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アルカナの戦慄  作者: 三古谷
第一章 『gold angel』
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『百合の咢』

「gold angel」

そう呟いた帆凪様は、片手に資料を持ち、片手に赤ん坊を抱えていた。

アンマッチでありながら超クール!

5月にナターレくんが生まれてからというもの、常時あんな姿勢。

そして、かなりこなれている。

それもそうだろう。これでもう4人目なんだから。

2人目の時も、3人目の時も、これで最後と言っていたのに。

まあ、私にとっては俺得!でしかないのだけれど。


それにしても…、

「何ですの?それ」

gold angelなんていう単語は初めて聴いた。

能力者レジティーマとか制御装置リミッターとか悪魔リビドーなら何度となく聴いたけど。

その名称も聞き慣れないし、そういう言い回しもあまり聞かない。

意味なら解るけど…

普通なら金の天使というだろう。

“英語”なんて使う国はもう何処にもない。

まるで気取った小説か映画のようだ。

もっともファンタジーではないことくらい解りきってるけど。


すると、私の膝に座っていた女の子が花の髪飾りが着いた人形を選んで掲げた。

「いいーかいす」

長女で3人目のナタリアちゃん。

態々その人形を選んだことから、花関連ということは伝わってくる……


「そうそう~

 “リリィーカリス”ね~」

帆凪様が微笑むと、ナタリアちゃんはどやぁぁあと、自慢げな顔で私を見た。

その顔を見た瞬間、私の頭に、まるで鈍器に殴られたような衝撃が走った。


……かわいいっ!堪らない!

何なのこのキュートさ!!!!


堪らずナタリアちゃんを抱き締めた。

落ちちゃわないかと心配になるくらいのくりっくりの大きく可愛いお目目!

そして真っ白できめ細やかでやわらか~いマシュマロ肌!

この子達のすべてが堪らない~………


慣れっこの帆凪様は萌え死にそうな私をかる~くスルーして話を進めた。

「商業協同組合でね。

 それも非合法の。」

私は驚いて、さっと顔をあげ帆凪様の顔を見た。

「非合法ですって?!」


帆凪様は軽く頷いた。

「かなりレアなモノばかり売ってるの。

 物だけじゃなく…各国の軍やら政府やらの情報とか、要人の個人情報とか…ねぇ」

帆凪様はやれやれという感じに肩を竦めた。

それは……かなり生々しい。

今のこの世界じゃ、目に見える武力より、情報の方が有益なこともある。

情報社会とは正にこの事。

信じられるはずだった自分の脳みそすら、最近出来たチップで怪しいところだ。

もっとも、私は入れてないけど。

何故って?

高いからだよ!

いや、そこまで高くはないんだけど…無くても今の所は生きていけるし。


今の所はって言うのは、これからはどうなるか解らないから。

この世のすべてのものは価値があるからこそ存在し続けられるんだから。


それにしても……ただでさえ、ほぼあらゆるものが機械によって操作されているというのに、人間の思考にまで機械が介入すれば、リリィーカリスはぼろ儲けだろうなぁと思う。

もっとも、そんなに杜撰ずさんな作りには、チップもなって居ないのだけれど。


「そんな組織が新たに目をつけたのが、アンゲルスってことよ。」

帆凪様の溜め息混じりの言葉に、私は大形納得した。

確かにアンゲルスの情報なんて、まだ誰も持っていないだろう。

部外者で一番情報を持ってるのなんて、正直私だ。

現在進行形だが、心配になるくらいジャンジャン情報漏洩ろうえいしてくる。

しかもそれは、帆凪様だけに留まらず…。

けいパパや颯天さんに至っては意見まで求めてくる。


けれど逆に言えば、一般人である私に漏れても何の問題もない程度の情報しか流れていない。


「アンゲルスの情報って言ったら、能力者とか

 それこそ兵器としてリミッターとか、セカイとか、それに魔界の情報。」

考えてみれば、アンゲルスってとんでもない…。

何がとんでもないって、異能者の存在がとんでもないのだ。

今、能力者レジティーマだって世間が知ってるのは、火砕がさい夫婦の愛雅えみやさんと泰芽たいがさん、

そして懸憐かれんさん、真霧まきりさんの四人だけ。

それ以外の能力者の個人情報は一切ベールに包まれている…。


だって、武器も何も持って居ないのに、攻撃が出来るのだ。

人にもよるけど、最低でも戦車と同レベル以上の強さはある。

たった一人で…だ。

帆凪様なんか家くらいなら、指先ひとつで~ダウンさ~なのに。

ちょっと言い過ぎた。

デコピンひとつかな。


それにセカイと魔界の情報。

使いどころはあまり解らないが、確かに知っていて損はなさそう。


「そんな金にしかならないモノを提供してくれる天使アンゲルス

 で、gold angelってね。

 あ、この隠語はまだ掴んでないていだから。 」

シーねと唇に人差し指を軽く当て、帆凪様がニヤリと笑った。

て…ていって………やだ、帆凪様アンゲルスも怖かった。

………でも好き!


だ………駄目だ。

病気が治りそうもない…………………………………………


…………………………………………


………………




そして今に至る。

そんな、隠語を彼…佐久間さんは口にした。

これを疑うなと言う方が無理な話だろう。

どう考えてもリリィーカリス…、そうではなくとも怪しすぎる。

…もちろん、それに反応した他の人も。

確か、エッカートさん、近川さん、結子さん、鎹さん、桜庭さんの5人。

もちろん、ただ単にその言い回しに驚いてという可能性もある。

鎹さんは…何か妙に引っ掛かる。

あとは解んないなぁ…。

怪しいと言われれば皆、怪しい気がしてくる。疑心暗鬼?!


