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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
20/48

20.森に向かう

前回のミーティングの後、テスターたちの意見が考慮された。

また、公式に出す資料も整ってきたため、今まで名前の出ていなかった国や人物の名前が発表された。


プログラムのタイプミス、連携、コーディングミス、実行時のバグがチェックされ、それに伴い、テスター向けのプログラムもβ版にアップロードされた。

タクトたちテスターはユーザーにより近い感覚でのテストを行うことになり、それぞれの課題に沿ったステージ2のテストが開始される。


--------


「イメージキャラクターの選択は、ホワイトタイガーにするか。」

キャラクターは3種類、三毛猫、ゴールデンリトリバー、ホワイトタイガー、犬の犬種はイタリアングレーハウンドから変更されていた。

テスト中にアップロードされたキャラクターイメージを見て、他のテスターから「イタリアングレーハウンドが細い手(?)で重そうなヘッドセットを持っているのを見ていると心配でハラハラする」という声が上がったからだ。


「ペットは飼ったこと無いけど、イタリアングレードハウンドって好きだったんだけどな。

確かに、あの手(?)に持たれたヘッドセットは、重々しさ倍増って感じだったな。」


イメージキャラクターを選択すると、ホワイトタイガーが表示され、俺様風に説明してくれた。

説明はスキップすることもできるが、一通り流して、いつものようにアイマスク型のスコープをスライドさせ固定した。

「ゲームシステム装着完了だ、俺様ほどじゃないが、おまえもやるじゃないか!

ゲームスタートすることを認めてやろう。

分かっているだろうな、ゲームオーバーになったらただじゃおかないからな。

行ってこい!」

最後の一言は、さらに強く、野太い声の一言だった。


「ゲームスタート」

タクトは笑いをこらえながらゲームをスタートさせた。


目の前にオープニングロールが現れ、それが、だんだん距離を取って遠く小さくなっていく。


内側に引き込まれるような感覚を覚えると、真っ暗な空間に、白い文字が浮かび上がりスクロールされる。

と、同時にオープニング曲が流れ始める。


「オープニング曲、本採用のものに変わってるな。

体験版リリースまで、あと半年、結構ぎりぎりだよな。」


<<この文字が読め、曲が聴こえているかを確認します>>

オープニングロールの最後に、柔らかい蛍光色のような白い文字でメッセージが表示されている。


<<両手でガッツポーズをしてください>>

文字の通りに両手を前に出して肘を折り、ガッツポーズをする。


「「手を下ろして、3回両足でジャンプしてください」」

今度は音声メッセージが流れてきたので、そのままジャンプを3回する。


<<文字認識、音認識、動作コントロールが確認できました>>

文字が点滅しながら消えていった。


「「あなたの名前はタクトです。名前を変更しますか?」」

「そのままで。」


ちなみにデフォルトネームは、レッドで落ち着いたようだ。


<<ポイントがあります。ポイントを選択しますか?>>

<<はじめから>>

<<セーブポイント1婚姻の選択前>>

<<セーブポイント2西の森の選択前>>

<<-----:------>>

<<セーブポイント99最後の前>>


「セーブポイント2西の森の選択前 を選択する。」


<<セーブポイント2西の森の選択前 をロードします。>>

<<よろしいですか?>>


「ロード」

足元から光が広がり、いつか見た光景が周りに現れると、森を背に立っていた。

西の森の遥か向こうに夕陽が沈みかけているため、周辺は朱色に染まっている。


「前回は主人公が殺戮の世界で傭兵となるバッドエンドだった。

今回は、暴君を目指して、主人公が平民統治の平和な世界を作るトゥルーエンドが課題だな。

良い君主、自己満足な君主、優柔不断な君主、暴君の4つの中で一番長いルートだから、先は長いな。」


タクトは、金髪碧眼の従者二人が夕陽に照らされる姿を見て目を細めた。

眩しそうに夕陽を見ていた従者が、金髪の髪をキラキラと光らせて、声をかけてきた。

「殿下、夕陽が沈みきる前に、城に戻りましょう。」


「そうだな。

その前に、森によって行こう。

この森を少し入ってひらけた場所にグミの木があっただろう?

