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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
39/48

39.身代わりのお飾り王妃

<セーブポイント2-15略奪戦争前>のロードを行いゲームを再開した。


ここからは、二人の従者がいないことにへこまなかったと言えば嘘になる。

真摯に付いてくれていた二人と次に再会するのは、最後の日だろう。


それでも気を取り直して、隣国ローズウエストの王に、第二王女を迎えに行くという最後通告とも取れるような書信を送った。

隣国との力関係は五分五分、それなのに、君主でもない一王子にそのような書信をもらったのだ。

狙い通り、ローズウエスト国の王は激怒した。

結果、それが引き金となり、ローズウエスト国の王の名でその怒りと共に、開戦の宣告が返ってきた。


執務室でそれを満面の笑みで受け取った。

「やっと来たな。」


それを護衛当番であったジミールが複雑な面持ちで見ているのはもちろん気づいてのことだ。

適度にジミールの疑心を上げることに成功したと思っておこう。


宣告の返信を受け取った日にベッドに横になり目をあけると、上下左右がスクリーンになっているかのように回り中がよく見えている状態だった。


闘争のダイジェストに入った、外身が勝手に動く、「中の人」状態である。


戦争の開戦はその日のうちに国中に知らされた。


翌日には、戦争のための兵士が隣国の国境に一番近いホソウクラン領に出発した。

8頭立ての馬車に乗ったこの国の王子が、赤茶色の髪を風になびかせながら、馬車の天井窓から体を半分だして手を振っている。

それを3千名以上の騎馬兵士たちが囲み、ホソウクラン領まで整備された道を敢行する。

道中それを見ている人々は笑顔を作り、花道を作り、兵士たちを称えた。


人々の熱気、髪にあたる風、馬車の振動などの体感(?)は優柔不断ルートと同じだ。


スクリーンには人々の心の顔も映し出されており、あざ笑う者、恐れ戦く者、悲しむ者それぞれだが、本気で称える者はひとりもいなかった。

数日の敢行でホソウクラン領地につくと、自分たちの出番を待っていた鍛えられた傭兵たちと合流した。


その頃、サイクラン領地で頭を抱えている陛下にユージンとフレンドなどの近衛騎士が何かを進言してる様子も見られた。


「なるほど、こうやって戦争の間につながりを作っていくわけだ。」

ユージンとフレンドが忙しく、他領地を行き来する姿も、小さくではあるが別スクリーンに映し出されている。


一方、外身のタクト殿下はホソウクラン領地から傭兵隊を先頭にして、隣国の国境に進んでいた。

国境には、隣国の兵も待ち構えて並び立っており、開戦の狼煙が上がった。


約1年前から準備をしていたタクト殿下率いる軍勢とは違い、隣国は自国の兵だけが戦闘に参加していた。

違いは傭兵の数だ。

そして、こちらの傭兵のひっ迫している環境だ。

傭兵は元は、食うに困り、国のあちこちから集まった平民たちである。

そのため、ただ、ただ、稼ぐために必死に戦い方だけを習得していった。

腕っぷしを上げること、相手のスキをつくこと、容赦しないことなどを主に学び、兵士の作法、国間の戦争のルールなどの知識はまったく持っていない。


そんな傭兵たちに、タクト殿下は、今までは傭兵の給料を出せたが、今は自国に余裕がないという理由で、自分たちの糧は自分たちの手で勝ち取ることを推奨した。

そして、推奨するからには、自分たちの手で勝ち取ったものは、国はいっさい干渉しないという条件も付けたのだ。

戦場は、ローズウエスト国となるため、傭兵たちが糧を得る対象は、敵国内となるのは必然である。

自国には何の影響も及ばない。

国の現状をよく知っている傭兵たちは、隣国に捕まっても捕虜になるだけで、食うに困っている自分たちの実情が変わらないことも理解している。

その結果、指示しなくても勝手に動き、相手の食料補給の道を奇襲し奪うという行動を頻繁に起こした。


ローズウェスト国からのスパイなどもいたが、傭兵の勝手な行動を読み取れるわけもなく、闘いの境界はローズウェスト国の城にじりじりと近づいて行った。


そして、3年の歳月を経て、ローズウェスト国に白旗をあげさせたのである。


この3年の歳月のダイジェストの中には隅っこの方に赤ん坊を抱いているブランシュの姿も見えた。

レアリアとクラウドとその赤ん坊の姿、そして、サイクラン領地の様子なども所々で映し出されていた。

ブランシュたちはローズウェスト国でも、城のある場所よりかなり遠方の田舎で、人目を避けて暮らしていたため、まったく被害が及ばなかったようだ。


閉戦するとすぐに、ローズウェスト国の第二王女と公爵家三男の婚約が解消させ、その日のうちにローズウェスト国の城を後にした。

敗戦国であるローズウェスト国には、多少の賠償請求をしたがそれだけに留めた。

ローズウエスト国の王が婚約解消と、その日のうちに第二王女を連れ帰ることに異を唱えなかったのは、そうした要求の少なさもあったからだろう。

賠償請求を最小限にしたのは、この国の末端で暮らしている、ブランシュたちに影響があっても困るというのが本当の理由だったのだが。


スクリーンで見ていたが馬車の中の空気は最悪だった。

馬車の窓に頬杖をついて外を見るタクト殿下、その隣に座る第二王女は終始無言で俯いている。

グレーの瞳は見えないが、銀色の髪が馬車の揺れに合わせて流れるように揺れていた。

ローズウエスト国からメイドの一人もつけずに、略奪した割には何の気使いも見せず、終始無言のままだった。


「一瞬とは言え、見ているこちらもかなり疲れるな。」


帰城すると、事前に呼んでおいた現国王である父親に二人で挨拶に向かう。

療養のおかげで顔色もよくなった陛下は、第二王女に申し訳なさそうな顔を向けている。

第二王女は仕方なさそうに笑みを浮かべた。


ストーリーは次々と進み、婚約式、婚姻式が大聖堂で執り行われた。


神官の後方の壁一面の白いグラデーションのステンドグラスから、白い光が差し込む。

銀の枠にはめ込まれたガラスの装飾の冠、散らされたガラス玉から反射する白い光をうけて輝く白いドレスを纏い、教壇まで伸びているステンドグラスからの光の中にいる第二王女は固い表情をしていた。


