鬼たちの狂宴
※後半拷問回はいります※
※今回も剥がします※
※他にもいろいろやります※
―――王都・シナ家
少年はいつも脅えていた。少年はスペアのスペアであった。だからこそ、少年のシナ家でのカーストは最底辺。1日1食食べられれば良い方。
そんな中、兄姉たちからの意地悪で食事を全く与えられず苦しんでいたところにそのひとは現れた。自分もがりがりに痩せているくせに、そのか細い腕でそっとかたいパンを差し出してくれたのだ。
あんなにかたいパンだったのに、その味を今でも忘れられない。しかし“彼女”は少年にパンを譲ったことがバれ、仕置きと称して連れていかれてからその生死はわからない。
けれど“娘”であるのなら政略結婚の道具になる。その道具をむざむざと捨てるような当主ではないことを少年は知っていた。
だからきっと、彼女は生きている。そう願わずにはいられなかった。
彼女の懐かしい顔を思い出しながら幾星霜、今日も暗い納屋で目を覚ました少年は突然、大きな足音が大量に近づいてきて思わず身を竦ませた。
―――ぼくは、殺されるの?
そんな恐怖でいっぱいになった少年の前で、納屋の扉が乱暴に押し開けられる。魔法の光がぼんやりと浮かび上がらせたのは騎士のような格好をした青年たちだった。
「名を申せ」
突然のことに驚きつつも、どうせ殺されるのなら同じだと少年は恐る恐る口を開く。
「ア、アオイです」
少年は家名を名乗ることを許されていなかった。だから自身に亡き母が与えてくれたたったひとつの贈りものである名を口にした。
「名も一致している。年は14、髪はライラック色、瞳はブラウン。うん、間違いないな」
そう頷いたのは騎士たちの中で一番リーダー格の見目麗しい青年だった。
深い藍色の癖のある髪を真ん中分けにしており、さらに凛とした群青の瞳を持つ。
「では、早急に連れて離脱するぞ」
『了解』
彼の部下と思われしひとたちが頷き、彼らはずんずんと少年・アオイに近づいてくる。脅えて壁際によるアオイを見て、先頭に立っていた青年が優しく微笑む。
「心配ない。私たちは君を助けに来たんだ」
「助け?ぼくは、スペアのスペアの」
「君はスペアではないよ。君を助けてくれと言っていた姫君にとっては唯一の弟だ」
「ひめぎみ?」
「私の将来の妹だな」
「?」
アオイは訳が分からず首を傾げるが、満足に食べていないやせ細った体はいとも簡単に彼に抱えあげられる。
「あの、あなたは?」
「私はレオンだよ」
「レオン、さま?」
「さぁ、一緒に行こうか」
「いえの、―――ひとは」
「心配ない」
そうレオンが言った通り彼らは家の誰ともすれ違わなかった。アオイは馬に乗せられレオンがその後ろに乗り込む。他の騎士たちも準備ができると彼らは颯爽と駆けだした。
「あの、どこに?」
アオイが口を開きかけたその時、後方で大きな音が鳴り響く。
「ひゃっ!?何?」
突然のことにレオンを含む隊員たちは馬を落ち着かせるためにも一度立ち止まる。レオンが馬を後方に向かせればその先にはドーム型の何か半球体の中で塵と化す何かがあった。
「やれやれ。消し炭にするとは聞いていたが音くらいは遮断してほしかったな」
レオンが溜息をつけば他の騎士たちも苦笑する。
「無論、我々が文句を言った日にはどういう目に遭うかはわかりませんが」
レオンよりも一回り年上の男性騎士が嘆息する。
「―――くれぐれも私の部下で遊ばないようには伝えてあるがな」
「それは安心です」
そしてにっこりと笑みを返す。
「借りもできたことだし、少しは大人しくしてくれればいいのだけど」
「あれをやらかした後では後の祭りですな」
「全くだよ。さて、早く帰ろうか」
「帰る?どこへ?」
アオイが不安げにレオンを見上げれば。
「あぁ、私の家だよ。気にしないで。とても住みよい場所になったからね」
どこか含んだような笑みを浮かべるレオンに首を傾げつつも、アオイはレオンに背中を預ける。
颯爽と離脱した彼らとは裏腹にまだ取り残された者たちもいた・・・
―――場所はシナ家の屋敷に戻る。
「はははははっっ!滑稽だなぁ!建国時代からの長い歴史を持つ名家がこうもあっさりと消し炭になるとは!」
顔の上半分を鬼面で隠した黒ずくめの青年は大声でせせら笑う。
その青年を忌々し気に見る女の猿ぐつわを青年の部下が外せば。
「なんてことをするのよ!我がシナ家にこんなことをして、ただで済むと!?」
「心配はいらないさ。もはやシナ家はお家取り潰しだからなぁっ!」
「そんな、バカな!スオウさまは!?スオウさまに会わせてちょうだい!本当は私はスオウさまの妻になるために育てられたの!そんな私の実家をあなたが消し炭にしたとあれば、スオウさまなら!」
「何だ?そのでたらめは。そもそもスオウの婚約者だった女を自殺に追い込んだのは貴様ではないか!そしてそれを根回ししたのはこの家の者ども!そんな女やその実家をスオウが許すと思うか?」
「な、なんの、―――こと?」
「とぼけるのなら別にいい。俺は単にお前との約束を果たしたまで」
「約束?何の事よ!私は知らないわ!」
「んん?言っただろう?国王にチクったら、お前の実家を消し炭にすると」
にやっ。
鬼面の青年がほくそ笑めば彼女は途端に何かを悟ったかのように瞠目する。
「あなた、な、何で?あなたの婚約者だってシナ家の!」
「何を言っている?我が愛しの婚約者はもはやシナ家の人間ではない」
「何をバカな!」
「彼女は“宰相”の娘だ。長年この国を支え、そしてこの先も新王を支えていく名相の娘として生きていくのだよ!」
「そんなわけ、そんなわけないじゃない!」
「何故お前にそれを決める権利がある?そうそう、それと」
「な、何よ」
「お前は双子が担当だからなァ。俺は俺の愛しの婚約者を苦しめたこの家の者にオシオキをしなくては。なァ?」
鬼面が部下を見やれば部下もまたおぞましいほどの笑みを浮かべていた。
「さぁ、行くぞ。お楽しみタイムの始まりだ」
部下たちを引き連れ颯爽と去っていく鬼面たち。
「う、上手くいけば逃げられるかもっ!」
独り置き去りにされた彼女はぱあぁっと顔を輝かせて後ろを振り向く。
「逃げられるわけないじゃなぁい?」
そこには、顔の左半分が焼けただれた女の顔があった。
「ぎゃああぁぁぁぁぁっっ!!!バケモノぉっ!」
「やだ、なにこの女ぁ!姉さんにこんなことをしておいてぇ?お前がやったんだよぉ?」
「私にやったこと、あなたにもいぃっぱいやってあげるからねぇ~?」
おぞましく嗤う双子の姉弟を前に女・元第2王子妃・キキョウは絶叫した。
ビリリリリッッ
「あはっ♡コツ掴んどいてよかったっ♡とってもうまく剥がせたぁっ♡」
甲高い女の無邪気な声が響く。そして同時に複数の鞭打つ音や斧で何かを砕く鈍い音が絶え間なく響き渡り、複数の悲鳴は暗澹たる闇に溶けていくのだった。
※次回18時更新分からは久々の非拷問回※




