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オース海峡攻略会議

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

 その夜、久しぶりに山田の仕事部屋に召喚された俺は、卓上に広げられた世界地図をじっと眺めていた。


 昼間、国王から見せてもらった世界地図が、歴史の教科書に載っているようなアバウトな代物だったので、山田に頼んで正確な地図を用意してもらったのだ。


「どうですか? そのサイズの地図はこの部屋のプリンターでは出力できないので、わざわざ事務局にお願いして、用意してもらったんですよ」


「見やすい」


「ですよね。その地図をホワイトボードかデスクの正面の壁に貼り付けたら、いかにも仕事ができるって感じがしませんか?」


「すると思う」


 我ながら良い仕事をしたと自画自賛している山田に生返事を返しながら、俺は地図に記載された街と街の位置関係を頭に入れていた。


 剣の岬は、オターネストの西にある大森林の、更に西に位置している。


 東西に伸びた街道が大森林のところで途切れているので、通り抜けはできないようだ。そのため、オターネストから剣の岬に向かうには大森林を迂回しなければならず、かなり交通の便が悪くなっている。


「ん? 大森林の中に街があるぞ?」


「最新版ですからね」


 街の名前は「ウォートシエイラ」になっている。


「シエイラって何だっけ? ライカの母ちゃんの名前だっけ?」


「ライカちゃんのお母さんの名前は、たしかシェイラですね」


「それじゃあ、やっぱり母親の名前を街の名前にしたんだな」


 シェイラではなくシエイラになっているのは、ウォートランド侯爵の身内に気づかれないようにするための偽装だろうか? はっきり言って、まったく誤魔化せていないと思うが。


(街の名前がハオウマルーンやハオウマルンゴにならなくて本当に良かった……)


 俺の感想としては、それに尽きる。


「この地図って、距離は正確なのか?」


「距離が正しく表示されているのは、赤道の周辺だけですね。その地図はあれですよ。南極やグリーンランドが大きくなっちゃうタイプの地図と同じです」


 要するに、メルカトル図法で描かれているらしい。


「距離が正しく表示される地図は、多分、見ても意味が分からないと思いますよ」


「ふーん」


 まあ、アルバレンティア王国は(偶然かどうかは知らないが)地図の中心付近に描かれているので、俺が知りたいと思っている箇所については、距離も正確だと考えてよいだろう。


 俺は自分の指を物差しの代わりに使って、ピスキスから王都までの距離と、王都からノトスヴァイナまでの距離と、剣の岬からトレンタ大陸までの距離を、ざっくりと測定した。


 その結果、二つの大陸の間に横たわるオース海峡の幅は、最も狭くなっている所でも、王都からノトスヴァイナまでの距離の約二倍――――厳密には二倍弱であることが分かった。


 ピスキスから王都までの距離は、王都からノトスヴァイナまでの距離とほぼ同じであり、これはワタシが休憩を挟まずに飛行したことのある最長記録でもある。


 勿論、これがワタシやオレサマの限界だとは思わないが……。


(でも、いきなり二倍の距離は無理だろうな)


 これはつまり、たとえ剣の岬の先端から飛び立ったとしても、竜の背に乗ってオース海峡を越えるのは難しいということだ。一か八かで己の限界に挑戦するには、リスクが高すぎる。


「見たところ、途中に休憩できそうな島も無いな」


「そんな島があったら、どっちかの軍が占拠していますよ」


「そりゃそうか」


 むしろ前哨基地を置けそうな島が一つも無いからこそ、どちらも制海権を握れずに、海峡を挟んで睨み合いをしているのだろう。


「距離の問題をクリアしないと、こっそり上陸はできませんね」


「プランBを試してみるか」


「B? 何ですか、それは?」


「まず、ワタシの上にオレサマが乗って、ワタシが限界まで飛ぶ」


「……重すぎて飛べないと思いますよ」


 それに、もし、仮に飛べたとしても、その方法ではエネルギーを使い果たしてパージされたワタシが、確実に海の藻屑になってしまう。


「それじゃあ、プランCを試してみるか」


「DやEもありそうですね」


 適当に考えているでしょ? と。


 呆れたように呟く山田を無視して、俺は再び地図に目を戻した。

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