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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
85/1667

一週間後

第二部の始まりです。隔日更新を目指して頑張ります。

 大団円で幕を下ろしたライカの救出事件から、一週間が経過した。


 世界情勢は、現状ではすべてが良い方向に推移しているように思われる。


 まず、東部戦線においては人類軍が攻勢を強め、魔王軍はこれまでの粘り強さが嘘のようにズルズルと戦線を後退させている。


 港湾都市オターネストの近海においても、航行可能な船の多くが焼失した魔王軍を尻目に、人類軍は手際よく制海権を掌握し、海からの補給ラインを絶つことに成功した。


 また、大森林においても、魔王軍の威力偵察がなくなったことで、警備に割く人員に余裕ができ、それが住人たちの心境にプラスの影響を与えているようだ。


 毎日、朝から晩まで仕事に追われていたボルゾイも、最近はそうでもないらしく、折りを見ては、俺とライカに武器の使い方を教えてくれるようになった。


     *


 普段は子供たちの遊び場になっている広場に、気合の籠もった掛け声と、木剣がポコポコとぶつかり合う音が響く。


「やあ! やあ! えいっ!」


 ライカがぶんぶんと振り回す木剣を、俺は同じ長さの木剣でちょいちょいと受け止めていた。


「やあ!」


「ほっ」(ポコッ)


「やあ!」


「ふっ」(ポコッ)


「たあっ!」


「おっと」(ぱしっ)


 ライカが最後は突きで攻撃してきたので、その切っ先を掌で受け止めてしまった。


「もう、覇王丸さん! 真面目にやってください!」


 すかさず、ライカが眉をつり上げて非難の声を上げる。


「さっきも父上から、腕で攻撃を受け止める癖を直すように言われたばかりじゃないですか。これが木剣じゃなかったら、どうなっていたと思っているんですか!?」


「いや、掌にグサッと……」


「覇王丸さんの右腕はなくなっていました!」


「そこまでの威力は無いだろ」


 そんな大技を使えるのであれば、なぜ、あっさりとサルーキに攫われたのか。


「それに、さっきから防御ばかりで、全然攻撃してこないじゃないですか!」


「それは仕方ないだろう」


 俺とライカでは腕力が違いすぎる。


「ライカ、俺の攻撃を受け止められないじゃん」


「やってみなければ分かりません!」


「いや、分かるよ」


 俺の攻撃を受け止めきれずに地面をゴロゴロと転がって、泣きそうな顔をしながら頬を膨らませているライカの姿が、容易に想像できる。


「それに、俺はたとえ練習でも、仲間は攻撃しない主義だ」


「それはおかしいよなぁ!?」


 突然、少し離れた場所で地面に座り込んでいたハウンドが、怒りの形相で口を挟んできた。


「お前、さっきの俺との試合の時、いきなり組み付いて、地面に叩きつけたよなぁ!?」


「不測の事態が起こるのが戦闘だろ? 俺が敵なら、今頃、お前は両手両足を拘束されて、毒キノコで拷問されているぞ?」


「やめろっ! あれ以来、普通のキノコも食えなくなっちまったんだぞ!?」


 どうやら、トラウマになってしまったらしい。


「ボルゾイも何とか言ってやってくれよ!」


「うーむ……」


 ハウンドにせっつかれたボルゾイは、顎に手を当てて顔をしかめた。


「剣の練習なのは、たしかにそのとおりだが。覇王丸君の言うことにも一理ある……」


「実戦ならそうだけど、これは練習だろうが! 事前にルールの確認もしたのに、初手で組み付きはどう考えてもおかしいだろ!?」


「たとえ反則をしようと、お前ごときに負けてやるものか」


「ほらっ! あんなことを言ってるぞ!」


 ハウンドは立ち上がって、どうにかボルゾイを味方につけようと躍起になっている。


 その様子は、さながら兄弟か師弟のようだ。


「あの二人、あんなに仲が良かったっけ?」


「昔は、ああいう関係だったみたいですよ」


 ライカは心なしか嬉しそうにしながら、気軽に言葉を交わし合うボルゾイとハウンドを眺めていた。

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