表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
46/48

46.主人公は英雄に3

住み慣れたローズウェスト国のはずれの山間の村を立つ日、俺は母さんから伝言を頼まれた。


「ブラン、気をつけてね。」


「うん、母さんこそ、無理しないで。

こんな山間の村のはずれに残るなんて、そっちの方が心配だ。

俺のじいさん?が一緒に来てもいいって言ってくれてるのに、本当に残るの?」


「レアリアさんも残るって言ってくれてるし、大丈夫だから心配しないで。

それにね、やっぱり母さんにはそんな資格無いから。

ブランにも、こんなことさせることになるなんて、ごめんなさい。」

後ろに括っていた銀色の髪が、母さんが俯いた拍子に体の前に流れてきた。


「母さん、何謝ってんの?

母さんは悪くないだろ?」


俯いた母さんの頬に手を当てて、上を向いてもらうと、目に一杯の涙をためていた。

相変わらずの泣き虫だ。

それでも一生懸命笑顔を作ろうとしている姿が痛々しかった。


「タクト様に会えたら、逃げてごめんなさいって伝えて。

私に勇気がなかったから、こんなことになったから。

息子にこんなことを頼むなんて、情けない母さんでごめんね。」


俺より小さな母さんの体をギュッと抱きしめた。

「母さんの思いはちゃんと父さんに伝える。

俺も、俺のことも、気になることを、聞いてみる。

それから、、、」


「うん。」

母さんも俺のことを精一杯抱きしめ返してくれた。


「俺は、父さんを、討つよ。

きっと俺は、そのために生まれてきたんだ。」

自分自身の胸の痛みも母さんの痛みもそのまま持って行こうと決意した。


そうして俺は、ユージンとフレンドの案内の元、このサイクラン領をスカイとクラウドと共に訪れたのだ。


サイクラン領に付いたときに出迎えてくれたのは、現王の父、俺のじいさんにあたる元陛下だった。

爺さんは、俺の存在を知り、現王である俺の父親を倒したら、次の王に俺を指名するとのたまった。


とりあえず、討伐後は母さんの待つ村に帰るつもりだから、興味ないと答えておいた。


そんな中ユージンは、俺に城との繋ぎを行っているという重要な人物を紹介してくれた。


「彼はドウシクランだ。

城に残った同志との連絡役という、危険な任務を行ってくれている。」

ユージンがこげ茶の髪のガタイのいい男を紹介してくれた。


ドウシクランは俺の顔を見て、頭を下げた。

「私は、ドウシクランと申します。

城に残った同志と連絡を取り合い、こちらの人間を使用人として城に潜り込ませたりしております。

元陛下から、現王討伐後の次代の王となる旨をお伺いしております!」


「何先走ってたことしてくれてるんだ、あのじいさん。」

俺はギョッとしたが、ドウシクランは頭を上げて熱い瞳で俺を見つめていた。

俺の後ろにいたスカイの笑い声が聞こえたのは無視した。


ドウシクランと同じ反応は、次々に紹介された兵士や地位のある領民からもされ、俺はどんどん後に引けなくなってきた。

それに、皆からどれだけ現王がこの国を蔑ろにしているのかを聞くにつれて、その気になってきてしまったというのもある。


だから、しばらくすると、次の王に俺という言葉に興味がないとも言っていられなくなった。

ユージン、フレンド、それにクラウドと共に訪れた俺の存在を知ったサイクラン領に集まった面々が、現国王の討伐の闘志を急速に加速させ、その闘志は次代の王を俺にと言う声も共に燃え広がらせた。


ーーーーーーーー


「討伐は即位15周年のパーティーで決行します。

それまでに、王都に仲間を徐々に移り住まわせます。」

ユージンの説明で始まったのは討伐計画の会議だった。


その日、ミマリとミズマリもサイクラン領に来て俺たちと合流した。


ミマリが会議中に広げてみせたのは、二人が潜伏中のとある楽団の制服だった。

「これが、前回の即位10周年のパーティーで招かれた楽団の制服です。

多額の賄賂が流れておりましたので、今回も、同じ楽団が指定されることは間違いないと思います。

この制服を今のうちに武器を隠しやすいようなものに変えておき、当日に違和感がないように準備していこうと思います。」


王都やカイコクラン侯爵、スイーツクラン侯爵、ホソウクラン侯爵の領などで諜報活動をしていたミマリとミズマリが自分たちが入手した情報をもとに城内への武器の持ち込みについて画策してくれていた。