比べても仕方がないが、その表情は優柔不断ルートのブランシュとは雲泥の差である。


二人が神官の前に並ぶと神官が手に持っていた本を開き、朗読を始める。

朗読が終わると、第二王女は教壇の上の婚約契約書に手を震わせながらサインを行った。


「視点変更」


変更先は、ブランシュが住む場所である。

もちろん、不具合は解消されているので、今回は落ちずに視点が変更された。


こちらのブランシュもなぜか浮かない顔をしていた。

目の前の庭では、もうすぐ3歳になるブランとスカイが木刀を持って、叩き合いながら遊んでいる。

さすが、城でも名高い兵士だったクラウドが師匠をしているだけのこともあり、二人とも中々の剣技だった。


そこから少し離れた場所でクラウドが誰かと話している。

ドウシクランのようだった。

もしかしたら、ブランシュはタクト殿下とローズウェスト国の自分そっくりな第二王女との婚約を知らされたのかもしれない。


ドウシクランとクラウドとの様子を見ていたが、強制的に視点が戻された。

婚姻が終了したことで、現国王である父親から、正式に王位を継承したのだ。


暴君ルートの確定である。


------


ベッドの上で目をあけると「中の人」状態が終っていた。


元陛下の父親が生きているので、陛下の寝室はそのままにしてあり、自身は陛下になった今も王子の部屋を使用している。

寝室から私室に行き、小さなテーブルに運ばれてきた朝食を見ながら、メイドに訪ねた。

「王妃は変わりないか?」


「はい。

王妃様担当のメイドからの報告によれば、お変わりなく過ごされているようです。」


「わかった。」

テーブルにつきゆっくりと朝食を食べる。

婚姻式の後、第二王女には離宮を準備し、そちらを使用させていた。


戦争で略奪までして婚姻した王妃ではあるが、婚姻式直後から放置されているのは城中の皆が知っていた。

権力を持つことがいっさい無く、ただ、王子が王位を継承するためだけに結婚相手として選ばれた王妃、身代わりのお飾り王妃としてこの国では話題になっている。

そんな中を出歩きたいと思うとも思えない。


「さて、これからネガティブ値のコントロールを慎重に、ってトウリじゃあるまいしできるわけないか。

せいぜいゲームオーバーにならないよう、主人公が動き出せるようにやっていくか。」

朝食を取り終えると、メイドに食器を下げさせて、執務室に向かった。


視点変更で、ミマリとミズマリの行動を追っているが、まだブランシュには辿りついていない。

そして、サイクラン領地に残っているユージンとフレンドは、この国から追われた貴族や元兵士たちを探し回って見つけては領地に匿っている。

王城への仲介をガイとジミールに助けられたドウシクランが行っていた。


戦争で業績を上げた貴族に対して褒賞を与え、反対していた貴族は排斥などを行った。


領地の提供という一番の業績を上げたホソウクラン男爵には、一気に2段階上の侯爵位に授けた。

兵の食糧、衣服などに貢献したスイーツクラン伯爵、カイコクラン伯爵にも侯爵位を授けた。


そうして彼らはさらに甘い汁を吸おうとして、タクト陛下にすり寄り、良し悪し関係なく暴君が言えば白とばかりに、その手助けを買って出る。

それが他の貴族が反感を持とうものなら、反感を持った貴族を粛正した。

空いたポストには、タクト陛下に媚び諂う人間をはめ込んだ結果、平民の税の負担が高くなったが、以前と違って傭兵や工事などの仕事もなく、路頭に迷う国民が増えていった。


この頃になると、ユージン、フレンドはクラウドの居場所をつきとめた。

それとは別に、ミマリとミズマリもブランシュの居所をつきとめていた。

ブランを見てかなり驚いていたが、ブランシュが逃げる前夜に殿下だったタクトと一緒にいたことを知っている二人は、タクト陛下の子であると確信し、ブランに王家の剣を渡した。


