ハウンドは有罪か? それとも無罪か?
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周囲が落ち着くのを待って、ボルゾイは話を再開した。
「それでは、最後の話になるが――――」
ボルゾイが合図を送ると、隣接する居宅部分につながる奥の扉が開いた。
道を開けるように人だかりが左右に割れる。
神妙な様子で集会所に入ってきたのは、おっさんとハウンドの二人だった。
(なんだ。ハウンドの奴、もう帰ってきていたのか)
どうやら、最後の話というのはハウンドが無事に帰ってきたという報告らしい……と思ったのだ、なにやら様子がおかしい。
よく見ると、ハウンドは罪人のように両手を紐で拘束されていた。
まるで、オターネストに行く時の俺と同じだが、恐らく、フェイクの縛り方ではない。マジ縛りだ。
「どういうことだ?」
俺が目線を向けると、ボルゾイは言い訳をするように渋い表情をした。
「やむを得ない措置だと思ってほしい。法や勅令などという大層なものではないが、一応、この集落にも掟はあるのだ」
盗みを働いたり、度を越えた暴力をふるったりした者に対しては、俺も最初に入れられた町外れの牢屋に収監して、数日間、反省をさせるのだという。
「今回、ハウンドが仕出かしたことは、集落全体を危機に陥れるものだ。実際、少なくない負傷者も出ている。たとえ形式的なものであっても、このような場を設けなければ、示しがつかないのだよ。うやむやのまま終わらせてしまうには、事が大きすぎる」
「そういうことか」
けじめだと言われてしまえば、それ以上、俺が口を出すことはできない。
何より、当のハウンドが一切抵抗をせずに、おとなしくしているのだから。
「――――ハウンド。何か弁明することはあるか?」
「何も無い」
ボルゾイの前に座らされたハウンドは、ふてぶてしく胡坐をかいたまま、首を横に振った。
「覚悟はできている。集落の掟に従って、追放でも何でも好きにしてくれ」
「そうか……」
先程までのお祝いムードは一転、周囲は静まり返っている。
複雑そうな表情を浮かべている者もいれば、心配そうにしている者もいる。
だが、敵意の籠もった目で、ハウンドを睨み付けている者は一人もいなかった。
(なんだか、デキレースの匂いがするな……)
そう思ってライカをじっと見つめると、目と目が合った瞬間、ライカは「大丈夫ですよ」と言わんばかりの表情で、こくりと頷いた。
(あ、これ、確定だわ。許されるわ、こいつ)
多分、何もせずに無罪放免では示しがつかないので、こうして衆人環視の場で人情味のある裁判をすることによって、うまく収めようとしているのだろう。
そして、そんな俺の確信を裏付けるように、ボルゾイが口を開いた。
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