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尋問開始

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です

「う……」


「おはよう」


「っ!?」


 獣人の男は俺の声を聞いた瞬間、びくっと体をすくませて、震えはじめた。


「どうした? 抵抗しないのか?」


「た、頼む……。もう、許してくれ」


「別に怪我をしたわけじゃないだろ? 首を絞められて、気を失っただけじゃないか」


「頼む……。もう、許して……」


 三度の気絶を経て、獣人の男は完全に心が折れてしまったらしい。俺が何を言っても、同じ返答を繰り返すだけだった。


(思ったよりも早かったな)


 どうやら、首を絞められて、強制的な気絶を何度も繰り返される体験は、俺が考える以上に恐ろしかったようだ。


「止めてほしければ、俺の質問に正直に答えろ」


 そうすれば許してやるよ、と。


 俺が逃げ道を用意してやると、獣人の男はコクコクと何度も首を縦に振った。


「まず、人質は本当に無事なんだろうな?」


「本当に無事だ。逃げようとした際に取り押さえたから、擦り傷くらいは作っているかもしれないが、それ以外は本当に手荒なことはしていない」


「どこにいる? 牢屋みたいな場所に閉じ込めているのか?」


「仲間たちと一緒にいるはずだ。両手は拘束されているかもしれないが」


 助かりたい一心なのか、獣人の男はペラペラと淀みなく、質問に答えた。


 仮面の魔人――――フィオレに質問した時のような、頭の良い相手に翻弄されている感じはまったく無いので、多分、本当のことを話しているのだろう。


「お前の仲間は、全部で何人いる?」


「何人と言われても……沢山だ。正確な数は分からない。これから行くはずだった場所には、多分、十人くらいいる」


「十人か……。思ったより少ないな。お前らって、何かの組織なのか?」


「組織……というよりは、同志だ」


「同志?」


 つまり、同じ志を持った仲間ということだろうか?


 だとしたら、こいつらに対する認識を改める必要があるのかもしれない。


 単なる金目当てのチンピラは、仲間のことを「同志」とは呼ばないからだ。


 しかし――――


 金目当てではないとすると、今度は俺たちに声を掛けてきた理由がよく分からなくなる。


 なにしろ、俺たちは半日前に獣人国の王都に到着したばかりなのだ。


 分不相応な大金を持ち歩いていた田舎者を標的にした犯行……ではないとすると、いったい何の目的で俺たちに接近してきたのだろうか?


「お前らの目的は何なんだ?」


「……」


 質問が核心に及んだ途端、それまで饒舌に喋っていた獣人の男は、急に口を閉ざした。


「答えろ」


 そう言って、首を掴んでいる指にぐっと力を込める。


 だが、それでも獣人の男は口を割らなかった。苦痛に顔を歪めながら、懇願するように首を左右に振る。


「ぐっ……頼む……。話を……」


「話を聞いてやるから、話せって言ってんだよ」


「話を……」


「ちっ」


 俺は舌打ちをして、獣人の男から手を放した。


 どうやら、肝心の部分は何があろうと話すつもりはないらしい。


(おとなしく敵のアジトに行って、そこで話を聞けってことか)


 何とも都合の良い話だ。……まあ、だからこそ、人質を取ったのだろうが。


「仕方ない。行ってやるから、案内しろよ」


 俺はゴホゴホと咳き込んでいる獣人の男の腕を掴んで、強引に立ち上がらせた。


「その代わり、少しでも変な真似をしたら、ただじゃおかないからな」


「わ、分かった。こっちだ」


 獣人の怯えた様子で頷くと、まるで銃口を突き付けられた人質のように、両手を上げて俺の前を歩きはじめた。

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