自分が王の子であることを知ったブランは、ユージン、フレンド、ミマリ、ミズマリたちと共にサイクラン領に移り住んだ。


それから時が過ぎ、戦争が終わって15年の間に、国内の暴君に対する不満は十分に集まったようだ。


セーブ回数も増え、ストーリーも順調に進めることができている。


「だけど、癒しが視点変更だけっていうのもつらいよな。」

もうすぐ、即位15周年のパーティを行うため、経費精算の書類に、ハンコを押しながらぼやいた。


視点変更で、サイクラン領地の動向も見ているが、サイクラン領地は父親である元陛下の管轄にあるため、タクト陛下は干渉しない領域になっている。

そこにつけこんで(?)、近衛兵士であるユージン、フレンドの努力が実り、排斥された貴族、処罰されたクランたちなどの暴君に不満を持つ者たちが集結している様子だ。

そこでいい仕事をしているのがドウシクランだ。

このルートでのゲームオーバー時には王子殺害に一役買うが、そうでなければ陛下討伐に一役買っている模様だ。


「結構重要な役どころだったんだな。

ドウシクランのおかげで、サイクラン領地の兵士たちと城内のジミールたちとの連携が上手くとれている。」


ブランの様子はことあるごとに見ていたが、成長がかなり早い。

さすが主人公だけあり、剣を持たすと剣技の値がすぐにマックスまで行っているようだ。

剣の師匠であるクラウドも、年齢一桁の子ども相手に冷や汗をかいていた。

勉強は、貧乏とは言っても貴族だったレアリアに教養があり、王家や貴族の作法のことまで教えていた。


10歳前後になると料理もプロ並みとなっていたようなので、その値までマックスになっているのだろう。

掃除、洗濯も同様でかなりブランシュの助けになっている。


そして今、文武両道、作法ともに非の打ちどころのない青年となって18歳を迎えようとしていた。


「もう少しでゲームクリアだ。」


「視点変更」で、ブランシュたちの様子を見ていたが、執務室に訪ねてきたカイコクラン侯爵の声で強制的に戻された。


「陛下、即位15周年のパーティーは10周年のパーティーより豪華にいたしませんと。」

陛下の執務室に出入りを許しているカイコクラン侯爵が、従者とともに衣服のカタログを持って来ていた。


「そうだな、カタログの中で一番高価なものを作ってくれ。」

目の前に広げられたカタログをめくり、デザインより値段を見てこれだと指さして見せた。


「畏まりました。

王妃様のドレスはいかようにいたしましょうか?

10周年の時は、参加されませんでしたが今回は参加されたほうがよろしいのでは?」

カイコクラン侯爵は、男性用のカタログをしまうと女性用のドレスのカタログを開いて見せた。


カイコクラン侯爵が開いたカタログを閉じて、睨みつけた。

「何故そう思う?

どうせ、妃は出席したがらないだろう。

それに、下手に俺の横にいると討伐対象になってしまうだろう、ほっといてやれ。

おまえの口出すことではない。」


「は、はい。

さようでございますね。

申し訳ございません。」

慌ててカイコクラン侯爵は閉じられたカタログを手に取ると、自身の後ろの従者に渡した。


「それより、おまえの領地から税金が高過ぎると陳情書が来てうるさい。

私に直接来ないように、お前がきちんと管理しておけ。

そうでないと、城への出入りを禁止するぞ。

おまえの代わりなどいくらでもいるからな。」


「弁えております。

では、礼服ができ次第お届けいたします。」

カイコクラン侯爵は、深々と一礼すると従者と共に、護衛兵士が開けた扉から早々に出て行った。


護衛兵士が扉を閉めると、執務室の中には誰にいなくなった。

「金髪碧眼の従者が懐かしい。

まぁ、もうすぐ会えるか。」

窓の外を見ると、夕陽がさして来ていた。

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