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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
36/48

36.闘争心

「陛下、婚姻の許可をもらったのですが、相手の娘に逃げられてしまいました。」


2つのキーワードを使用して確認すると陛下の寝室の前に青い光が2つあった。

そのまま木彫りで装飾された大きな観音扉の前まで行って、二人の近衛騎士に「開けろ」と言うだけで、扉は大きく開かれた。


早朝で、先ぶれも出していなかったため、陛下はベッドの上で気持ちよさそうに就寝していた。

その陛下を揺さぶり起こして、第一声に先ほどの言葉を告げた。


タクト殿下の後から部屋に入ったミマリとミズマリは、直球的なその言葉に主人のブランシュへの諦めを感じて眉を下げた。


陛下は赤茶色で白髪の目立つ髪を抑えながらベッドの上で体を起こした。

その目で、「何を言っているんだこいつは」と訴えているのがよくわかる。


「起きられましたね。

相手の娘は5日前に城から逃げているので、探すのは無理かと思います。

ついでに、それに手を貸した娘の追放を命じておきました。」

レアリアを追放することで、クラウドも追従していなくなるのは眼に見えているが、そこは問題ない。


タクト殿下は、陛下に肩をすくめてみせた。


陛下は寝台の横に置いてある小さなテーブルの上にある、金のハンドベルを持つと横に振った。

ハンドベルの音がチリンと響くと、寝室の奥にあるメイドの控室につながるドアが開き、メイドが湯気の立つティーカップをおぼんにのせて現れた。

ベッドの上でティーカップを受け取ると、陛下は香りを嗅いでからゆっくりと味わってお茶を飲んで、口を開いた。


「平民一人を探し出すには、この国は広いのは確かだ。

しかも、5日前ということであれば、他国に渡っていてもおかしくはない。

それで、どうするんだ?

新たに婚約者候補でも探すか?」


「そうですね。

そう言えば、最初は隣国、ローズウエスト国の銀髪の第2王女との婚約が進められていましたよね?」


「あれは、こちらから一度断っている。

それに、もう、婚約者がいるという話を聞いた。」

陛下はお茶を飲み干すと空のティーカップをメイドに渡して、執事を呼ぶように伝えた。


「だからなんですか?

婚約くらい、破棄させればいいのでは?」

ここで、同情心は禁物だ、暴君ルートの確定のためには強気に出なければならない。


近衛騎士の交代の時間でもあったようで、扉の前の近衛騎士二人と新たに来た近衛騎士が入れ替わっていた。

そのタイミングで陛下の執事である片眼鏡のセバスチャンも寝室に入ってきた。

内に開いた扉の前にいた二人の騎士に変わり、ユージンとフレンドが護衛に立っていた。


「陛下、タクト殿下、おはようございます。

早朝からどうされたのですか?」

挨拶が済むと、セバスチャンは顔を拭くためのタオルを陛下に渡しながら、二人の顔を交互に見た。


「セバスチャン、ローズウェスト国の第二王女の話を教えてやってくれ。」

陛下はタクト殿下の方を見ながら、顔を拭き終わったタオルをセバスチャンに渡した。


「話?

