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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
45/48

45.主人公は英雄に2

クラウドを訪ねてユージンとフレンドが村に来てから3年が経った。

あの日、ユージンとフレンドがクラウドの家を訪ねてきた日、母さんにも二人の客が訪ねてきた。


母さんの待つ俺の家まで、俺の手を引っ張って走るスカイは「絶対大丈夫だ!俺がついている!」と、まったく根拠のない自信を叫んでいた。


家の前までたどり着くとすぐには入らずに、2kmほどの全力疾走で乱れ切らした息を整えた。

「はっ、はははっ、スカイ、何が絶対大丈夫なんだ?」

スカイの無駄に強い自信がおかしくて、腰を曲げて膝上を手で押さえた姿勢のまま息を整えながら聞いてみた。


「ハッ、何がって。

何もかもだよ。」

スカイは片手を背の後の地面につけて、膝を立てて座った姿勢で、青い髪をかき上げて二ッと笑った。

二人で玄関先で笑っていると、今走ってきた道とは反対の道から近づいてくる二人の人影に気がついた。

二人の旅人は、クラウドの家に来た客人のように兵士のような武骨さはなく、殺気も感じられなかった。


「・・・今日は遠方からの客が多い日だな。」

スカイがズボンの尻をはたいて砂を落としながら俺の前に立とうとするのを遮って二人の旅人が近づいてくるのを待った。


近づいてくる二人の顔がまったく同じであることに気づいたが、二人にも俺の顔がはっきりと見えたらしく、見るなり声を揃えて言った。


「「ブランシュ、、、様?」」


母さんの名前を言った二人に俺は思わず身構えた。

「何?あんたたち、母さんに何か用?」


二人が被っていたフードをとると、金髪碧眼は同じだが、髪の長さが違うということが分かった。

「母さん、と言うことは、ブランシュ様のお子さま。」

「しかも、タクト様の面影が。」


俺とスカイは顔を見合わせて、金髪碧眼で同じ顔をした男たちが口にした名前を繰り返した。

「「ブランシュ様?タクト様」」


「しかも、もうお一人はクラウドにそっくりですね。」

「もしかして、レアリアとクラウドのお子さんでは?」


顔を見合わせていた俺たちは、グルッと首を勢いよく回して、同じ顔をした男たちの顔を見た。


「私はミマリと申します。」

髪の短い男が名のった。

「私はミズマリと申します。」

髪の長い男が名もった。


そこで玄関の扉が開いた。

扉を開けたのは母さんだった。


母さんは驚いて両手で口元を抑えると、声を震わせながら二人の旅人の名を呼んで足元をふらつかせた。

「母さん!」

急いで支えると、その反対側をスカイが支えてくれた。


「ブラン、とりあえずおばさんを中に連れて行こう。」

小さい家なので、玄関を入るとすぐに台所がある。

ふらつく母さんを両側から支えてテーブルの椅子に座らせると、足元に座った。


「母さんは、あの二人のことを知ってるの?」

目に涙を貯めながら母さんは頷いた。

椅子に座る母さんを挟んで両脇に座った俺とスカイは顔を見合わせた。


「おばさん、どうする、あの二人中に入ってもらう?

それとも俺たちが追い払おうか?」


母さんが首を振って、二人に入ってもらうように小さい声で言うので、二人を家の中に入れて同じテーブルの向かいに座ってもらった。

マントフードを取った二人は麻のシャツに丈が腰くらいまでしかない短いジャケットをはおり、下は黒いズボンとブーツをはいていた。


最初に話し始めたのは、髪の短いミマリと名のった男だった。

「お久しぶりです。

ブランシュ様。」


優し気に微笑むが、母さんはその笑顔を瞳に写したまま涙をこぼした。


「どうして泣くの?

母さんを悲しませるなら、俺が追い払ってやるから大丈夫。

泣かなくてもいいよ。」

母さんの膝に手を置いて下から顔を覗き込むと、母さんはしきりに首を振った。


「ごめんなさい。

全部私が悪いの、私が逃げたから、ごめんなさい。

タクト様、ごめんなさい。」

両手で目を覆って肩を震わせて謝り続ける母さんに前に座った二人も困った顔をしている。


「タクト様って、隣国の王?」

すると母さんは頷いた。

袖で目をこすり涙を拭きながらスカイの方を見た。


「レアリアさんがお城を追放されたのも私のせいなの。」

スカイは、呆れた顔をした。


「おばさん、何言ってるの?

