第5話「平安のポンポコリン」
前方には動く氷が数え切れない程いる。なら、数え切れるまで減らすまでだ。
私は、自分の身体に負担があまり掛からないよう、調節して炎の弾を撃った。
耐久性は無いらしく、一発だけで20は砕けた。
一方、フランは前衛で次々と剣を振るい、動く氷を壊している。あのスピードとパワー、敵に回したら厄介だな。そう思いながら、私も次々と炎の弾を撃つ。藍は、後衛で妖術を使いこなし、フランの援護をしている。私も援護側だが、どうも性に合わない。本来なら前衛で暴れたいところだが、今はそうはいかない。我慢しながら、フランの援護をしていく。
無心になって動く氷を破壊していると、ようやく底が見えてきた。それでも50はいるか。なら、ここは私が一発くれてやる。
妹紅「フラン、下がれ!後は私が纏めて片付ける!」
フランドール「あ、ええ、分かったわ!」
私はフランが退いた事を確認次第、大きめの炎の弾を作り出し、それを動く氷群目掛けて投げつけた。着弾と同時に、動く氷は全て散った。
フランドール「流石、わざわざ私を退かせるだけはあるわね。」
妹紅「これでも1000年は生きてるからな。」
フランドール「1000……人間の癖に、私より年上なのね。」
妹紅「そ、そうなのか?まあ、老いては無いけどな。」
その時、藍が何かを感じ取った。
藍「取り込み中済まない。何者かの気配を感じるんだ。」
妹紅「何だと?」
フランドール「あー、あそこかしらね。」
流石妖怪と言うべきなのか、2人共気配を感じ取っているようだ。私には見当もつかない。
フランドール「ちょっと一発撃ってみていい?」
藍「いや、ここは様子見……」
フランドール「やっぱり撃つ!」
フランは、気配を感じる所に向かって弾を撃った。相当の火力があったようで、地面が10cmは抉れている。
藍「……なんで聞いたんだ?」
フランドール「どうでもいいじゃない。私の気分が向いたのだから。」
藍「そ、そうか……」
妹紅「……おい、誰もいないぞ。」
藍「あれ、おかしいな。確かにあそこに……」
と、藍が言った時、後ろから不意に声が聞こえた。
「おや、予想以上に単純じゃな。所詮は狐か。」
「ねえマミゾウ、狐ってそんなに弱いの?」
「ふぉっふぉっふぉ。当然じゃろ。」
妹紅「!?」
そこにいたのは、背中に異形の物体を持つ妖怪と、かつて私と共に戦った妖怪だった。
妹紅「……狸の旦那……!?」
「久しいのう、妹紅殿。まさかこんな場所で相まみえるとはな。」
藍「……狸だと?……この狸、何処かで見たような……(そして何故私がやったみたいになっている?)」
妹紅「まあ、あの異変にも参加していたからな。私と一緒に。なあ、二ッ岩マミゾウ。……もう一人は知らん。」
「なっ……!……まあ、私も今初めて会ったから名前知らなかったけど。」
マミゾウ「此奴は封獣ぬえ。儂の古くからの友人じゃよ。」
ぬえ「まあ、そういうわけだから、ここで消えろ!」
途端、封獣ぬえと呼ばれた妖怪が自分の得物でフラン目掛けて突き刺した。が、フランは咄嗟にレーヴァテインで身を守った。
フランドール「どういうわけよ!」
ぬえ「さあ、どういうわけだろうね?生憎正体不明が売りだから、教えるわけにはいかないな!」
藍「フラン!」
藍は妖術を発動し、ぬえをフランから突き放した。
藍「一体どういう真似だ!」
ぬえ「もう一度言おうか?私は正体不明が売りだから……」
マミゾウ「まあ良いじゃろ、減るもんじゃなし。」
ぬえ「減るよ!私のプライドが!」
マミゾウ「なら儂の口から話そう。単刀直入に言うとな、儂らはある女と契約した。」
妹紅「ある女……氷華か。」
マミゾウ「そうじゃ。ここに来たら能力が使えなくなってのう。そこに明らかにここの支配者らしき女が通りかかってな。条件付きで能力を返して貰ったわけじゃ。」
藍「なるほどな。で、その条件が……」
マミゾウ「分かったようじゃな。さあ、構えい。」
妹紅「旦那が相手か……不足は無いな!」
マミゾウ「さあ、始めようじゃないか!そして化かし殺してやろう!」
続く