「…何、百面相してるの?お前。」


「わっ…」

突然降ってきた礼人の声に私はぎょっとした。


「わっ、て…

 今の今までずっと一緒に居ただろうが…よ!」

柄の悪い不良みたくあーん?あーん?という顔をされた挙げ句、ついでにデコピンを喰らわされた。

大変不服だ。遺憾だ。

気を許しすぎると存在忘れるみたいなことあるでしょ?むしろ喜べ!(?)


「少し考え事をしていただけですわ」

と、諸々の感情は置いといて微笑んだ。

実際、今も頭はフル回転だ。

どう尻尾を掴むかしか考えてない。

白なら白で全く構わない。

ただ、事実を確かめたいだけ。


「考え事?

 …天都のこと?それとも…」

礼人は続けようとした言葉を出さずに黙った。

全く的外れではあるけど、礼人の言わんとすることは解る。


流れからして、次に言おうとしていたのは内匠さんだろう。

確かに、あまりに…えーっと、内向的?じゃないな。何だろう。

……友好的とは言えなかった。

ああいう雰囲気が嫌いなのは解る。

ただ単に人嫌いか、人見知りなのかもしれない。

そこに無理に頭を突っ込むのは個人的に、気が引ける。

もし相談してくれるなら、それは凄く嬉しいことだけど…

…ちょっと話し掛けてみようかな?!


「内匠って奴さ。何か、変じゃない?」

変と言うのなら佐久間さんの方では?

私の頭にはまだそっちの事しかない。


「…………ハリネズミっぽい。」

…内匠さんに代わって殴ろうかと思った。

何だろう。

何故か無性に腹が立つ。

馬鹿にしてるでしょ?え?こら?あーん?あーん?


「何だよ…。」

うっっわ、吃驚した!

また…、このテレパシー男め!読心術か!


でも動揺は変わらず表には出ずに、すぐに微笑みが浮かぶ。

「何でもありませんわ。

 それより、他に気になることはなかったんですの?」

情報バッチ来い!

さすがの礼人にもリリィーカリスの事は話せない。

でも協力はしろ!という鬼畜ぶり。


「いや、変わり者ばっかだったよ…

 俺もお前も言えた口じゃないと思ってたが…、俺結構マトモなんじゃ?」

うわ………

ナタリアちゃんと同じ自慢げな顔なのに、何でこうも可愛くない。

…どころか腹が立ってくるのか。


「マトモな人は自分をマトモなんて言いませんわ

 ハッ、つい本心が!」

しまった!みたいな顔をしてからニヤァっと笑った。


「ホント、お前…、どうかと思う。」

と、呆れたような顔をしたのでノリが悪いなぁ…とやれやれという仕草をしたら、スパーンっと頭を殴られた。









そのまま礼人と途中まで帰るため外へ向かっていると、

「ああ、陽灯ちゃん。

 このあと、時間あるかな?」

ニコニコと人当たりの良さそうな笑みを浮かべながら、佐久間さんが寄って来た。


「……」

まさか、相手の方からやって来るとは…。

帆凪様を思うならば、彼を見極めなければならない。

けれど私は今、何の材料も持ってない。

…だからと言って、その材料を調達する宛もそんなにあるわけではない…。


すると隣に居た礼人に、肩を捕まれた。

「悪いけど。

 こいつは俺の連れだから」

…間違ってはない。

かなり仲が良いとは思っている。

………謎に信頼してるな、私。


佐久間さんは、礼人の事を見て何度か瞬きしてから、おもむろに口を開いた。

「………付き合ってるの?」

良く感情の読めない質問だ。

…単に好奇心………?

だとすれば、随分と余裕なようね。

自分が責められる立場にないのか、それとも…それほどの切り札を持っているのか…。


「お?

 お、おお!そうだ!」

「そうなの?」

ちょっと驚いたように、佐久間さんはこちらを向いた。


「………え?

 いえ、違います。」

礼人をそういう目で見た覚えはちょっとない(笑)

おっと、悪口ではない。

(都合の)良い男だとは思ってる!


「って言ってるけど」

佐久間さんが若干、呆れたような、哀れむような顔を礼人に向けた。

…うん。これは完全に好奇心だったね。

それなら厄介だ。


「おまっ…空気読めよ!」

「いやいやぁ…」

礼人にそのまんま返すよ…

…………まあ、“嫌味”を知らない以上、読めるはずもない。

それに、読めていないからこそ、私は礼人を信頼できるんだから。


「結局、時間はあるんだね?」

さて、信頼できない張本人にそう聞かれた。


「愛本ぉ……?」

信頼できる人に、行くなよぉ…みたいな視線を向けられた。


それでも私は敢えて、

「はい。有りますわ。

 私も話したいことがあるので。」

帆凪様にも、礼人にも、手は出させない。


「ええっ…

 お前、会ってすぐにそう言うのは…どうかと思うよ!!」

お前はお父さんか!って突っ込みたくなるような言動だね。

あれだよね、礼人って世話好きだよね。

猫全然被れてないよ。


「絶対、礼人が思ってるのと違う。」

でもお父さんの言動って大抵にして的外れなんだよね!


「…ねぇ、やっぱり付き合ってるんじゃ………」

佐久間さんが困ったような顔をしながら言った。


「だから違いますって…

 ……それにそうだったとしても、貴方に関係はありませんわ。」

ここまで余裕を持たれると、少し不愉快だ。


それを察知してか、佐久間さんは肩を竦めて不適に笑った。

「その通りだね」

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