俺の母さんと父さんは、自分の意志で行動する人たちだ。

俺の誇りだ。

おばさんがどうとか、関係ないと思うよ?」

泣いて弱っている人間に向ける言葉ではないような気もするが、母さんが少しでも泣き止めば良しとしよう。


「ほら、母さん。

スカイもそう言ってるし、泣かないで。」

俺は台所の棚の上に置いていたタオルを取って母さんに渡した。


「ブランは、優しいね。

お父さんそっくりよ。」

タオルを受け取って、涙を拭きながら母さんは笑顔で言ってくれたが、俺とスカイは複雑な顔をしていたと思う。

クラウドとユージンの話を立ち聞きした限りでは、隣国の王は絶対優しくないし、どうしようもない馬鹿だと思ったからだ。


『かわいい、癒される。

いや、泣かせたくはないんだ。

でも、これくらいしか癒しが無いから。』

何か馬鹿な戯言が聞こえたような気がしたが、頭の中で霧散したため記憶に残らなかった。


それでも俺は、椅子に座ったままの母さんを抱きしめて聞いてみた。

「俺の父さんのことを聞いてもいい?

母さんが悲しいなら、話さなくていいよ。」


そして俺とスカイは、母さんとミマリ、ミズマリから過去の話を聞いた。


ミマリ、ミズマリの二人は隣国の王に幼少の頃から使えていた元従者であること。

隣国の西の森のグミの木の下で、平民の母さんと王子だった父さんが出会ったこと。

母さん、クラウド、レアリアさんが隣国の王城で働いていたこと。

父さんが母さんにプロポーズするために、この世界には1種類しかないバラの花を床に敷き詰めようとたくさん持って帰ったこと。

でも母さんが、次期国王である父さんの求婚から逃げ出したこと。

その時に協力したレアリアさんは、父さんから王都を追放されたこと。


母さんが逃げる時、髪を金髪に染め、貴族令嬢のようなドレスを着て門番に馬車を呼んでもらい城から出たこと。

平民の母さんがそんな姿で堂々と馬車で城を出たとは誰も想像しないだろうと言うレアリアさんのアイデアが功を奏し、誰も母さんの足取りを追えなかったこと。

数日遅れて城を出たレアリアさんはクラウドと一緒に母さんと再会し、その時には母さんのお腹の中には俺がいたこと。

俺が生まれる数日前に転寝をしていたら『ブランが生まれてくる』という父さんの声が聞こえたから、それがお腹の子の名前だと思ったこと。

何となくだけどそれは本当なんじゃないかと俺は思っている。


それから、父さんは自暴自棄のようになったこと。

ただ、そんな時に、母さんのために持ち帰ったバラが残っていたことを知った父さんが、母さんが働いていた厨房の近くにバラに加えてグミの木まで植えたこと。


ミマリとミズマリは、母さんを探すために城を出たが、手掛かりがなさ過ぎて今日に至ったこと。


「俺は、隣国で領民を苦しめている王の子どもで、、、」

クラウドの家で立ち聞きした話だけ聞くと、どうしようもない馬鹿に思えたが、やっぱりその考えは正しかったと思った。


話を聞き終わる頃、クラウドが訪ねてきた。


「ミマリ様とミズマリ様?」

金髪碧眼の二人を見たクラウドは二人を見て跪いた。


「クラウド、もうあなたも私たちも隣国に仕えるものではないのですから、頭を下げる必要はありません。」

「私たちも、旅の途中で陛下の変わりゆく様を感じておりました。

何度か手紙をしたためましたが、縁を切ると、帰ってくるなという返事をいただきました。」

ミマリとミズマリは悲し気に隣国の王の手紙のことを説明してくれた。


立ち上がったクラウドは、テーブルを囲んでいた俺たちを見て意を決したように口を開いた。


「実は、ユージン様とフレンド様が今日私の家に来られて、今も待っていただいております。

その二人から、ブランに隣国の王の討伐に加わって欲しいと伝えてくれと頼まれました。」


母さんは小さな悲鳴を上げ、ミマリとミズマリは驚いて立ち上がった。

「クラウドのところに、ユージンとフレンドが?

