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屑守の真法拾い 〜魔法は世界の未来を前借りする禁術でした。拾ったガラクタで失われた役目をつなげ返す〜  作者: 妖怪ステーキ


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第9話 黒い夜の火種

挿絵(By みてみん)



二人の男が砂漠から出てきたのは、夜が深くなった頃だった。


片方は背が高く、もう片方は小柄だった。二人とも砂まみれで、唇が乾いて割れていた。大きい方が小さい方を支えていた。小さい方は足を引きずっていた。


「火が見えた」と大きい方が言った。声がかすれていた。「火があると思って来た。火がなかったら、俺たちはそこで終わりだった」


アルブとマブロは顔を見合わせた。


火はまだ起きていない。


なのに、火が見えた。


それは順番が逆だった。


でも真法は、たぶん、時間の順番だけで動いているわけではない。


野営はしていたが、火を起こしていなかった。砂漠の夜は冷えるが、燃料が惜しかった。それに熱砂の平地を翌日に控えて、余分な荷物は減らしたかった。


「火が見えたんですか」とアルブは言った。


「確かに見えた。遠くにあった。近づいたらなくなった。でもおまえたちがいた」


大きい方の男は、腰を下ろした。小さい方の男も座り込んだ。二人とも限界に近い顔をしていた。


「水を少し」と小さい方が言った。


マブロが水筒を渡した。アルブは止めようとした。水は今日やっと確保したばかりだ。三人分で岬まで持つ計算で、余裕はない。でもマブロはすでに渡していた。


「少しだけ」とマブロは言った。「飲みすぎるな、体が受けつけない」


男たちは言われた通り、少しずつ飲んだ。それだけで顔の色が少し戻った。


「どこから来たんですか」とアルブは聞いた。


「南の村から」と大きい方が言った。「王都への道を探していた。でも砂嵐に巻き込まれて、道を失った。五日歩いた。水は昨日尽きた」


「王都へ何しに」


男は少し黙った。それから言った。「食料がなくなった。村に子供が十人いる。王都に行けば仕事があると聞いた。でも着けない」


アルブは黙った。


砂漠に出てくる人間の理由は、大抵似ている。食料が尽きた。水が尽きた。仕事がない。家族がいる。博守として採取に出る人間だけじゃない。砂漠は逃げ場でもある。でも砂漠は逃げ場にならない。


「今夜はここで休め」とマブロが言った。


「だが——」アルブが言いかけた。


「火を起こす」


「燃料が」


「黒砂塊がある」


アルブは黙った。黒砂塊は大事な素材だ。売れば金になる。でもマブロがそう言うなら、マブロに何かある。


マブロは荷袋から黒砂塊を取り出した。手のひらで包んだ。目を閉じた。


男たちは怪訝そうに見ていた。


アルブは見ていた。


マブロが静かになった。砂漠の夜の風が吹いた。砂の音がした。遠くで何かが鳴いた、砂漠の虫だろう。


それから、マブロの手のひらの下で、かすかな光が生まれた。


小さかった。豆粒ほどの光。でも確かに光っていた。赤い光。火の色だ。


マブロがゆっくり手を開いた。


黒砂塊の表面に、小さな火がついていた。燃えていた。炎ではなく、熾火のような、穏やかな火だった。


大きい方の男が息を呑んだ。


「焚き火の材料を出せ」とマブロが言った。声は平静だった。「これから移せる」


アルブは砂根草の繊維を取り出した。乾いた繊維に黒砂塊の火を近づけると、移った。繊維が燃え始めた。それを砂の上に置いて、虫殻の乾いたものを重ねた。小さな焚き火ができた。


炎が立った。


砂漠の夜に、火が灯った。


男たちが火に手を向けた。大きい方が小さい方の肩を抱いた。二人とも黙っていた。火を見ていた。


「どうやった」と大きい方の男がアルブに聞いた。


「火の役目を思い出してもらった」とアルブは言った。男には伝わらない言葉だったかもしれない。でも他の言い方が分からなかった。


「魔法か」


「違います」


「じゃあ何だ」


「真法です」アルブは言ってから、あまり説明できないと気づいた。「火はもともと、人を集めるものでした。温めるもの、煮るもの、照らすもの。黒砂塊がその記憶を持っていた。マブロがそれを思い出してもらった」


男は理解したかどうか分からない顔をして、でも「そうか」と言った。


マブロが戻ってきて、火の前に座った。「明日、俺たちは熱砂の平地を越える。おまえたちはどうする」


「一緒に行かせてほしい」と大きい方が言った。「火を見て来たのは正しかった。こいつらについていけば生きられると思った」


「平地は止まれない。足を引きずってる人間が越えられるか」


小さい方の男が顔を上げた。「越える。子供が待ってる」


アルブは反対したかった。


水も足りない。足を引きずる人間を連れて熱砂に入れば、全員が死ぬかもしれない。


でも、置いていけば、この二人は今夜か明日には死ぬ。


どちらも正しくなかった。


マブロはしばらくその顔を見た。それから言った。「分かった。一緒に行く。ただし俺たちの速度で歩け。遅れたら置いていく」


「置いていかないだろう」と大きい方が言った。


「置いていく。本当に置いていく。でも遅れないようにしろ」


男は笑った。疲れた笑いだったが、本物の笑いだった。「分かった」


夜が深くなった。


焚き火が燃えていた。砂漠の夜の寒さの中で、火の周りだけが温かかった。大きい方の男が小さい方の男に上着をかけていた。小さい方の男は眠っていた。


マブロがアルブの隣に来た。小さな声で言った。「水が足りなくなるかもしれない」


「知ってる」


「どうする」


「砂漠に白い砂があれば、また拾う」


「あるかどうか分からないのに」


「あれば拾う。なければ考える」


マブロはしばらく黙った。火を見ていた。それから言った。「さっき、火を思い出してもらったとき、何が見えたと思う」


「何が」


「炉の中の火じゃなかった。外の火だった。野営の火。旅人が道の真ん中で起こした火。その火に別の旅人が気づいて近づいてくる。火は人を集める。温めるだけじゃない。場所を知らせる。ここに人がいると知らせる」


アルブは焚き火を見た。


「だから俺には見えたんだ」と男が言っていた。火がなかったのに、火が見えた。マブロが黒砂塊を握っていた、その瞬間に。役目を思い出した火の気配が、砂漠に漏れた。


「真法は使うんじゃなくて拾うもんだ」とマブロが言った。「でも拾ったものは、ちゃんと届く」


「うん」


「ばーちゃんが言ってた。拾ったものはつなげ返さないといけないって。つなげ返したら、ちゃんと届くんだな」


アルブは頷いた。火が燃えていた。男たちが眠っていた。砂漠の夜は冷えたが、火の前だけは温かかった。


明日、熱砂の平地を越える。


止まれない、眠れない、歩き抜く一日が来る。でも今夜は火がある。人が集まっている。それで十分だとアルブは思った。


翌朝、四人で熱砂の平地に踏み込んだ。太陽が真上に来る頃、アルブは砂の下に石畳の記憶を感じた。むかしここは道だった。人が歩いた道の記憶が、今も砂の底に残っている——その記憶を足の裏で読み続ければ、方角を失わずに平地を渡れるかもしれない。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


第9話では、マブロが火の役目を拾いました。


火は壊すものではなく、夜に人を集めるもの。

寒さの中で、誰かを生かすもの。


マブロは勢いで動く子ですが、彼が拾う火は、ただ激しいだけの力ではありません。


アルブが世界の奥に沈むなら、マブロは世界の外へ走る。

二人の違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回は、砂漠の底に眠る道をたどります。

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