第16話「地獄の出会い、久しき出会い」
狸の旦那……!ぬえ……!
無事でいてくれよ……!
私は全力で氷の洞窟を駆け抜けた。
ある程度進むと、壁を壊して空けたような穴があった。
……ここか……!?
私は穴の先へ進んだ。
そこで私の目に入ったもの、それは……
妹紅「!?」
床に大きな穴と共に、狸の旦那が……倒れていた。それに、ぬえが壁にもたれかかっていた。2人とも、意識が無いようだ……。
妹紅「旦那!旦那!おい、起きろ!」
私は旦那を揺すったが、目は開かなかった。だが、死んではいない。
妹紅「……誰だ、こんな事をした奴は……!」
私のその呟きに答えたかの様に、どこからともなく声がした。
「あら、また侵入者ね。」
妹紅「!!」
私は周りを見渡した。すると、そこに金髪の女が立っていた。
と、その時。
ドガッ!
妹紅「ぐっ!?」
背中に激痛が走る。一体どこから……?
と、後ろを振り返ると、そこには赤髪の女が立っていた。
「私はね、眠れる神様を護る為にここにいるの。だから、ここに入って来た愚か者は、全て……」
……ん?眠れる「神様」……?
妹紅「……ちょっと待て。その神様ってのは……」
……もしや。
「地獄へ堕ちろ!!」
妹紅「諏訪子の事か!?」
赤髪はその台詞を聞いた途端、驚いた様子でこちらを見た。
「なっ……どうしてその名を……!?」
妹紅「……どうしても何も、私の仲間だからだ。」
「……そうだったのね。もしかして、この子達も……」
妹紅「……私の仲間だ。」
赤髪は、哀しげな表情で話した。
「……ゴメンね。痛い目に遭わせちゃって。私はヘカーティア・ラピスラズリ。」
……ヘカーティア。永遠亭の奴らが言っていた様な。確か、地獄の女神とか何とか。
ヘカーティア「諏訪子とは、ここに私が来た時に出会ったの。……だけど、彼女は意識が無かった。でも、名前と見た目は風の噂で知っていたの。私は、彼女を安全な所で休ませてあげようとしたの。」
妹紅「……そうか……。」
ヘカーティア「そしたら、この子達が入り込んで来たものだから、私は敵だと思って、容赦無く倒した。殺しては無いけどね。」
妹紅「…………。」
私は何も言えなかった。
ヘカーティア「……妹紅。……諏訪子の所に案内しても良い?」
妹紅「……頼む。」
私はヘカーティアに案内され、諏訪子がいると言う小さな洞穴へと入った。
歩いて1分程。諏訪子は居た。壁に寄りかかり、眠っている。
ヘカーティア「……諏訪子。貴方の仲間よ。」
妹紅「……意識が無いんじゃ無かったのか?」
ヘカーティア「無いわよ。でも、こうしたいの。」
妹紅「……そうか。」
その時、諏訪子の身体がピクリと動いた。
妹紅・ヘカーティア「!!」
そして、諏訪子の目がゆっくりと開かれた。
諏訪子「……んん……」
妹紅「……諏訪子……!無事で良かった……!」
私の視界が曇った気がしたが、気のせいだろう、きっと。
諏訪子「……妹紅……!……と、えーっと……?」
ヘカーティア「ヘカーティア・ラピスラズリよ。貴方を護ってたの。」
諏訪子「……そうなの……?……ありがとう。」
諏訪子に会えた。それだけで私の気分は大分軽くなった。
……だが、まだあの2人の意識が戻っていない。
妹紅「……ヘカーティア。お前は能力を扱えるのか?」
ヘカーティア「え?問題無いけど。」
妹紅「……神の力って奴か……。ただ、その内使えなくなるだろうよ。諏訪子がそうだった。」
ヘカーティア「さて、どうかしらねえ?」
妹紅「……まあいいや。……じゃあ、その能力であの2人を治療出来ないのか?」
ヘカーティア「私の能力はそういう系統じゃないけど、『別の私』を張り込みで看病させる事は出来るわ。」
妹紅「ほう、そんな事が出来るのか。じゃあ、頼む。」
ヘカーティア「分かったわ。」
ヘカーティアはそう言うと、左右にそれぞれ青髪と黄髪のヘカーティアを召喚(?)し、狸の旦那とぬえの看病を始めた。
ヘカーティア「これで良し。」
妹紅「……ありがとう。」
ヘカーティア「いえいえ。……そうだ、残りの私、つまり貴方と話している私は貴方と共に行きたいんだけど、良いかしら?」
妹紅「……私は問題無い。」
諏訪子「……私も、大丈夫。だって、命の恩人だから……。」
ヘカーティア「じゃ、ご一緒させて貰うわよん。よろしくね。」
妹紅「お、おう、よろしく。あ、私は藤原妹紅だ。」
諏訪子「……私は洩矢諏訪子よ。」
ヘカーティア「ええ。よろしくね、妹紅、諏訪子。」
私は久しき仲間と地獄の女神と共に、この場を後にした。