小さい頃におまえたちとよく来た。」


「そう言えば、そうでしたね。」

金色の髪の後頭部を丸みを持たせて整え、前髪を真ん中分けに長めに伸ばしている従者が、手をおでこ付近にあてて目元に影を作りながら答えている。


「ここ数年、執務に追われてまったく忘れていました。」

長髪を後ろで括って、前髪を短髪の従者と同じように真ん中で分けて長めに伸ばしている長髪の従者も、馬に水をなめさせ終えて、近くの適当な木に手綱を巻きながら答えている。


「今頃は実がついているはずだ。

せっかくだから、ちょっと寄って摘んでこよう。」

従者二人に背を向けてタクト殿下は大股で森の中へズカズカと歩き出した。


「「殿下、お待ちください!」」

双子の従者も殿下の後をおった。


タクトは、先をズカズカと歩いていたが、すぐ後ろに追いついてきた二人に、体を半分向けながら、名前を呼んだ。

「実をとったら、ミマリとミズマリにも分けてやるから。」


二ッと笑うタクト殿下の顔を見た双子の従者は、仕方ないなとばかりまるで弟を見守る兄のような笑顔を向けて頷いた。


それぞれ右斜め後ろと左斜め後ろに付き、タクトの歩幅に合わせて歩き始めた。

日が落ち暗くなっていく森を歩いていくと、10m四方くらいの開けた場所に行きつき、夕暮れ時のオレンジに染まっていた。

その中央に高さ3mくらいのグミの木があるのだが、そのグミの木の近くに籠を持った人が立っていた。


「だれだ!」

大きな声で叫びながら、金色の短髪の従者が、すばやくタクト殿下をかばって前に立つ。

その声に驚いたようで、グミの近くにいた人物は手に持っていた、30cmくらいの網籠を落としてしまった。


「ミマリ、大きな声を出すな。

よく見ろ、少女じゃないか。

大きな声を出すから驚いて、籠を落としているじゃいか。」

少女の落した籠からグミがこぼれていた。

タクト殿下は後ろからミマリの肩を掴んで自分の後ろに引かせると、その少女に声をかけた。


「すまない、私の従者の大声で驚かせてしまって。」

そのまま少女に近づいみると、朱色に染まった暗くなりかけの森ではあるが、はっきりと顔がわかった。

銀色の髪にグレーの瞳、茶色で少し硬そうなワンピースに白いエプロンを腰に巻いている質素な平民服ではあるが、ブランシュである。


タクト殿下は少女の前まで歩みを進めて腰を落とした。

落ちていた籠を拾うと自分の腕に掛け、散らばったグミを摘まみながら中に入れ始めた。


「ここで、懐かしいとか言ったら反応されるかな。

1度ゲームをクリアしてると、2回目以降は下手に色々と口に出そうでまずいな。」

下を向いてグミを拾いながら、用心深く少女に聞こえない程度の小声でつぶやく。


少女は腰を落とした高貴な身分であろう少年を見て、ハッとしてる。

身につけているものでもわかるが、従者が二人もついているなんで、絶対に高貴な身分の方に違いないと思ったようだ。

少女は慌てて自分も腰を落として、タクト殿下の持つ籠に手を添えてグミを拾うのをさえぎっている。

タクト殿下の顔の近くで、銀色の髪が少女の首の中ほどでフワッと内側に向いてゆれている。


「もう、全部拾ってしまったから。」

少女の揺れる髪に見惚れつつ立ちあがると、籠を持っていない方の手を少女の前に差し出してみた。

目の前に差し出された手に戸惑いながら、少女は遠慮がちにその手に自分の手を乗せた。

タクト殿下が少女を引いて立ち上がらせると、少女はすぐに手を放して一歩後ろに下がり頭を下げた。


「も、申し訳ありません。

高貴な方にこのようなことをしていただくなんて!」


「大丈夫、気にしないで。

このゲームのいいところは、プレイヤーにとってのヒロインがそのまま反映されるとこなので。

君の役に立てるなんて本望だ。」

髪の短い、平民服のブランシュもいいよな、と思いつつタクト殿下はグミの入った籠の中に自分のハンカチをかけて渡した。


先ほどまで焦り顔だったのだが、籠を受け取った少女の顔は瞬時に真顔になった。

真顔と言うより、感情が落ちたというべきだろうか、スンッという擬音語が入っていそうな表情だ。


「えっ?

