xX-17 帰ろう。
観測者
――最終回
大越
「おい!いま何時間目だ?」
中山
「三時間目だよ」
大越
「給食じゃねーか」
中山
「三時間目だってば」
――トントンッ
保健室の扉を叩く音。
中山
「どうぞー」
ジャージ姿の北野先生が入ってきた。
北野先生
「大越くん目が覚めたのね」
「よかった…」
北野先生はベッドの前でホッと息をつく。
天使は相変わらず、ずっと校庭を見つめている。
相田
《宇佐美が気になるか》
直樹
〈……食べるんだね〉
相田
《…なにを》
直樹
〈人を……〉
相田
《なにを言っているんだ?》
北野先生
「大越くん。熱測ろうか」
体温計を渡された。
脇に挟む。
相田
《直樹…お前さっきから……》
風来人は椅子から立ち上がる。
そっと移動する。
静かに天使の隣に屈んだ。
風来人
『なにが見えるの?』
直樹
〈血…〉
風来人は驚いたように天使の顔を見た。
体温計が鳴る。
大越
「熱ないよ」
北野先生
「ないね」
「どうする?校庭に戻る?」
少年は北野先生から視線を外した。
北野先生
「中山くんありがとうね」
「戻って大丈夫よ」
中山
「大越さんが心配です」
少年は中山へ呆れた表情で視線を向けた。
相田
《サボりたいだけだろ》
中山
《違う!本気で心配なんだってば》
相田
《はいはい…》
「僕、戻ります」
中山
《えっ!!》
相田
《うるせーな…》
北野先生
「先生と一緒に行きましょう」
北野先生は小さく微笑む。
少年はベッドから立ち上がる。
相田
《直樹。どうするんだ?》
直樹
〈行く!〉
返事はするものの、校庭から視線を外さない。
風来人
『俺も!』
少年は北野先生へ視線を向けた。
大越
「早退しないからね」
北野先生は頷いた。
扉へ向かって歩く。
少年は後ろを振り返る。
天使は窓辺から動かない。
相田
《そいつをよろしくお願いします》
風来人
『りょーかい』
◇◆◇
校庭へ足を踏み入れた。
――キィーン
相田
《っ!耳鳴り…》
《ん?》
《いま空が光った?》
中山
《え?》
相田
《落ちてくる》
中山
《なにが?》
風が止む。
音と空気が圧縮される。
日が陰、薄暗くなった。
少年は周囲を見渡す。
目を疑った。
大越
「え…」
息を呑む。
大越
「いない…」
先生と児童の姿が――消えた。
その場に居るのは、少年と中山、風来人そして天使。
――宇佐美先生。
風来人
「ケロちゃん!」
中山
「届いたか…」
大越
「…中山?」
宇佐美先生が空を見上げている。
血相を変えて逃げ出す。
なにかが高速で落下してくる。
次第に輪郭が見えてくる。
黒いローブの女性。
手元には――双短剣。
宇佐美目掛けて斬りかかる。
???
「ミンチにしてやる!!」
――刃が高速で光る。
宇佐美はサイコロ状に崩れ落ちた。
血一つも落ちていない。
――灰となって消え去った。
女性は音もなく降り立つ。
少年は唾を呑む。
女性と視線が重なる。
???
「おまたせ、輝」
直樹
〈ママ?〉
女性は天使へ視線を向ける。
???
「直樹…ごめんね」
そして、少年へ。
???
「輝…」
「直樹…」
「一緒に来て」
大越
「真彩……一体どこへ…」
真彩
「本物の日常へ」
大越
「どういうことだ…」
真彩
「……借り染めの真彩がいい?」
「この世界はゲームの中」
少年は言葉を失った。
真彩
「あなたも、キミも」
指で差す。
つづけて…
真彩
「直樹も」
「相田くんも」
「生身は…こっちにある」
「お願い。帰ってきて」
真彩は天使へ視線を向けた。
真彩
「直樹。灯ちゃん待ってるよ」
天使は目を見開いた。
真彩
「にしても…懐かしい姿ね」
風来人
「あなたは、なに者なのですか?」
真彩
「私?」
「ただの主婦よ」
「ここではそれしか言えない」
真彩は杖を掲げた。
空間に時空の門が開く。
大越
「証拠は!」
「ゲームである証拠は!」
真彩
「見てわからない?」
大越
「わからない。異能者が多すぎて…」
首を横に振る。
真彩
「それが証拠…」
首を傾げられた。
真彩
「ログアウトしよう」
中山は真彩の隣に立った。
中山
「言っただろ…助けに来たって」
中山は少年を見つめる。
中山
「向こうで待ってる」
そう言い、門の向こう側へ消えた。
風来人
「ここへ戻ってこれる?」
「この世界気に入ってるんだ」
真彩
「勿論」
微笑む。
風来人
「信じるよ?」
真彩は頷く。
風来人は意を決して門を潜って消えた。
大越
「俺はこの世界を攻略したい」
後ずさる。
直樹
〈僕は…〉
真彩は天使へ近づく。
ふわっと包みこんだ。
直樹
〈ま…ママ〉
真彩
「小さ〜い…こんな時期あったなぁ」
「孫を抱いてるみたいだわ」
大越
「孫?」
真彩
「えぇ?気になる?」
少年は真彩へ近づく。
大越
「そりゃそうだろ!」
真彩
「ゲームにドハマりした人に言うべきかどうか…」
呆れた表情で言われた。
真彩
「ねぇ…交渉しない?」
大越
「はい?」
真彩
「純にぃを助けて欲しい」
大越
「純にぃ??」
真彩
「異空間保つのそろそろ疲れてきたんだけど…」
大越
「詳しくは向こうでって言いたいんだろ」
「わかったよ!」
真彩
「うん」
真彩は天使を抱いたまま、少年の姿の相田と共に時空の門を潜った。
Next time
――目覚め。
観測者
ここまで、ついてきてくれてありがとうございました。
こころから、感謝!感激!うれP!
※9月4日午前1時10分 新しい物語が始まります。




