三下ナイン相手に無双バトルですわ!
「メ、メイカさん。巻き込んでしまってすみません」
「困っている人を助けるのも、わたくしの『お嬢様道』ですわ。だから小雪さんは安心して、わたくしと賊達の喜劇を特等席で鑑賞して下さいまし」
怯える小雪さんを庇うため、私は割れたガラスの破片をヒールの先で静かに退けてから優雅に3歩前進。そして、せっかくの晴れ舞台を邪魔されたことへの、激しい怒りを込めた鋭い視線を彼らに送ります。
「一応確認なのですが、窓の修繕費だけ置いて帰るつもりはございませんの?」
「ハァ?女3人相手になんで芋引く必要があんだよ?」
「全員消せば、あとは上がもみ消すんだからよぉ!」
事態を手早く抑えようと念の為警告してみましたが、嘲るような下卑た笑みで取り合うつもりはないようです。
(この規模の豪邸を襲うにしては、無粋でお粗末な装備ですこと。でも彼らの襲撃をギリギリまで察知出来なかったとは、私ったら浮かれまくってましたのね)
会話をしながら彼らの実力を測ってみたら、部屋へ侵入する直前に下した評価を、遥かに下回る雰囲気にため息が出てしまう。
一応賊は総勢9名と数だけは多いし、手にしている武具は業物も混ざっています。
それでも、この豪邸にはおよそ不釣り合いな無骨な得物ばかりで、少し嫌気がさしてしまいそうです。
(それより問題は、神楽坂家の当主暗殺という大事件をもみ消すことが出来る彼らの雇い主。気を付けなければいけませんわね……それなら)
「エレナさん、小雪さんをお願いします。あとはこれを使って下さいな」
「……ええ、わかったわ!こっちは気にせず頑張ってね!」
万が一に備えて、会話中にひそかに取り出していた銀色の球体を、エレナさんに投げ渡す。それを容易くキャッチした彼女は一瞬驚いたあと、強く頷き球体に魔力を込め始めました。
「おい!?あんなもの何処に隠してやがったんだ!」
「お嬢様のポーチはなんでも入ってますのよ。ご存知なくて?」
「ぐっ、うざってえ!イライラするからエセお嬢の喋り方はやめろおおお!」
「っ!?」
「この程度で喚くとは3流も良いとこですわね……。これ以上は対話ではなく、拳でお付き合いいたしましょうか」
エレナさんに投げ渡した物の正体に気付いた彼らは、狼狽し怒鳴り散らかす。その声量にビクッとなった小雪さんを横目に、私はささっと全てを終わらせる決意を固めました。
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「死ねッ! エセお嬢様が!」
「何処までも三下なお方ですこと」
先に動いたのは賊の中でも一番下っ端そうな殿方。彼は耳障りな掛け声を喚きつつ、漆黒の棍を振り回しながら突っ込んできます。私はその一撃を薄皮一枚で避けながら懐に飛び込み、ストーンゴーレムすら貫く拳で顎を砕いちゃいます。
「おぐああああ!?」
「な!?コイツ中々の手練れだぞ!」
「怯むな!相手は頭の悪そうな女1人。8人もいれば楽勝だ!行け!!」
少しの怯えを厳つい口調で覆い隠したリーダー格は、動揺する手下達の突撃を命じます。
「数だけに頼る方って、どうしてワンパターンな事しかできないのかしら」
「何!?」
「わたくしはソロ冒険者。雑魚が行う多対一なんて、障害にもなりませんわ」
1人で来る相手には最小限の動きで相手の意識を刈り取り、2人以上の場合は片方の体を盾がわりにし、仲間を害して動揺する相手に投げつける。
呪文を唱える相手には喉を潰し、逃げそうな相手には、リタイアした敵の武具を投げつけ足を砕く。
魔物相手でも使わない外道の技をあえて繰り出すこと73秒。リーダー格の男以外、全ての賊を黙らせることに成功しました。
「な、なんだよ、なんだよ!!なんだ、この化け物は!?」
「この可愛らしいレディー相手に化け物なんて、失礼なお方ですわね」
「化け物じゃないなら、お前はなんなんだ!俺たちはA級冒険者だって狩ったこともあるんだぞ!」
「ふむ。それなら話は簡単ですわ。わたくしがA級以上に強いだけですわ」
「チンチクリンなお前がA級より強いなんて……はっ!?もしかしてお前は!!」
冷や汗を流し震える男は、泣き言の途中で急に黙り込む。
「失礼、そういえば自己紹介がまだでしたわね。フィナーレの直前に言うのも恥ずかしいですが、ここは名乗っておきましょうか」
「あわわわ……」
「コホン、わたくしの名前は伊都華メイカ。最年少S級冒険者にして、未来のお嬢様でしてよ!」
「あああああ……ひゃっ……」
少しカッコつけたポーズで名乗りを挙げた数秒後、リーダーさんは戦う事なく意識を飛ばしてしまいました。
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