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リベリオン  作者: チョニー
青蓮の胎動、黄砂を越えて
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2/2

赤岩の井戸と、蠢く黒影

砂漠の旅というのは、後世の戯曲や詩術師が語るほどロマンチックなものではない。

「あー……あつ。マジで暑い。なあ瓢箪、お前の中で冷やし中華とか冷やし飴とか召喚できない? できないよね知ってる。ただの木だもんね」

 カンカンと照りつける太陽の下、李白は自分の影を踏みつけるようにダラダラと歩いていた。

『黄砂の遺構』を旅立ってから三日。

 長安城への道のりは、想像以上に「ただの砂と岩」の繰り返しだった。

「はぁ……長安行く前に干し肉ならぬ『干し李白』になっちゃうよ。誰が得するのそれ? 誰も得しないよね。あ、でも美少年だから乾燥させて標本にしたら長安の貴婦人に売れるかな……いや売れねぇな」

 独り言をブツブツと呟きながら、李白は着物の襟ぐりをパタパタと煽る。

 普段の彼は、とにかく一言多くてひょうきんなお調子者だ。街にいた頃も、大人の小難しい説教を冗談で煙に巻き、同年代の仲間とバカなことをしては笑っていた。

 だが——そんなへらへらとした態度とは裏腹に、彼の視線は絶え間なく周囲の環境を多角的に観察していた。

(風の向きが変わったな。……それに、嫌な匂いが混じってる)

 李白は歩みを止めず、そっと鼻を鳴らした。

 乾いた砂の匂いに混じる、焦げついた獣の脂のような匂い。そして、肌にチクチクと刺さるような、澱んだ不快な気配。

(普通の霊気(れいき)じゃない。……なんだこれ、胃がムカムカするような雑味が混じってる)

 李白は生まれつき、空気中の霊気の「流れ」や「質」を感じ取る感覚が異常に優れていた。

 彼が天才と呼ばれる所以も、単に腕力が強いからではなく、世界の理である霊気を目で見えるかのように精緻に知覚し、自在にコントロールできるからだ。

 砂丘を一つ越えると、視界の先に小さな緑が見えた。

 荒野のオアシス集落『赤岩の井戸(せきがんのいど)』だ。長安へ向かう行商人が羽を休める小さな交易拠点のはずだった。

 しかし、その集落から、禍々しい黒煙が立ち上っている。

「……うわぁ、フラグ回収早すぎない? 旅に出て最初の街でトラブルとか、俺そういう王道展開大好物だけどさぁ」

 口では冗談めかして軽口を叩きながらも、李白の目からお調子者の色がスッと消えた。

 足裏の霊脈にすっと霊気を送り込む。

 一瞬前までダラダラと歩いていた足取りが、まるで摩擦を失ったかのように滑らかになり、一跳びで十数メートルを滑空するような超高速の跳躍へと変わる。

 ——シュッ!

 風を切る音だけを残し、李白は砂丘を滑り降りて集落へと急行した。

◆

 集落の中は惨状を極めていた。

 土壁の家々はなぎ倒され、行商人の荷車が破砕して干し肉や布地が散らばっている。

 逃げ惑う人々を追い詰めているのは、一頭の巨体だった。

「ひえっ……! た、助けてくれぇ!」

「逃げろ! 魔獣だ! 砂漠の大狼(デザートウルフ)だぞ! 何でこんな集落の真ん中に……!?」

 体長三メートルを超える猛獣。本来なら砂漠の奥深くに生息するはずの狼の魔物だ。

 だが、その姿は李白が知っている「砂漠の大狼」とは明らかに異なっていた。

 毛並みはどす黒く変色し、皮膚の隙間からどろりとした黒紫色の液体が滴り落ちている。目は赤く血走り、口からは泡ではなく嫌な臭いのする黒い煙を吐き出していた。

(……おかしい。魔獣の『霊気核』が、どす黒いナニカに侵食されて暴走してる)

 李白は倒れた荷車の陰に身を隠し、呼吸を殺して観察する。

普通の魔獣なら腹が減れば獲物を喰うし、怪我をすれば逃げる。だが、眼前の巨狼はただ破壊と殺戮のためだけに狂乱していた。

「おーい、そこの大きなワンちゃん! 人の家の壁壊しておいてタダで済むと思ってんの? 赤岩の井戸の地権者さんに怒られるよ?」

 李白はひょっこりと荷車の陰から姿を現すと、へらへらと笑いながら手を振ってみせた。

「ゴァアアアアッ!?」

 狂乱する大狼の赤く濁った目が、一瞬で李白へと向く。

 常人ならその威圧感だけで腰を抜かすような咆哮。だが、李白は「うわ、息くっさ! 歯磨きしなよ!」と大袈裟に鼻を押さえて見せただけだった。

「ヒッ……!? 坊主、逃げろ! そいつは普通の魔物じゃない!」

 建物の陰で腰を抜かしていた行商のおじさんが悲鳴を上げる。

「大丈夫だよおじさん! 俺、こう見えても街一番の剣士だから! ……まあ、その街には俺より強い奴がいなかっただけなんだけどね!」

 軽口を叩きながら、李白は右手を背中の柄へと伸ばした。

すり減った木製の柄。指先が触れた瞬間、李白の体内で練り上げられた澄み切った青白い霊気が、一気に鉄剣へと流れ込んでいく。

 ——チィン。

鞘から抜かれた一閃。

その瞬間、荒野の灼熱の空気が、まるで澄み渡った冬の静寂に包まれたかのように一変した。

「さて……ワンちゃん。ちょっとお行儀の勉強と行こうか」

十五歳の少年の全身から、圧倒的な密度の霊気が吹き荒れた。

どうもーチョニーです

読んでくで貰ってありがとうございます

いやーだいぶ扱い上手くなりましたよー

さて2話では早速戦いを入れてみました、気に入ってもらいましたか?

霊気というのも出てしましたね、1話で出したっけ?笑笑

とにかく詳しい説明は長安ついたら誰かしてくれるかもしれませんね笑笑笑

ではまた3話でーーー

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