王女奪還作戦 再会と拒絶
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
「ロザリア様、よろしいですか」
ゲンジロウ爺さんは和服の襟元を正すと、客室の扉をゆっくりとノックした。
「王都より迎えの者が来ました。――――覇王丸です。あの破天荒な大男が、陛下の書簡と、いつものように出鱈目な策を携えて、たった二人で乗り込んで参りました。既にシャードを退け、屋敷を制圧したようです」
「絶対に馬鹿にしてるだろ?」
「そんなことはない」
俺からのクレームを適当にあしらいつつ、ゲンジロウ爺さんがゆっくり言い聞かせるように報告すると、ややあって客室の扉が開き、隙間からロザリアが顔を覗かせた。
(……少しやつれたな)
俺の記憶の中のロザリアと比べると、別人のようだ。まるで生気が感じられない。
「覇王丸……様?」
「よう。久しぶりだな」
俺が王城内でたまたま見かけたくらいのノリで声を掛けると、ロザリアはくしゃりと表情を歪ませた。無理に笑おうとして、失敗してしまったようだ。
堰を切ったように、涙がその頬に零れ落ちた。
「……貴方は、私の所に来る時は……いつも、傷だらけなのですね」
「見た目ほど酷い状態じゃないんだけどな」
「あれほど、無茶はしないでほしいと……。私が、お願いしたのに」
「努力はしたぞ」
でも、俺はまだ実力不足だ。足りない分は、血で払わなければならない。
そして、血を払うなら、この中で一番タフな俺が払うべきなのだ。
「心配させたことについては謝る。でも、それをいうなら、怪我をして稽古を付けてくれない爺さんや、もっと簡単に助けられる場所に捕まっていないお前も悪いんだぞ」
「ひでーな」
「無茶苦茶だの」
ハウンドとゲンジロウ爺さんが横から口を挟んでくるが、俺はガン無視して言葉を続ける。
「それに、前にも言っただろ? 俺の中では、お前は優先順位が高いんだ。お前が困っているなら、体を張って助けるくらいのことは、いくらでもする。これは俺が勝手にやっていることだから、お前が気にする必要は無い。運が良かったくらいに思ってくれればいいんだ」
「そういうわけには……」
「いいから。王都に帰ろうぜ? 王様も、金髪も、ジョアンも、皆が待ってるから」
そう言って、俺は手を差し出したのだが――――
「……ごめんなさい」
ロザリアは一瞬だけ伸ばしかけた手を、数秒の逡巡の後、引っ込めてしまった。
「覇王丸様。そう言っていただけるのは嬉しいのですが……。私にはそんな資格は」
「うるさい」
「え?」
俺は差し出した手をそのまま振り上げて、ロザリアの脳天にチョップを振り下ろした。
「いたっ」
勿論、本気ではない。
チョップは本気ではないが――――俺は本気でイラついていた。
罪の意識から内罰的になっているのは分かるが、周囲の「助けたい」という気持ちにまで、目を背けてどうするのだろうか。
「資格が無い? そんなの当然だろ。そもそも、お前はもう王族じゃないんだから」
「え?」
どういうことですか? と。
ロザリアが説明を求めてきたので、俺は仏頂面のままゲンジロウ爺さんに手を伸ばした。
「爺さん、さっきの手紙」
「ほれ」
ゲンジロウ爺さんから国王の手紙を引ったくると、それをロザリアに突き付ける。
「……これは?」
「いいから読め。読まないなら、もう一発、頭を引っ叩くぞ」
「は、はい」
俺に威嚇まじりで急きたてられ、ロザリアはあたふたと手紙を読みはじめた。
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