第7話「蘇るトラウマ」
能力を失った事で暴走したサトリ……
恐らく彼奴じゃろう。
……さて、どうなることやら…。
氷華「ここだ。」
広い空間に1人、少女が端にてうずくまっておった。……やはり彼奴だったか。あの黒い帽子、黄色い服、緑のスカート、そして紫の第三の眼。だが、その眼に一つの大きな異変……いや、というよりは「元に戻った」と言うべきじゃろうか。そう、今まで閉じていた第三の眼が、大きく見開いておった。
氷華「もしかしたら知り合いかもと言っていたが、合っていたか?」
マミゾウ「予想通りじゃ。しかし……」
氷華「ん?」
マミゾウ「私が知っている彼奴は、もっと能天気で自由じゃった。だが、今はああして端にてうずくまっておる。恐らく、彼奴は能力によって心を保っていた。しかし、能力を失った事で、本来の『心を読む』能力が蘇り、何かに恐怖していると見える。」
氷華「心を読む能力が蘇った……?」
マミゾウ「儂が彼奴と会った頃は、心を読めないサトリじゃった。恐らく、彼奴の能力は心を閉ざす事で手に入ったもの。それが失われたんじゃ。」
氷華「なるほどな……それで奴は閉ざした心をを無理矢理開かれ、ああしてうずくまっていると言う事か?」
マミゾウ「まあ、そんなとこじゃ。」
氷華「……そうか。」
儂等がこう話している時、うずくまっていたサトリが、ゆっくりと身体を起こした。
氷華「……さて、マミゾウ、準備は良いな?」
マミゾウ「万端じゃ。」
氷華「……よし。」
氷華殿は、ゆっくりとサトリに近づいた。儂も後ろからついて行く。
「……また……あなた……?」
氷華「……お前を封じに来た。今度は前の様には行かない。」
「……来ないでよ……」
……随分と変わるもんじゃな。
氷華「そうは行かない。お前を封じなければ、ここが持たない。ここは私の、いや、あの方の計画に必要不可欠な場所。それを壊されるのだけは勘弁だ。」
……ほう、あの方、とな。
「……あの方……?」
氷華「お前達は知る必要は無い。」
「……まあ、いいや……。とにかく……」
氷華「……まずい、来るぞ!」
「ここから……離れてよ……!」
刹那、赤い閃光が四方八方へ拡散した。
氷華「ぐあっ!」
マミゾウ「ちぃっ!」
儂等は閃光をマトモに受けてしもうた。彼奴のあの恐れ様……相当な「トラウマ」でも抱えていたのか。
……クソ、身体が動かん。やりおるわ……
妹紅「な、何だ!?」
急に強い衝撃が地面を揺らした。
藍「あっ!あそこだ!あそこから光が!」
見ると、赤い光が漏れているのが分かった。
妹紅「これはただ事じゃないな……行くぞ、藍!」
藍「分かった!」
私達は光の元へと向かった。
しかし、その時。
ぬえ「待って!」
術の防壁の中から、声が聞こえた。
藍は一度振り返ったが、怪訝な表情を浮かべ、そのまま無視しようとした。
ぬえ「ねえ!待ってってば!私も……協力するから!」
藍「……」
ぬえが、急に協力を持ちかけてきた。正直信じたくは無いが……あの光はとても強大なものだった。今だけでも、力になってくれるのなら心強い。
妹紅「……分かった。」
藍「妹紅!?」
妹紅「今は1人でも人手が欲しい。それがさっきまで敵だった奴だとしてもだ。だろ?」
藍「……確かに、先程の衝撃から察するに、相当強い妖怪がいてもおかしく無い。仕方が 無いな。」
と言うと、藍はぬえを閉じ込めていた防壁を解除した。
ぬえ「あ、ありがとう…!」
藍「一度だけだ。今度おかしな事をしたら、永久に閉じ込めてやろう。」
ぬえ「わ、分かった!裏切らないから!」
妹紅「……じゃあ、行くぞ!」
私達は、今度こそ光の元へと向かった。
続く