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予期せぬ再会

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です

 ゴツン、と。


 全員が固唾を飲んで事態を見守る店内に、体の芯まで響くような鈍い音が響く。


 俺の頭突きを完全な不意打ちで食らってしまった男は、白目を剥いて昏倒した。


「いいね」


 我ながら、角度も、威力も、額に残る攻撃の余韻も、すべてが申し分のない一撃だった。


 やはり、頭突きは自分よりも背の低い相手にするに限る。


「お前らは、頭を掴みやすくていいな」


 獣の血が濃い獣人の場合、体毛が指に絡まって、頭をしっかり固定してくれるのだ。


「余計なことをしたら、お前もこうなるからな」


 俺は、扉を支えるもう一人の男を睨んで威嚇すると、ボスの獣人に向き直った。


「おい。お前ら、どうするつもりだ?」


「どう、とは?」


「落とし前に決まってるだろーが。今更、土下座したくらいじゃ許さねーぞ」


 唸るように怒鳴り、一歩、前に進み出る。


 途端に周囲の獣人たちが臨戦態勢に入ったが、ボスの獣人がそれを制した。


「非礼は詫びる。だが、こうするより他に方法が無かった」


「ああん?」


「我々には、お前と敵対する意思はない。だが、お前はそれでは納得しないのだろう」


 だから俺が相手をしよう、と。


 ボスの獣人は、俺と同じように、一歩、前に歩み出た。


「お前を待っている間、この男――――ハウンドから、お前が獣王様に勝利したという話を聞いた。だが、にわかには信じられん。お前と拳を交えたことのある俺が、確かめさせてもらう」


「は?」


「忘れたか? 敗軍の将など、もはや記憶の片隅にも残っていないか」


 口元に薄笑いを浮かべながら、ボスの獣人は目深にかぶったフードを取り去った。


 見覚えのある、薄黒い狼の毛並みが露になる。


 ――――すべてが繋がった。


「お前……」


「久しいな、覇王丸。お前に砕かれた顎の痛み、俺はまだ忘れていないぞ」


 まるで戦友と再会したように目を輝かせながら、サルーキはゆっくりと顎を擦った。


 サルーキ。


 この世界に転移した俺が、初めて戦った魔王軍の強敵だ。


 魔王軍に与する獣人部隊の指揮官であり、港湾都市オターネストを占領した後、大森林にも侵略の手を伸ばし、ライカの父であるボルゾイに重傷を負わせ、ライカを連れ去ったことで、俺の逆鱗に触れた。


 もし、この男がオターネストの防衛に徹して、魔王軍の増援が到着するのを待っていたら、世界情勢は、今とはまったく違うものになっていたかもしれない。


「そうか……。そういえば、お前は強制送還されたんだったな」


 オターネストで尋問した捕虜の獣人が、そんなことを言っていた。


「ハウンド。お前、こいつに見つかっちまったのか。そいつは油断したな」


「う……」


 面目ねぇ、と。


 俺に揶揄されたハウンドは、一切の反論をせず、バツの悪い顔をしてうな垂れた。


 まあ、実際に油断していたのだろう。


 だが、それは仕方ない。


 知り合いなどいるはずのない異国の地で、殆ど唯一の「自分の顔と名前を知っている敵」とエンカウントしてしまったのだから。運が悪かったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお!懐かしい名前が! 最初の強敵が再登場するとワクワクしますねー 続きが楽しみです!
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