もしかして、軽い男だと思われた?

こんなこと、誰にでも言って回ってないから、、、たぶん?」

自分でそう言いながら、いや、たまに「君の役に立てるなんて本望」だなんて、軽いセリフを何も考えずに言っているかもと思いつつ、正直に「たぶん」などつけてしまった。

後ろで双子の従者が、笑いを堪えているのがわかる。


「いや、おまえたち、少しはフォローしてくれ。」

左手を腰に当て、右手で顔の半分を抑えながら、顔を下に向けたポーズで次のセリフ(言い訳)を考えていると少女の笑い声が聞こえた。


「フッ、フフッ」

見ると少女が笑いを堪えようとしている。


「フッ、フファ

アハハハハハハッ」

前かがみで両手にもった籠を胸に抱き、堪えきれなくなって大きな笑い声をあげた。


ブランシュが大きな声で笑うなんて、1回目は無かった光景だ。

タクト殿下はその姿を見て眩しさに目元を緩めた。


少女が大きな声で笑う姿に従者たちは唖然とし、髪の長い従者が我に返ると真面目な顔で厳しい声を出した。

「不敬だぞ!

この方を平民の娘がそのように笑えるものではない。」


少女は顔を青ざめさせて、ひざを折り頭を地につけた。

「申し訳ございません。

ご容赦ください。」


「いや、そんな姿は見たくないんだ。」

タクト殿下が後ろに立っている従者二人を振り返ってみると、渋い顔をしている。


「ミズマリ、相変わらず怒った顔もきれいだとは思うけど、それは置いておこう。

こんな森の中にいきなり出会った俺が誰かもわからないのに、笑った少女に不敬も何もないだろ。

笑われるようなことをした俺が、間抜けなんだ。」


「しかし。」

納得していない従者にヒラヒラと手を振って、目の前で平伏してしまった少女の方を向いた。


「夕陽がだいぶ沈んで、顔に落とされた影がちょっと暗くて怖いけど、彼は主人思いなだけなんだ。

言っているだけで、本気で君のことを怒っている訳じゃない。

君、名前を教えてくれる?」

片脚を折って腰を落とし、平伏している少女の後頭部に声をかけると、少女は恐る恐る顔をあげた。


後ろに金髪の従者二人、前に銀髪の少女が一人、自分の平凡で地味な赤茶髪はともかくとして、夕闇の中でも、きっと絵になっているに違いない。


「ブランシュと申します。」

少女は、両手を揃えて地につけたまま、体を起こして顔をタクト殿下の方に向け、恐々と名前を告げた。


「かっ(かわいい)。

コホン。

ブランシュ。

驚かせてごめん。

もう暗くなるから送っていくよ。」


タクトは内心「名前ゲット!これで名前を呼んでも怪しまれない」と思いつつ、冷静さを装った。

そして、この世界ではスクショができないことを残念に思う。

プレイヤーのイメージで容姿を作られる彼らを個人がスクショして世に出すことはNGであるため、制限がかかっている。


また、ブランシュの手を取って立たせると、グミの入った籠を拾い、従者に渡した。


「あの、籠は自分で持ちます。」

籠に手を伸ばそうとしたブランシュの手をそっと抑えて首を振った。


「足元も暗いし、籠なんて軽いから持たせててくれ。

森から出たら籠も返すしね。

セーブポイント1婚姻の選択前から始めて、釣書を渡されるとき否定の返事をすると、この森での出会いがショートカットされて時間短縮できたんだけど。

でも、ここは外したくなかったんだよね。」


タクト殿下はブランシュをエスコートしながら、森の外に向かった。

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