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夜歩き

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です

「分かった。条件を飲む。ついて来るのは、あんただけで構わない」


「いいんだな?」


「構わない。元より、あんたを連れて来るようにとしか言われていない」


「ふーん」


 承諾ついでに、目の前の男がただの使い走りで、今から連れて行かれる先では、男の上役が待ち構えているということまで判明した。


(金目当てのチンピラ……かなぁ)


 頭も口も回らない三下を使いに寄こすあたり、それくらいが妥当な線だと思われる。


 ただ、それにしては安直に暴力に訴えてこないところや、即物的でギラギラした感情を前面に出してこないところに違和感がある。


(……ま、ついて行けば分かるか)


 どの道、捕まっているハウンドを連れ戻さなければいけないのだ。


 俺は、オルツとライカの二人に、一足先に宿に戻っているように指示を出した。


「ただし、こいつの仲間が潜んでいるかもしれないから、尾行には気を付けろよ。なんなら、荷物はそのままにして、警備の固い高級な宿に変えてもいいから」


「了解した。そちらも、怪我などをしないようにな」


「気を付けてください」


 二人から順番に激励の言葉を頂戴する。


「これを持っていくといい」


 そう言って、オルツはランプと腰に差した短剣を渡そうとしてきたが、


「いや、それはいいよ」


 少し考えた後、俺はそれを断った。


 武器に関しては、目の前に獣人の男がいるのだから、言わずもがなだ。見ている前で武器の受け渡しをして、こっちがやる気満々であることをアピールする必要は無い。


 ランプに関しても、夜目に慣れておいた方が良いと判断して、あえて持って行かないことにした。


「俺のことは大丈夫だから。それより、くれぐれもライカのことを頼むぞ」


「うむ。任されよう」


「あと、ライカに手を出すんじゃないぞ」


「……私は妻子持ちだと言っているだろうに」


 オルツは露骨に顔をしかめると、さっさと行けと言わんばかりに俺の背中を力強く叩いて、送り出した。


 かなり痛かった。


     *


 大通りでライカとオルツの二人と別れた後、俺は前を歩く獣人の男を追いかけて、どんどん街外れに向かって歩いていた。


「なあ。どこまで行くんだ?」


「黙ってついて来い」


「疲れたし、腹も減ったんだけど」


「だから、なんなんだ。少しは我慢しろ」


 先程のやり取りで、俺が「演技が下手くそ」だと馬鹿にしたせいだろうか?


 獣人の男の態度は、明らかに素っ気ないものに変わっていた。


『かなり警戒されていますね』


(まあ、仕方ない)


 無視されないだけマシと考えるべきだろう。


(あ、そうだ。帰り道を覚えといてくれよ?)


『分かりました。……ってか、僕、今日、家に帰れるんてすかね?』


(この後の展開次第だな)


 その後も、俺がどうでもいいことを話し掛けては、獣人の男が素っ気ない返答をするという面白みの無いやり取りが、何度か繰り返された。

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