涯にただひとりの番を迎える。うん、汝を見たらピンときた」
「はぁ?」
サクラは驚いて俺の顔を見てくる。
「選ぶのはお前の自由だ」
「―――そのっ」
サクラは訝し気にカヤ兄を見ながらも、その差し出された手をとった。
「素直でよろしい」
「そこの仮面の男と同じ匂いがするから」
「ん?あぁ、私は従兄だからな。ふふっ」
「そう言うことじゃなくて、従兄?どういう関係?と言うかあなた、誰」
「ふふふっ、やっぱりいい。私はいい拾い物をした」
カヤ兄は上機嫌にサクラを抱き寄せり。
「私は魔物の国の王太子・カヤハンと言う。カヤと呼べ。汝の名は?」
「サクラ」
「そうか、サクラ。良い名だ」
「この世界にも、桜が咲くの?」
「魔物の国にもあるぞ?今度いこうか。デートに」
「うっ、その、わかった」
無駄にイケメンな顔を近づけられ、必死に目を逸らそうとするサクラだが。カヤ兄が容赦するわけもなく、その顔を拝まされつづけながら愛を囁かれて顔が真っ赤になっている。
「ほどほどにしろよ、アンタ」
「いや、その言葉はお前にそのまま返すよ。お前もまた、竜だろう?」
「違いない」
―――その後、旧聖国跡を後にした俺と部下たちは帰国し、スオウにことの次第と決着について報告する。そしてその日のうちに旧聖国は魔物の国によって完全に滅亡したのだった。