そこで二人が目をつけたのは10周年パーティーのときに呼ばれていた楽団だったのだ。


「前回の楽団の配置は入り口付近でしたが、今回は手をまわして舞踏会場の王族が座る檀上の階段下に配置するように根回しています。」

ミズマリが即位10周年パーティーの時の舞踏会場の配置図をテーブルの上に広げた。


ユージンがその配置図を確認しながら場所を指した。

「舞踏会場の一般の入退場用の大きな扉、会場内の使用人が使う扉、外庭につながる扉、内側の通路につながる扉などが20あるな。

会場内の扉は、仲間たちが外から城内へ入る経路とするとともに、貴族たちを逃がさないよう仲間たちが抑えるとして。

壇上にいる国王の元に近づく必要がある。

そして、壇上には王族専用の扉があるから、この扉を防がなくてはならない。」


ドウシクランがそこに付け加えた。

「はい。

潜り込ませた使用人を通して、贈答品を置くスペースを楽団のすぐ横に設けるようにできました。

このように配置すれば、楽団の配置位置と壇上への階段までの間を死角にすることができます。」


フレンドが、ドウシクランに向かって更に聞いた。

「警備兵が楽団の後ろの扉につくのではないか?」


「壇上の王家専用の扉の警護には、ガイとジミールが入れ替わる予定です。

楽団の後ろの扉は当日は使用禁止として、警備兵の必要性を無くします。」


「分かった。

我々は楽団の人間として忍び込むんだな?」

クラウドがドウシクランに訪ねると、ドウシクランは首を振った。


「楽団員と言えど城に入るときには身体検査があります。

ですので、前日の夜の間に使用人用の入り口から忍び込んでいただき、厨房横の倉庫の中に入って朝まで待機してください。」

クラウドが頷いた。


「楽団員は何も知らない一般人です。

全員が控室に入ったところで、眠らせて我々が彼らとすり替わります。」

ミマリが楽団員について説明した。


その後にミズマリが説明を続けた。

「舞踏会場に入った後は、現王が壇上に出てくるのを待ちます。

パーティーのダンス開始時に、我々が音楽を奏でます。

そうすると、ダンスを踊るために貴族たちは壇上から目が離れるでしょう。

その隙をついて、陛下のもとに近づいてください。」


テーブルを囲んでいた皆が俺に力強いまなざしを向けた。

俺は黙って頷いた。


『もう少しでゲームクリアだ。』

どこからか声が聞こえた。

ミマリとミズマリはテーブルに広げた制服や配置図を片付けている。

他の人間もそれぞれテーブルから離れて外に出ようとしている。


「ゲーム?クリア?

何のことだ?」

分かるような分からに様な言葉を口に出して、隣にいるスカイを見ると、窓からの夕日がさして青色の髪が夕暮れ時の空のようなグラデーションになっていた。


その時、ミマリとミズマリが急に持っていたものを落とした。

「どうした?」


二人は珍しく慌てたように落としたものを拾いあげた。

「「いえ、『金髪碧眼の従者が懐かしい』と、空耳が聞こえまして。」」

二人は眉を下げて、声を揃えて行った後に、力なく笑って部屋から出て行った。


部屋には俺とスカイだけになった。


「この国の王は、俺とスカイが生まれた年にローズウエスト国に戦争を仕掛けた。

その目的は、母さんに似た美しい第二王女を手に入れるためで。」

急に俺が話し始めたので、スカイは近くにあった椅子を引き寄せて、前にした背もたれに両腕をかけて座った。


「それで?」


「3年かけてその目的を果たした。

婚約者がいたのに第二王女は、婚約解消させられて敗戦したその日にこの国に連れてこられた。」


「うん、そう聞いてるな。」


「この国の今の王って、大馬鹿野郎だよな?」


「そうだな。」


「母さんやミマリやミズマリは、そんなやつのことをまだ慕っているみたいだ。」


「そうだな。

俺の目にもそう見えるけど、仕方ないんじゃないか?

お前もおばさんに似て、泣き虫だよな?」


気がつくと俺の目から涙が落ちていた。

スカイを見ると、笑ってはいるが眉が下がっている。


「ブラン、俺と久しぶりに手合わせしようぜ。」

スカイは、部屋の隅に置いてあった木刀を2本持ってくるとそのまま外に出た。

夕暮れだが、まだ日は沈みきっていなかった。


スカイを追って外に出ると、1本を俺に放り投げてきた。

俺が木刀を掴むと同時にスカイが打ってきたのですかさず、頭の上で振り下ろされた木刀を木刀で受けた。


「ブラン!何考えごとしてるんだ!

余裕かましてんのか?」

スカイが木刀を横から叩き、そのまま下に抑え込んできた。


その勢いを利用して俺も木刀を下げて勢いをつけて前方に押し返した。

押し返したはずみで二人とも後方に飛び距離を取った。


それから、その日はクラウドたちが呼びに来るまで俺とスカイはひたすら打ち合った。


ーーーーーーーー


討伐の前日の夜、城内への潜入は打合せ通り実にスムーズだった。


俺とスカイ、ユージン、フレンド、クラウド、ミマリ、ミズマリは、使用人専用の出入り口から城に潜入すると人気のない厨房の隣の倉庫に向かった。

倉庫の横にはグレーの薔薇のアーチとグミの木が実をつけていた。

ミマリとミズマリがそれを見て声を震わせていた。


「まだ、あったのですね。」

「そのようだ、バラも奇麗に手入れされている。」


その懐かしむ様子を見て俺は二人に聞いてみた。

「ミマリ、ミズマリ、どうする?

お前らは来るのやめとくか?」


二人とも首を振ってその金の髪を揺らした。


「いえ、これを見て決意が固くなりました。

陛下は、ここでブラン様の手によって倒されるのが、、、」

「倒されるのが幸せかと思います。

このまま、民衆を苦しめて最終的に民衆の前に死をさらされるよりも。」

ミマリが途中で声を詰まらせたが、ミズマリがそれに言葉を繋げた。


倉庫の扉の前には二人の甲冑の兵士がいたが、ユージンを見るとバイザーをあげて顔を見せて強く頷いた。


「私が壊しておいた使用人用の出入り口のカギは、明日の朝までには直して潜入がばれないようにしておきます。」

二人ともバイザーの隙間からこげ茶の髪が覗いている。


そして、その後ろにいるクラウドの顔を見たとき、二人の兵士は一瞬表情を崩し瞳を潤ませた。

「よくぞ、ご無事で。」

絞り出すような声とともに、倉庫の錠前を外して、俺たち7人を中に入れてくれた。


次の日、予定通り楽団の控室に行った俺たちは楽団員を眠らせて無事入れ替わることができた。

舞踏会場に楽器を設置してその時を待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