第12話「生と死の境界」
私達は、氷華を探しているぬえを探した。
数分後にぬえは見つかった。
マミゾウ「ぬえ、どうじゃ、見つかったか?」
ぬえ「あ、そっちは終わったんだね。それがねえ、結構色んな所を探し回ったんだけど、見つからなかった。」
マミゾウ「ふむ…何処へと行ったのじゃろうか…。」
氷華の行方はまだ分からないまま。このままでは何も進まない。……どうしようか、と考えていたその時だった。
「失礼」
何処からか声が聞こえたと思った矢先、狸の旦那とぬえが急にいなくなってしまった。
妹紅「なっ!?旦那!?ぬえ!?」
藍「これは……まさか……!」
「貴方もここへ迷い込んでいたのね、藍。」
そこに居たのは、幻想郷でぶっちぎりに怪しい奴だった。
藍「紫……様……!?」
紫「そして、久しぶりですね、妹紅。」
妹紅「お前……!」
こいつが出てきたって事は、やはり何か関わりがあるのか、この異変と。
そして気持ち悪い程の礼儀正しさ。
妹紅「一体何の真似だ!」
紫「簡単な事。ここで貴方を試します。」
藍「えっ……?」
紫「藍、貴方は下がっていなさい。これは貴方と妹紅の為よ。」
藍「……。」
妹紅「藍……悪いが、お前の親玉を倒させて貰う!」
紫「さあ、来なさい!」
藤原妹紅vs八雲紫
あいつはどうやら能力を封じられていないらしい。となると、ますます怪しいな。私は様子見で、炎の弾で牽制射撃を行った。
だが、その炎の弾は全て隙間へと吸い込まれていった。
紫「無駄。遠距離攻撃は通りませんよ。」
妹紅「クソッ、能力が失われてさえ無ければ……。」
紫「……。」
紫は少し表情を曇らせ、私へと多数のレーザーを放った。私は何とか全てを避け切った。
妹紅「はぁ……。」
紫「あれを避け切るとは見事です。しかし……。」
すると紫は、私の周りを結界で囲った。
妹紅「なっ……!」
紫「それでは認められません。」
妹紅「認めるって……何をだ!」
紫「さあ、何をでしょうね?」
紫は更に強固な結界を重ねた。
妹紅「まずい、どんどん結界が……!」
紫「このまま終わるのですか?だとしたら……さっさと終われ。」
紫は冷酷な一声を放ち、
紫「……生と死の境界。」
結界に物凄いエネルギーを纏わせ、放出した。
妹紅「ぐっ……!?」
紫「このままじゃ試験は不合格ですわ。貴方は私の結界に封じられて死ぬ。」
藍「!? 紫様、何を……!」
紫「藍。」
紫は藍に鋭い眼差しを向けた。藍は圧力に負け、黙ってしまった。
……死。昔なら、このまま受け入れていただろう。このまま、私は天に召されていただろう。
だが、今の私は違う。ここで死ぬ訳にはいかない。死にたくない。理由?それは……
……ある。
妹紅「うおおおおお!」
紫「!!」
藍「も、妹紅!?」
それは……。
「この世に未練がある」からだ。
パリィィィィン!
私は、決死の炎で紫の結界を破った。
……こんな所で、死んでたまるか。
憎き月を殺すまでは、絶対に死なない。
そんな決意が、私の心に火を灯した。
紫「……お見事、合格よ。」
藍「妹紅……!」
藍は驚きを隠せていなかった。何せ、私の周りを激しい炎が完全に包んでいるのに、私の身体は一切傷を負わない、からな。
しかし、自分でも驚いている。これは一体どんなカラクリだ?
妹紅「……紫。お前は……」
紫「だから言ったでしょう。『貴方を試す』って。貴方の枷を外してあげたのよ。」
妹紅「枷を……外しただと……!?」
紫「ええ。貴方は今、生と死の境界の狭間にいる。つまり、今の貴方は『生きても死んでも』いない。」
妹紅「……。」
紫「まあ、ざっくり言うなら、貴方は『不老不死』に戻ったのよ。一時的だけど。」
妹紅「……そうか。」
……八雲紫。全く、食えない奴だ。
妹紅「……紫。」
紫「何かしら?」
妹紅「……ありがとう。」
紫「……どういたしまして。」
紫は笑顔で返した。
紫「さて、貴方の仲間を返すわね。」
紫は隙間を展開し、旦那とぬえを隙間から出した。
ぬえ「わっ!」
マミゾウ「うおっと、一体何が……。」
紫「じゃ、私はここで。」
マミゾウ「!! お前さんは……!」
妹紅「旦那、大丈夫だ。紫は私を試しただけだ。」
マミゾウ「試したじゃと?一体何を……」
旦那はそう言った直後、私から迸る炎のオーラを感じ取り、全てを納得した様だった。
マミゾウ「ほうか、ほうか。妹紅殿、お前さんは再び不老不死を得たのじゃな。」
妹紅「そうだ。紫の能力で一時的にな。」
マミゾウ「なるほどのう……。紫殿め、粋な事をしおって……。」
旦那は何故か嬉しそうだった。
藍「……。」
藍は未だに驚いている様だ。
妹紅「藍……大丈夫か?」
藍「あ、ああ……大丈夫、だ……。」
恐らく、余りの出来事に混乱してるのか。無理もないな。
妹紅「……とりあえず、氷華を捜そう。」
藍「……そうだな。」
私達は、改めて氷華の捜索を行った。
続く