彼らは、サイクラン領で元陛下の護衛をしているたのでは?

それなのに、タクト様を討伐?」


「なんてことを!

平和に過ごしている彼らを巻き込もうなんて!」


クラウドが俺をまっすぐに見てさらに続けた。

「ブランが隣国の王の子だとばれたら、どういう形にしろ、争いに巻き込まれると分かっていた。

だから、ここに来たのだが、結局、ユージン様、フレンド様、それにお二人にも見つかってしまった。」


「母さん、クラウド、レアリアさんがこんな山間の地図にも載らない村に隠れるように住んでいたのは、俺のためだったんだ。

俺が権力争いや戦争に巻き込まれることを恐れて、俺のためにこんなところに隠れ住んでいたのか。」


俺はここが好きだけど、王城生活をしていたクラウドたちはどうだったんだろう。

スカイだって、巻き込まれなければ剣の腕を買われて兵士にだってなれていただろう。

スカイを見ると、その表情は明るいどころか、今からいたずらでも始めようとしているような顔をしていた。


「へー討伐か。

面白そうだな。

お前の父親がやらかしたことだろ?

俺も一緒に行ってやるから、討伐してお前が国を立て直してみたら?」

スカイが俺を見て軽くそんな風に言うものだから、気が抜けて笑えてしまった。

スカイなりの気のきかせ方だ。


「はっ、ハハハハハッ、何軽く言ってんだ。

まるでゲームでもあるまいし。

けど、できるかな?」


「できるさ、俺の父さんの剣技を越えたお前なら。

俺もいるしな。」

二人の軽さに、クラウドとミマリとミズマリが眉を下げてお互いの顔を合わせている。


母さんは泣きはらした目にまた涙をためていた。

そんな母さんを見てクラウドが言った。

「殿下は、いえ、今は陛下ですね。

変わられてしまったのです。

あなたが心を寄せていたあの青年ではなくなったのです。

気にやむ必要はありません。」


『そうそう、クラウドの言う通りだ。』


「私が、逃げたから。」


『それでよかったんだよ。

せっかくだからグレーのバラは見せたかったけど。』


「そうかもしれませんが、もともとあなた以外の人間には厳しい人でした。

ミマリさんとミズマリさんが陛下のもとを去ってから更に、横暴さが加速してしまったようです。

あなたがいても、遅かれ早かれ、結果は同じだったと思います。」


「ん?」

二人はとても真剣な顔で会話を続けている。

クラウドと母さんの会話に変な言葉が入ったような気がしたのは俺だけだったようだ。

ミマリもミズマリも神妙な表情をしている。

ただ、言葉が霧散してしまい「バラ」以外の単語はすぐに思い出せなくなった。


そのあと、ミマリとミズマリは、自分たちが隣国の王城を出る際に当時王子だった隣国の王から預かったという剣をさしだした。

「タクト様がなぜ私たちにこの剣を預けたのか、理解できなかったのですが。」

「ブランシュ様にお子様がいたときのことを考えてのことだったのだと、今ならわかります。」


「王家の剣?」


「はい。

隣国の王家の者にしか操れない剣で、その瞳の色と同じ石が柄に埋め込まれています。」


スカイが横から覗き込んで剣の柄を見た。

「ほんとだ。

白い柄にグレーの丸い石が埋め込まれている。」


俺の瞳と石を見比べ、俺の瞳を覗き込んで、確かめるようにスカイが言った。

「本当に、同じ色してやがる。

ってことは、隣国の王もお前と同じ色か。」


「はい。

ブラン様のおじいさまも同じ色の瞳をしておられます。」


俺は、それがどういう意味なのか、血の気が引いた。

今までは、何となく話半分で聞いていて実感を持っていなかった。

が、スカイの黒い瞳に映る俺のグレーの瞳の色に、隣国の王と俺は血のつながりがあるのだと実感させられた。


俺は馬鹿な暴君と王家の重圧から逃げ出した母さんの子で、だから俺は行こうと思った。

会ったこともない、どうしようもない馬鹿の責任を取るために。


だからこの3年の間に母さんとレアリアさんを残して俺たちは隣国のサイクラン領に移り住んだ。

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