何かあったのですか?」

タクトには心当たりがない。


陛下が頷くと、セバスチャンが口を開いた。


「はい。

順を追って説明いたします。

こちらの国の婚約話がなくなった後、第二王女様には他国の王子との婚約話が進みました。」

セバスチャンは右手を顎の下くらいに上げて、人差し指だけを立てた。


「第三王女様がこちらの国から帰って、第二王女様の婚約者の王子を気に入り、創意工夫して寝取られたようです。」

セバスチャンは、右手の中指を追加で立てた。


「創意工夫って、物は言いようだな。

まあいい、それで?」


「第三王女様の創意工夫の中には、第二王女様を陥れることも含まれており、城の舞踏会で王子は第三王女様を傍らに、第二王女様に婚約破棄を言い渡されたということです。」

セバスチャンは、右手のくすり指を追加で立てた。


「なんだか、よく知ってる展開になってきたような。

誰だこの話を指し込んだのは、黒メガネじゃないよな。

それで?セバスチャン、続けてくれ。」


セバスチャンは、三本の指を立てながら続きを話した。


「その後冤罪が晴れた第二王女様は自国の公爵家の三男である騎士と相思相愛となり婚約したそうです。

ちなみに、公爵家の三男の騎士とは、幼い頃からの幼馴染だそうです。」

セバスチャンは、右手の小指を追加で立てた。


「冤罪を創意工夫されました第三王女様は謹慎が言い渡され、他国の王子は騙されたとのたまいながら、自国に戻られたそうです。」

セバスチャンは、親指を追加で立て、開いた指をぎゅっと握り直して、自身の胸の下にあてると頭を下げた。


「以上でございます。」


メイドの控室の方から拍手がしたような気がした。


「ああ、簡潔にありがとう。

ここで、俺が略奪すると、第二王女にとってはまさに悲劇だな。

政略的な婚約の中止の次に他の相手と政略的に婚約、この相手はパターンに嵌めるなら典型的な自己中王子か。

自己中王子から傷つけられた心を幼馴染に癒してもらって、これから幸せになると思ったところで、最初の政略的な婚約の蒸し返し。」

ストーリーをまとめながら数回頷いて見せた。


陛下もセバスチャンも、後ろのミマリ、ミズマリ、開いた扉の前にいる近衛騎士の二人も、数回頷いている。


「しかし、私にはそんなことは関係ないですよね。」

組んだ腕の片方の手を顎の下にあてて、視線は天井に向けて無責任な言葉を言い放ってみた。


陛下もセバスチャンも、後ろのミマリ、ミズマリ、開いた扉の前にいる二人も、その言葉に目を見開いた。


「陛下が、サイクランに騙されてあんな薬を受け取らなければ、こんなことにはならなかったかもしれません。

サイクランの領地に行かなければ、決して逃がしはしなかったんです。

ブランシュを。

ゆっくり王子妃の勉強させて、自信をつけてもらって、決して無理に進めるつもりはなかったのですよ?」


「しかし、隣国のローズウエスト国の王は3人の娘を溺愛している。

長女を跡継ぎに決め、第二王女を公爵家の出とは言え三男の騎士との婚約を許し、末っ子を処罰せずに謹慎にしかしなかったくらいには。

しかも、あちらに非があるとはいえ、わが国は第三王女を来たその日に追い返している。

3人の娘を溺愛している王が、娘の幸せを壊してまで、こちらからの婚約の話を許可するわけがない。」

陛下がベッドの上で顔を青くして、そのまま枕に頭を戻した。


「陛下、お顔の色が真っ青です。

すぐに主治医を呼びます。」

セバスチャンが、急いで近衛騎士の二人の間を通り廊下に出て行った。


セバスチャンがいなくなると、横になった陛下のベッドに向かって膝をつき、腕を組んでベッドの上に乗せた。

「隣国の王が許可しないのであれば、許可するようにすればいいだけですよ。」


寝室の中にいるタクト殿下以外の者は緊張の面持ちで、言葉の続きを待った。


「大丈夫です。

最近、貴族が領地の税金をかなり上げてきているでしょう?

そのために領民が逃げ出しているそうです。

サイクランの領地も例外ではありませんでした。

その領民たちをホソウクラン男爵の領地に集めて、多額の給料で傭兵として雇いましょう。

傭兵でなければ、道の整備や武器の製造、仕事はいくらでもあると言って。」


「ホソウクラン男爵の領地と言えば、隣国に一番近い領地ではないか。

まさか、戦争でも始める気か?

許さんぞ!」

陛下は、一旦枕に置いた頭を、勢いよく上げると、タクト殿下の襟元を掴んだ。


襟元を締めている陛下の手に、そっと自分の手を重ねた。


「陛下には療養が必要です。

もうすぐ国のものとなるサイクランの領地が最適だと思います。

隣国からも遠いし、ちょうど、サイクランの処罰もすぐにできる状態ですし、近日中に準備いたしましょう。」


そこに、セバスチャンが主治医を連れてやってきた。


「ええ、療養には最適です。

陛下が摂取された毒素を抜くには、かなりの日数が必要です。

聞いたところによると、クックラン料理長は高位貴族用の大鍋に作ったスープに調味料を使っており、他にも療養が必要な者がおります。

全員が領地で療養ができるれば、実に理想的です。」


最後の言葉だけしか聞いていなかった主治医はもろ手を挙げてサイクラン領地での療養に賛成した。


「決まりですね。

高位貴族たちには、陛下のせいで毒を摂取してしまったことは内緒にしておきましょう。」

タクト殿下は、項垂れる陛下に向かって優しく語りかけた。


扉の前に立っていた、ユージンとフレンドが、驚いてお互いの顔を見合わせている。

「高位貴族用の大鍋に作ったスープに。」

ユージンが主治医の言葉を拾うと、その後をフレンドが続けた。

「陛下が摂取された毒素が?」


タクト殿下と主治医にたたみかけられた陛下は、襟元を掴んでいた手を緩めた。

「しかし、銀髪だからと言って、好きでもない婚約の相手を略奪するための戦争など。

何と意味のない。」


タクト殿下は襟元を掴んでいる陛下の手にもう片方の手も添えた。


「実は、某小説の2巻で少しだけ登場した銀の髪でグレーの瞳の悪役令嬢は、結論だけ言うと幸せになっていました。

小説の後半中頃、と言う、まったく中途半端なタイミングで少しだけ出てきたのです。

元悪役令嬢が平民として自立して商売をする中でその手助けをしてくれた人と幸せになったということです。

実に、簡単で、半端なくだりだった。

いえ、意味がないと言えば、どっちもどっちですし、意味がなくてもやってみようかなと。」


陛下が襟元から手を離すと、タクト殿下は添えていた手を離して立ち上がった。


「ミマリ、ミズマリ、聞いていたな?

ホソウクラン男爵から、領地の状態の報告が届いているはずだからまとめておいてくれ。

それから、婚約の申し込みの書状を隣国に送ってくれ。」


ミマリとミズマリの顔色が悪いが、相変わらずの金髪碧眼の美青年たちはそれでも絵になっている。

「本当に申し込まれるのですか。」


ミマリが誰もいない場所を見つめて独り言のように言った。


「申し込む。」

返事は期待していなかっただろうが、あえて、皆に聞こえるように強く答えて、陛下の寝室を出た。


「王城の地図、クランサーチ」

目の前に王城の地図が表示されたが、青色だった陛下の色が白の点滅に変わっていた。


「一度青になっても変わるのか。

吉と出るか、凶と出るか。

厨房には青色の光が一つだけ、コックランの白い点滅の光がない。

いや、厨房の外の倉庫の前の広場に二つ白い点滅がある。

誰だ?」

白い点滅は分かっても、それが誰かは分からないのが欠点だと思いながら、王子の執務室に向かった。


執務室に付くと、サイクランの処刑の書類、サイクラン領の整備の書類、ホソウクラン男爵の領地の情報の書類など、確認すべきことはたくさんあったが、婚約の申し込みを優先させた。


その結果、3日後には断りの返信が手元に届いた。


「セーブ」

ピコンッと、少し離れた上空に文字が浮かび上がった。


<セーブポイント2-8を作成しました。説明を付け加えますか?>


「説明を付け加える。

断りの返信」


<セーブポイント2-8、断りの返信を作成しました。ゲームを続けますか?>


「続ける」

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