日課
―――第4王子宮
「この間の改革案はとても良いものだったね」
「あ、ありがとうございます。陛下」
何故かごく普通に俺の宮のソファーに腰掛ける新王・スオウは、緊張した面持ちのスザナと邂逅していた。因みに茶はシャルルが出した。
「陛下だなんて水臭い。私のことは“お兄さま”と呼んでくれないのかな?」
「そ、そんな、恐れ多いです」
恥ずかしがる弟もなかなかに弟萌えをもよおすが、しかしながらスオウにそれを向けられていることが気にくわん。
「残念だったな。その称号をスザナから向けられるのは俺の権利だ」
勝ち誇ったようにスザナの肩を掴み俺の体に引き寄せれば、今や新王となったスオウに緊張の色を隠せない様子だったスザナの体の力がすっと抜けていくことに気が付いた。
「えぇ?じゃぁ“兄上”でいいや。正式な場でそう呼べばスザナが私が大事にしている王弟だと血統第一主義の古狸たちに分からせることができるだろう?」
「うぐっ!」
その手で来たか!確かにそれであれば、スザナの地位向上につながる!
「だが忘れるな!スザナに“お兄さま”と呼ばれる権利は俺だけのものだ!いいな!」
「お兄さま!」
そう豪語してやれば、スザナが尊敬を込めた双眸を向けてくる。ふふふ。ただで転ぶ俺だと思うなよ!スオウめ!
「―――」
しかし何故だ!スオウから憐みのこもったような目で見つめられるのは、―――解せぬっ!
―――スオウが去ってから数分後。
「うん、ハルもハスキも元気にしているようでよかった」
「はい、お父さま」
「お父さま、お茶をどうぞ」
スオウと入れ替わりにやってきた宰相をハルとハスキは喜んで迎える。ハスキは宰相に喜んで自らお茶を出していた。
―――ハスキの出したお茶ハスキの出したお茶っ!
どうやらシャルルに教えてもらったようだが。俺もまだ出してもらったことないぞ!?何故宰相が一番最初だっ!!
宰相を睨みつけていれば不意に宰相が俺を見やる。
「イザナ殿下。大人げないですよ」
「うぐっ」
一応俺、イザナ。成人している。この国での成人年齢は15歳だ。平民であれば15歳から働きに出ることも少なくない。婚姻については17歳から可能となる。俺は現在18歳なので既に婚姻もできる年齢の立派な大人ではあるが。
「貴様こそ、毎日毎日飽きもせず。―――スオウもだが」
この男は(スオウもだが)公務の合間の休憩と押し切り毎日のように俺の宮に来やがる。宮への出入り許可を出したことをちょっぴり後悔しつつもハスキが悲しむので許可は取り消さないが。
「娘と息子に会いに来て何が悪いのですか」
「仕事は」
「幸い、優秀な人材を揃えることができましたし、長年秘匿されていたイザナ殿下の業務改革案をご提供いただけましたので」
「あぁ、そうか」
教えて損したかもっ!!もしくはもう少し仕組みなどの解説を難しく複雑にしておけばよかった!いや、ハスキはハルと一緒に喜んでいるものの、何だこの複雑な心境はっ!
「ハスキ」
「はいっ!」
俺に名前を呼ばれるとハスキがとことこと駆け寄ってくる。そして俺を見上げ、かわいらしくこてんと首を傾げてくる。期待に満ちたキラキラとした瞳。ほんのり桃色に染まったハスキの肌。わぁ、なにこれ。最近ハスキがかわいすぎて俺どうにかなってしまいそう。いや、いかんいかん。完璧イザナさまの表情を崩さないようにせねば。
「俺は執務に戻る。後で茶を届けてくれ」
「はい!わかりました!」
こうして俺もハスキの茶を無事ゲットすることができるのだ。しかし嬉しそうに目を細めながら俺を見つめてくるそのさまが、ぐぐぐっ!何かの欲求を滾らせるぅっ!そして執務室に向かう途中。
「やっぱり悔しがっていたのですか」
との宰相の呟きが聴こえ、振り向きざまにちらっと威嚇しておいたことは言うまでもない。




