笑う鬼面
※都合により第3者目線です※
※まだ拷問しませんが血が出たり刺されたりする残虐描写が出てきます※
―――第2王子宮
第2王子が生活する専用の宮ではまさにその主たる第2王子・リアンが驚愕していた。アッシュブルーの髪を斜め分けにし、妖艶なグレーの瞳。左目の斜め下には泣き黒子がある。端正な顔立ちと生まれ持った素質から多くの女性を虜にしてきた麗しの王子の顔が醜悪に歪んでいた。
「んな、そんなバカなっ!もう一度言え!」
「今朝、国王陛下が病により崩御され、陛下が生前に指名しておられたスオウ王太子殿下が王位に就かれます」
「父上が、指名だと!?何故スオウなんだ!俺ではなく!おい、答えろ!」
第2王子は知らせに来た亜麻色の髪の文官を容赦なく蹴り飛ばす。
「げほぁっ!わ、私はっ」
「うるさい!口答えをするな!貴様を今すぐ牢に入れて処刑してやる!」
「ひいいぃっ!お許しをぉっ!」
必死に体を丸め弁明を続ける文官をよそに第2王子の怒りはヒートアップしていく。ただでさえこの頃は第5王子が逃げたせいで執務が滞り、王太子から苦言を受けた。
さらには仕事が全くと言ってこなくなったのはいいとして、自由に動かせる予算が全く入って来ないのだ。いくら王太子や宰相に抗議しようともないものはないの一点張り。王太子には妃がいないのだからその分の金を寄越せと言ってもだんまりで、第5王子のための予算を横領したとして宮内の金品まで差し押さえられたのだ。
「こちらは平民の血を受け継ぐ第5王子を保護しかわいがってやっていたというのにこの仕打ち・・・更には王位まで・・・だと!?もう許せん・・・っ!」
「何が許せないんだ」
その声に、第2王子はハッと顔を上げた。目の前に現れた憎むべき存在にギリリと歯を食いしばる。
「貴様は私の部下を暴行したようだな」
「な、何をっ!不当に王座を簒奪したお前が偉そうに!王太子の座だってお前が無理矢理むしり取ったのだろう!」
「お前はそんなに王太子になりたかったのか」
かつて王太子であり、新たな王として即位する男・スオウは呆れたように溜息をつく。
「当然だ!この俺こそ王太子に相応しい!そして次代の王にも!」
「お前は王太子や王を何だと思っている。国の仕事も碌にできず、国民の血税を湯水のように使う。さらには弟王子に仕事を代わりにさせて自分の手柄として報告させるなどあってはならない」
「俺は王族だぞ!王族なのだから国民どもの血税をたんまりつかうことの何が悪い!それに父上だってやっているだろう!お前と宰相に全ての仕事をさせている!」
「ならばお前が王太子になったら全ての仕事をせねばならないな」
「はんっ!何を言う!俺が王太子になったのなら仕事は全て宰相にやらせればいいだろう!」
「お前がそこまでバカだとは思わなかった」
「貴様、この私に何と言うことを!もう許せぬ。お前たち!今すぐコイツを殺せ!そして俺が王になる!」
そう、第2王子が述べれば王太子・スオウの周りに無数の黒ずくめの集団が現れる。
「おい、この男を知っているか?」
第2王子はその中の鬼面の男を指さしケラケラと笑う。
「こいつは“鬼面”だ。王にのみ忠誠を誓う“影”の中の長。それが俺に忠誠を誓っていることが俺が正統なる王である何よりの証拠だ!さぁ、やれっ!この偽王を騙る反逆者を討て!」
悠然と語った第2王子だったが、―――次の瞬間。
「げふっ」
何故か唇から溢れ出た血の味と腹部に走る鈍い痛みに、第2王子は恐る恐る自身の腹を見降ろす。
そこには・・・
先ほど知らせを届けに来て縮こまっていた文官、―――いや文官のはずだが顔の上半分に鬼面を付けた男がいた。そしてその手が伸びた先には一振りの短剣が握られている。
「がはぁっ、んなぁ、おま、えっはぁっ!」
「あははははっっ!バカってこういうのを言うんだな!あの愚王の血をこうも色濃く受け継ぐとは!ひとついいことを教えてやろうかぁ?本物の“鬼面”はこっちだよ」
先ほどのおどおどした様子から一変し、“鬼面”は愉快そうに笑う。そして目くらましにしていた術を解き、本来の黒髪を晒し出す。
「は?」
「あっちは俺の部下。余興を楽しむためにわざと付けさせたんだァ~」
「何をっ」
鈍い音が響き第2王子が床に叩きつけられる。そして顔の横にぐしゃっと投げ捨てられた肉塊を目にし、恐怖で絶叫する。
「うわあああぁぁぁぁぁっっ!!は、母、上?」
第2王子は驚愕の表情を浮かべる。それは現在、ふたり残っていた国王陛下の側妃のひとりの頭部であった。
「な、何故母上をおぉぉっっ」
「何故?当然のことだ」
淡々と告げたのは王太子のスオウであった。
「その女には私の母と第5王子の母を不当に殺した罪がある」
「そ、そんなもの!証拠はどこに?」
「先代を拷問して吐かせたんだァ?本当によく使ったもんだねぇ」
そう愉悦の笑みを浮かべながらほくそ笑んだのは鬼面であった。
「せ、先代?」
「代替わりにも気が付かない愚鈍な主君など、主君ではない」
「んなっ!?」
「あと、連れて来い」
立ち上がった鬼面が呼ぶと黒ずくめの集団が縄で拘束した女を連れてきた。猿ぐつわをはめられながらも「うー、うー」と唸り続けている。
「んなぁっ!?キキョウ!?」
第2王子は驚愕しながらその女、自らの妃の名を呼んだ。




