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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
19/48

19.ティールーム

ゲームが終わり、データがサーバーにアップロードされると、いつものようにシキから連絡が入った。


「最短ルートでも時間がかかるから難易度設定とか必要かな?」


パソコンのスピーカーから、シキの声と一緒にキーボードを打つ音が聞こえてくる。

タクトはカウチに寝転がった状態で、天井を見ながらゲームのことを考えて返事をした。


「そうだな。

このゲーム、すき間時間にちょっとだけできる類のものじゃないし。

そこに来て、俺の場合は、ブランシュ姫追放後の宰相が粘着質で、しつこいから、説得やごまかしに時間がかかったり?」

この場合は、宰相の我が強ければ、難易度が高くなる。


ブランシュ妃との浮気の相手に仕立てられた近衛騎士を証拠隠滅のために宰相が死刑にしようと言い出したとき、陛下だったタクトは、浮気は気にしないし、ブランシュ妃を呼び戻すこともしない、何だったら破婚の手続きをして後妻を迎えてもいいと心にもないことを述べ、それよりも、この人材不足の中で強い兵を失うことの方が痛手になると、のらりくらりと、宰相を躱していったのだ。


「危うくあの粘着質な弁に負けそうになって、近衛騎士の死刑を許可しそうになった。

ある程度のストーリーは公開すると言っても、ユーザーの性格によってはクリア不可になる可能性が高くなると思う。

時間をかけてもクリアできないゲームは、すぐにあきるし、時間を損した気になる人も多いと思う。」


「そうなのか。

他のテスターにも意見を出してもらっているから、それを次回のミーティングで確認してみる。」

ミーティングで確認する内容をメモしているのだろう、相変わらず声と一緒にキーボードを打つ音が聞こえてくる。


「シキは、このゲーム、まったくプレイしてないんだよな?」


「ああ、うん。

ゲーム自体あまりしないけど、やるなら建設系で色々と組み合わせて建てていく方が良いかな。」


「おまえには、たぶん、このゲーム攻略できないと思う。」

自己否定抜群のシキだと、ゲームのNPCを自分の意図した方向に行動させようなんて操作は無理だろう。

恐らくトウリやアオバも同意してくれるはずだ。


「?、なんで。」

シキが、心から不思議そうな声を出したため、笑いそうになってパソコンを見ると、パソコン横に置いていたスマホの待ち受けにメッセージが表示されたのが目の端に入った。


「ちょっと待ってくれ。

スマホに、スケジュールの連絡がきた。」


カウチに座り直してスマホをとると、起動したスケジュールアプリにログインして、個人スケジュールのカレンダーを見た。

すると開発グループのサブチームリーダーから3日間のテスター依頼が入っていた。

タップして内容を確認すると、ミニゲーム ティールームの動作確認とその資料が閲覧できるURLがリンクされている。


「ミニゲーム?の、テスト。

シキ、ミニゲームがどんな内容か知ってるか?」


「ミニゲームは、VRチームのプログラマーが開発していたもので、基本のモジュールは提供したけど、内容は知らないかな。」


「基本モジュールって、シキが趣味で作ってたVRでアバターを使用してその世界を体験できるってやつか。」

URLをタップして、資料を閲覧してみる。

内容は、簡単にしか書かれていない。

・クリアしたゲームの登場人物がランダムで現れて、一緒にお茶をする


「なんだこれ?

