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今後のこと

これで第一部は完結です。

第二部からは、毎日更新は難しそうなので、隔日(週3回くらい?)の更新を目標に頑張ります。

 その日の夜、俺は定時帰宅したと思っていた山田の仕事部屋に呼び出された。


 祝勝会でもやるのかと思えば、山田は何やら不満顔だ。


 理由を尋ねたら、愛用のタブレットを無言で差し出してきた。


     *


『中間報告』


 → メールを開封する。


『親愛なる守護天使の皆様へ

 新緑が鮮やかに感じられるこの頃、皆様におかれましては、日々ご多忙のことと存じます。

 さて、早速ではありますが、皆様が担当されております勇者の御歴々の活躍により、世界情勢に変化が見られましたので、中間報告という形で、各自の貢献度をお知らせいたします。

 ランキングはここをクリック! → GO』


     *


(絶妙に馬鹿にされている感じがする……)


 それがメールを読んだ俺の素直な感想だった。


「お前の上司って、頭がおかしいの?」


「はい」


 山田は真顔のまま、条件反射のような速度で頷いた。


 あの山田にここまで言わせるとは――――


(絶対に関わりあいたくねぇ……)


 俺は戦慄しながら、迷惑メールのように貼り付けられたリンクをタップした。


     *


『ランキング通知!

 勇者名:鬼怒川覇王丸

 貢献度:七〇〇ポイント(貢献度は奇跡ポイントとリンクしています)

 順位:全体三位

 寸評:プラスポイントは断トツでしたが、マイナスポイントも断トツだったため、総合ではこの順位になりました。奇跡の使い過ぎと、放火は控えましょう』


     *


 貢献度のプラス・マイナスというのは初耳だが、これくらいは訊かなくても察しがつく。


 多分、善行を積んだか、悪事を働いたかで増減するのだろう。


「三位か」


「そう! 三位なんですよ!」


 俺の率直な感想に、山田は異様なほど食いついてきた。


「どう思います!?」


「どうって言われてもな。順当なんじゃないのか?」


 しいて言えば、オズに命令してオターネストのあちこちに火を点けさせたことが、俺個人の放火として評価されていることが、不満と言えば不満だ。


 あとは山田の奇跡(電気ショック)使い過ぎ問題くらいだろうか。


「お前、電気ショック控えろって、書かれてるじゃねーか」


「違いますよ。そんなことじゃなくて、三位なんですよ、三位」


「それがどうかしたのか?」


「いいですか? 地球からこの世界に転生した勇者は、基本的に、今、何もできない赤ん坊のはずなんです」


「――――ということは?」


「覇王丸さんと同じように、転生ではなく転移でこっちの世界に渡ってきた勇者が他にもいるということです。しかも、最低でも二人!」


「――――ということは?」


「少しは自分で考えろ!」


 山田はぶち切れて、俺からタブレットを取り上げた。


「転移した時のことを覚えてますか?」


「覚えている。はっきり言って、忘れたいけどな」


 全身が引き裂かれるような激痛と不快感。


 血管、筋肉、自分の体を構成するあらゆるものが悲鳴を上げていた。正直、二度と体験したくない。


「あれに耐えられる人間がいると思います?」


「俺をさりげなく人間のカテゴリーから外すのはやめろ」


 そして、人間には耐えられないとしっかり認識しているくせに、それを俺に対して強行した暴挙を、心から反省して、謝罪してほしい。


 というか、同じ目に遭ってほしい。


「転移に成功した勇者が他にもいるということは、覇王丸さんクラスのフィジカルお化けが、平和な地球上に最低でも三体同時に存在していたことになるんですよ?」


 とうとう、単位が「人」ではなく「体」になった。


「怖すぎません?」


「怖いな」


 山田のようなサイコパスが、守護天使を騙って人間に取り憑いているという事実が何よりも怖い。


 もしかして、こいつを殺せばプラスポイントが手に入るのではないだろうか。


「とにかく、今後の対策を練りましょう。覇王丸さん以外にも活動している勇者がいるのであれば、協力できるかどうかも含めて検討する必要があります」


「協力か……。できないなんてこと、あるのか?」


「ありますよ。性格的にウマが合わないとか、一匹狼で協調行動を取れないとか。担当の守護天使が手柄を独り占めしたいと考えているかもしれませんし。それに――――」


 そこで、山田はわざとらしく言葉を溜めた。


「勇者が、必ずしも善人とは限らないじゃないですか」


 例えば、人間に差別された獣人が、魔王軍に与することがあるように。


 人間嫌いの勇者が、人類と敵対するケースも無きにしも非ずなのだという。


「電気ショックの奇跡は、守護対象が人の道を踏み外しそうな時に戒めとして使う、天罰的な意味もあるんですよ」


「お前は私的に濫用してるけどな」


 ただ、その天罰も、勇者が根っからの悪人だった場合には、殆ど意味をなさないらしい。


 悪事ばかりに手を染めている勇者は、奇跡ポイントが殆ど貯まらないため、電気ショックの奇跡すら行使できなくなってしまうからだ。


「はっきり言って、性善説に基づいて構築されたシステムの欠陥ですよね。そうなってしまうと、もう僕たち守護天使にできることは何もありません。転移した勇者の中に、そういう人がいなければいいんですけど。……まあ、覇王丸さんより上位の二人については、奇跡ポイントを稼いでいるようですから大丈夫でしょうけど」


 その後、俺たちは今後の方針について話し合ったが、はっきりとした結論は出ず、もう少し情報収集をしてから決めるということで、先送りになった。

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