助言 5
あの人がやっと出る。
感じ。
「リサ。母さんが呼んでる」
ひょいと顔を出したクリスは、ヨシュアを一瞥しただけでリサに視線を向けた。お帰りを言う暇もない。ヨシュアの口はパカッと開いたまま、何か言おうとして言えずにいる。
クリスは素早くリサに近寄って、気を引く様に肩に触れると顔を寄せ、耳打ちする。
リサが少し笑って、頷く。
「行ってくる」
「ああ、行っておいで」
二人で交わす笑顔がこっちが照れるぐらい甘い。
リサはヨシュアの事を忘れたみたいに、立ち上がってそのまま出て行った。
リサが近くに居ないのを確認したクリスは、ヨシュアと眼を合せた。
「比べるから悪いんだよ」
「え?」
一応口は閉じた。
意味を理解するのに数秒
「お前の理想に相手を合せようとするから駄目なんじゃないか?」
さっきの話し聞いてたのか!!いつからだ?まさか全部?
恥ずかしいだろ!
頭を抱えて転がりたくなった。
「恋人は家族とは違うよ」
「解ってる」
むっと返答を返して、・・同時に。ああ、俺は妹やリサと恋人とを比べてたのかと、腑に落ちた。
そんな心算はないと言っても、心の中では引き合いに出していた。クリスは口数が少ないけど、こうやって時々困った時に助言をくれる。
悪い事をしたと反省しはしたが、寄りを戻そうと迄は思わない俺は、しばらく恋人は作らない方がいいんだろうな。
じっと、俺を見るクリスに苦笑を返す。クリスもふっと、いつに無い柔らかな笑顔で一言。
「リサより可愛い女の子はいないよ」
凝固した俺を放って、クリスはさっさと俺の前から去って行った。リサの所だろう。
「・・・惚気かよ!」