本当にミニゲーム?説明書になってないな。

まだ資料もできていないうちに回してきてるっぽいな。

まぁ、いつものことか。」


タクトは、呆れた顔をしながらも、スケジュールの予約申請画面に表示されている受領ボタンを押した。

通知がサーバーに送信され、予約申請の3日間が仮スケジュール表示に変わった。

そのままプロジェクト全体スケジュールにもログインし確認したが、1回目のテストステージを完了しているのはタクトだけだった。


「スケジュール、受領したのか。」

シキが確認のための声をかけてきた。


「ああ、おまえもスケジュール見てるのか。」


「うん。

全体スケジュールのタクトのところ、プロジェクトリーダーから承認されたみたいだ。

ミニゲームテストが仮スケジュールから本スケジュール表示に変わった。

すぐ確定したってことは、リーダーも全体スケジュールを見ていたみたいだな。」


「っ。

そう、みたいだな。」

シキが言うリーダーとはプロジェクトリーダーであるマシロを指している。

タクトはそのことに一瞬言葉が詰まった。


「シキ、じゃ、俺、ゲーム終ったばかりで夕飯まだだから、切るぞ。」


「えっ、あぁ、うん。

でもティールームの内容も念のために聞くと思うから。」

シキは、いきなり、通話を終ろうとするタクトに戸惑っている様子だ。


タクトは通話を切った後、そのままカウチに倒れ込んだ。

「なんだろう。

同じ画面を見てると思ったら、どうしようもなく、会いたくなるって。

まずいな、あの人、相手いるよな?」

スマホの画面をじっと見ていたが、承認されたスジュール一覧から画面は何も変わらない。


「今、考えても仕方ない、夕飯でも食べに出るか。」

大きく深く息を吸って、ゆっくりと掃き出し、スケジュールからログアウトをすると、黒のカウチから立ち上がる。

タクトはスマホをズボンのポケットに突っ込みながら玄関に向かった。


--------


ヘッドセット型のゲーム機本体の薄いアイマスクとそれにつながるヘッドホン部分の機器を外し、厚みのあるVR用のゴーグルに付け替える。

大きくて太めのカチューシャにゴーグルをつけているような形になっている。


ゲーム機本体とPCの無線接続、ゲーム機本体の右側の青ランプが点灯しプログラムがロードされたことを確認する。

そこで、パソコン画面にはイメージキャラクターの選択肢が出てきた。


「イメージキャラクター、今度は犬にしてみよう。」


選択すると、イタリアン・グレーハウンドのような小さくて細い手足の犬のキャラクターが出てきた。


「本体にVR用の機器が装着されているので、自動的にミニゲームが選択されます。」

グレーで小さな体の首には白いネクタイリボンが巻かれている。

声は見た目によらず渋く低い。

上品な執事風だ。


こんな細い手足で、もしかしてヘッドセットの装着説明をするのか?と思ったら、その通り、ヘッドセットの装着の説明を始めた。

見ていると可哀そうになってくるので、カウチに座るとさっさとヘッドセットを装着した。


「ヘッドセット、スコープ、後頭部のバンド、すべて正常に装着されていることを確認しました。

いつでもゲームを始められます。」


ヘッドセットをしているため、見えないが、案内の渋くて低い声が聞こえたので、ゲームをスタートする。


「ゲームスタート」


周りの景色が一変し、白い四角い部屋の中央に丸いガーデンテーブルが置いてあり、タクト自身の姿でガーデンチェアに座っていた。

「あれ、姿はこのままか、アバター選択とかは無いんだな。」

顔をペタペタと触り、髪の色、来ている服を確認した。


座っている正面のドアが開いたので、そちらを見ると、黒いワンピースの上から白い肩ひもをかけ、胸からひざ丈まで覆うエプロンがかかったエプロンドレスを着たメイドがワゴンを押しながら入ってきた。

白い襟元に茶色のリボンを結んでいるのは配膳担当のメイドの印。


カラカラカラと、ワゴンを押してきて、ガーデンテーブルの横に据えた。

丁寧にお辞儀をすると、顔をあげてにっこりと笑った。


「あれ、ゲームのキャラじゃないのか。」

メイドの顔を見るが、ゲームの中の登場人物の誰でもなかった。

メイドは、ワゴンに置いてあった2つのティーカップをテーブルに並べると、人差し指を頬にあてて、首をコテンと倒した。


「お茶を三種類用意いたしましたが、お客様がどのお茶をお飲みになりたいのか忘れてしまいました。

選んでいただけますか?」

そう言うと、両手を同時に動かして、ワゴンに乗せたままの3つのティーポットの方に向けた。


「えっと、そういうゲーム?

ようするに、選んだお茶によって、登場するキャラが違うとか?」


メイドはにっこり笑顔で答える。

「はい。

ティータイムの間、お客様とご自由にお話しいただけます。

選択時間も合わせて、制限時間は10分間です。」


ティーポットが3つ、白、グレー、青、微妙な選択肢である。

「ブランシュだから、白?

でも、ブランも白?

瞳がグレーなのは、

青は双子の従者のどちらか?

いや、クラウドも青い髪だった。」

タクトは、色の条件に合うキャラクターを思い浮かべて、決めた。


「では、グレーで。」


「はい。

では、そそがせていただきますね。」

メイドがティーカップのそれぞれにお茶を注ぐと、カモミールの香りがした。

カモミールの香りに気がついたタクトは、髪の短い金髪碧眼の従者がいれてくれたお茶を思い出した。


メイドが先ほどワゴンを持って入ってきた扉から、銀髪にグレーの瞳のブランシュ姫が入ってきて、奇麗なカーテシーをしてくれた。

メイドがブランシュ姫をタクトの前の席に案内すると、優雅に座って微笑んでくれた。


メイドは、コホンと咳払いをすると、腰に手を当てて得意そうに説明を始めた。

「ちなみに今回は、白が宰相様で、グレーがブランシュ姫で、青がスカイでした。

必ず、当たり、はずれ、中くらい がありますので、今回は当たりですね!

おめでとうございます!」


タクトは目の前のブランシュ姫は嬉しいが、内容はあまりうれしくないような気がしてた。

「はじめまして。

ブランシュと申します。」

だが、目の前のブランシュ姫が、挨拶をしてくれると、どうでもよくなってしまった。


「とりあえず、当たりでよかったよ。」


はじめまして、ではないのだが、陛下ではないタクトとは初めてなので、仕方のないことだ。

ゲームでは泣かせて別れてしまったブランシュ姫を、お茶をしながら楽しませてあげられるたことに救われたような気がした。


ミニゲーム終了後、仕事は仕事なので沢山のチェックと項目への入力が待っているのだが。

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