実質無罪からの実質死刑
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「お前は魔王軍と内通し、集落までの手引きをおこなった。これは集落全体を危険に晒す行為であり、明確な裏切りだ。本来であれば、追放は免れないだろう」
「……」
「だが、お前がそのような行為に走った背景には、里長である私の優柔不断さ、不甲斐なさがあったことも否定はできない。また、お前がライカを助け出すために尽力してくれたことや、覇王丸の助けになってくれたことも聞き及んでいる。……それで間違いないかね?」
「ああ。間違いないぞ」
急に話を振られたので、ひとまず頷いておくことにした。
「何より、お前の取った行動は、形はどうあれ、すべて集落の未来を慮ってのものだ。であるならば、お前にはこれからも集落ために尽力するという形で、罪滅ぼしをしてほしいと考えている。――――私はこのように思うのだが。皆はそれでもいいだろうか?」
ボルゾイの問いかけに、異論を口にする者はいなかった。
「覇王丸もそれでいいだろうか?」
ボルゾイはぐるりと周囲を見回して、最後に俺に同意を求めてきた。
「駄目だ」
「え?」
ボルゾイが間の抜けた声を出した。
完全に想定外の返答だったのだろう。
「怪我人だって出ているんだから、いくらなんでも無罪はないだろ」
「そ、そうか。さすがに無罪はないか。……では、どれくらいの罰を?」
「裏切り者は死刑だ」
「えぇぇぇ!?」
今度はハウンドが情けない顔をして、俺に縋りついてきた。
「そ、そりゃねぇよ! そういう話の流れじゃなかったじゃねぇか!」
「馬鹿め。見え透いた三文芝居が、俺に通用すると思うなよ。この件の最大功労者である俺が首を縦に振らない限り、お前の有罪は確定なんだ!」
「何でだよ!? 俺、めちゃくちゃ頑張ったじゃねぇか!」
「それとこれとは話が別だ。――――いいか? 一つ、教えてやる」
俺は悲壮な顔をするハウンドの耳元で囁いた。
「裏切り者は、どうせまた裏切るんだ」
「う、裏切らねぇよ!」
「本当にそうか? お前は俺たちを裏切った後、すぐに魔王軍を裏切ったじゃないか」
「だ、だってそれは……」
「命が惜しかったからだろ? 保身のためにすぐに味方を裏切るような奴が、どうしてまた裏切らないと言い切れるんだ?」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
ハウンドは頭を抱えて、怯えるようにその場で体を丸めてしまった。
「覇王丸……」
「覇王丸さん……」
「お前さぁ……」
ボルゾイと、ライカと、おっさんまでもが、呆れたような顔で俺を睨み付けてくる。
揺らぐことのない全幅の信頼が、早くも揺らぎはじめているようだ。
「待て。話には続きがある」
俺としても、ハウンドを発狂させるために、追い詰めたわけではない。
どん底に突き落としてから救済するのは、より効果的な交渉をするためのテクニックだ。
俺は打ちのめされているハウンドに歩み寄ると、優しく肩に手を置いた。
「だけどな。そんなお前にも、罪を償う方法が一つだけあるんだ」
「な、何だそれは!? 何でもする! 何でもするから教えてくれ!」
「俺の旅に同行しろ」
「――――は?」
ハウンドの目が点になった。
予想外だったらしい。
一方、ボルゾイは腑に落ちたと言わんばかりの、少しばかり不満げな表情をしている。
「お前も知っているとおり、俺の目的は、魔王をぶっ殺して世界を平和にすることだ。そのためには、重い荷物を持ったり、俺の身代わりになって攻撃を受けたり、捕まったり、殺されたりする相棒が必要なんだ」
「それは相棒じゃねぇ……肉盾だ」
「言い方なんか、どうでもいい。さあ、選べ。世界を平和にする旅に同行して罪を償うか、毒キノコを食って命を落とすか」
「死刑の方法それかよ! もうたくさんだよ!」
ハウンドはがっくりと肩を落として、力なく頷いた。
「分かったよ……。お前の肉盾にでも何でもなるよ……。旅に付いて行けばいいんだろ」
「それでいい。――――というわけだ。こいつは連れて行くぞ」
俺が確認を取ると、ボルゾイは渋面を隠そうともせずに頷いた。
「やれやれ。ハウンドの力が必要なら、素直にそう言えばいいものを。まあ、全面的に協力すると言った以上、口出しするつもりはないよ。連れて行くといい。ハウンドにとっても見識を広める良い経験になるだろう」
そう言って、ボルゾイは話を締めくくった。
ハウンドの量刑「魔王討伐に強制参加(実質死刑)」が決まった瞬間である。
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