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オース海峡攻略作戦 五

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 小型船も大型船も、船を進めるときの仕組みは基本的に同じだ。風向きや潮流と折り合いをつけつつ、必要に応じて風と水の魔法を使うことになる。


「結構、速く進むんだな」


「加速と小回りでは小型船の方が優れていますね。魔法を使える水兵が数人ほど乗り込めば、大型船では追いつけない速度で移動できます」


 俺の独り言に、シャルムがすかさず解説を入れた。


 どうやら、加速力、旋回力、燃費の点で、小型船は大型船よりも優れているらしい。要するに、軽自動車と大型トラックの違いのようなものだ。


「あの……。本当に大丈夫でしょうか?」


 今度はライカが、隣で不安そうに呟く。


「何がだ?」


「いきなり攻撃されたりしないかなって……」


「それはもう祈るしかないな」


 攻撃してくるかどうかは、完全に魔王軍しだいだ。


 なにしろ、現在進行形で戦争中の相手の船が、無条件で捕虜を解放しますと近づいてくるのだから。


 怪しいか怪しくないかで言えば、めちゃくちゃ怪しい。


「罠に違いないって思われたら、攻撃されるかもな」


「こ、攻撃されたらどうすれば……」


「その時は逃げるしかないけど」


 一応、攻撃されないための小細工は弄してある。


「船の一番上のところ、見えるか?」


「え? 旗のところですか?」


「そう」


 俺が頷いて、もっとよく見てみろと促すと、ライカはすぐに異変に気が付いた。


「旗が違います! 見たことのない旗が……」


「魔王軍の旗と、獣人国の旗だよ」


 船に掲げる旗には様々な意味合いがあるが、一般的にはその船の所属を意味していることが多い。国旗や軍旗は、正にその典型だと言える。


「魔王軍と獣人国の同盟関係が解消されていたら、何の意味も無いけど。まだ続いていたら、あれは攻撃しにくいだろ?」


 なにしろ、味方の旗を掲げた船に、味方である獣人が乗っているのだ。罠かもしれないとは思っていても、軽はずみな行動は取れない。


 もし、誤った判断で味方の船を攻撃して、それが原因で国と国との関係にヒビが入るようなことになれば、一介の指揮官レベルでは到底責任を取り切れないのだから。


「最初は白旗を掲げて近づこうと思ったんだけどさ。こっちの方がいいかなって」


 山田が「白旗の意味が地球とは違うかもしれない」と言い出したので、急きょシャルムに依頼して魔王軍の旗を調達してもらったのだ。


 結局、その後の調査で、こっちの世界でも白旗には「降伏する」や「敵ではない」の意味があることが判明したのだが――――結果的には、魔王軍を困惑させることができるという点において、白旗を掲げるよりも効果的だと思っている。


「あんな物、よく見つかったな」


 ハウンドが意外そうに呟いたが、別に意外でも何でもない。


「オターネストを探してもらったら、普通にあったぞ」


「オターネストに?」


「都市を占領したら、自分のところの旗を掲げるだろ? だから、絶対にあると思っていた」


「ふーん……。お前ってそういうところ、頭が回るよな。敵に回したくないわー」


 ああ、嫌だ嫌だ、と。


 かつて、俺を敵に回したせいで毒キノコを食わされたことのあるハウンドは、芝居がかった仕草で、大げさに肩をすくめて見せた。

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