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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
18/48

18.最短ルートのクリア

赤茶色のカツラをブランとスカイは外し、茶色を濃くしていた肌を布できれいにふき取った。


老人に扮していた三人の男が、白髪のカツラを床に投げすてると曲げていた腰をすっと伸ばした。

タクト殿下の元従者の二人と、残りの一人はスカイと同じ青い髪に黒い瞳をしている、そう、ブランの剣の師匠であるクラウドだった。

全員、体形をごまかすために来ていたブカブカのローブを脱ぎ棄てた。


タクト殿下の元従者の二人とクラウドは、貴賓牢の角のテーブルに置いてあったタオルを横の水桶に付けて絞ると、ごしごしと顔をこすり、老けてみせていた化粧を落とした。


元近衛騎士の二人が、それぞれの目の前の貴賓牢の扉の鍵をあけながら、2人と3人に声をかけた。

「貴賓牢のベッドの下に、身体検査の時にあずかった剣を入れておいた。

服もあるから、それを着て出てきてくれ。」


ブランとスカイが、ベッドの硬いマットを捲りあげると、使用人の服が入っていた。

その横に布にまかれた長剣も置いてある。

城に入る際に身体検査があったが、その担当者が協力者のこの二人だった為、隠し持ってきた武器を一時的に預けていたのだ。

二人は預かった王家の剣や他の武器を、使者が牢に入れられることを予想してこの貴賓牢に隠したのである。


5人がこの城に来たのは一通の招待状がきっかけだった。


タクト陛下とホソウクラン侯爵の長女である侯爵令嬢との婚姻式の招待状が、隣国のブランシュのもとに届けられたのだ。

この招待状は、激怒したブランシュの父である隣国の王に、国交を絶っていた国を潰すことを決意させた。


招待状の返信を届けるという名目で使者をたてることになったのだが、そこに名乗りを上げたのが、今貴賓牢に入れられた5人だった。


「本日、謁見の間に入ったとたんに取り押さえられましたように、陛下の周りは厳重な警備が敷かれております。」


着替えを終えた5人を、元近衛騎士の二人が連れていったのは、人気のない厨房の隣の倉庫だった。

倉庫の前には二人の甲冑の兵士がいたが、元近衛騎士の二人を見るとバイザーをあげて顔を見せて強く頷いた。

そして、その後ろにいるクラウドの顔を見たとき、二人の兵士は一瞬表情を崩し瞳を潤ませた。

「よくぞ、ご無事で。」

絞り出すような声とともに、倉庫の錠前を外して7人を中に入れた。


「明日の午後、陛下は謁見の間に入られます。

その後、ホソウクラン侯爵令嬢が入場され、陛下に挨拶をされます。」

一人の甲冑の兵士が一番前を歩き、元近衛騎士の二人と続く5人に現状を説明し、倉庫のさらに奥にある通路を進んでいく。


倉庫の通路の両壁側に、たくさんの食料と酒樽が並んでいるのを見て、この国の窮状を知っているブランは両手に作った拳をきつく握りしめた。


一番後ろを歩く甲冑の兵士が、その手に気づき、静かにブランに話しかけた。


「国の食料はすべて王城のこの倉庫に集められています。

それでさえ、この倉庫に入りきるほどしかないのです。」


倉庫の奥のドアの前に辿り着いた時、ガントレットをはめた手で取っ手を握った兵士が5人を振り向いた。


「今、城の外側を警備しているのは、元タクト殿下の護衛兵たちで、みなクラウド様の剣術を慕っているものばかりです。

城に残って、近衛騎士だったお二人が平の兵に落とされた屈辱に耐えながら、皆をまとめてくれたのです。

そして、ご連絡をいただいたとおり、隣国の兵が突入するのを手助けできる位置に、味方の兵を配置しております。」


一呼吸おいて兵士は続けた。


「ですが、城の中にいるのは、宰相の息がかかった兵ばかりです。

ここから先は、使用人として対応させていただきますので、お許しください。」


「分かっている。

当たり前だ。

危険を承知で協力してくれている皆の意志は心得ている。」

ブランは大きく頷いた。


兵士がドアを開けて中に入ると、そこは謁見の間のある棟に繋がっており、5人は忍び込むことに成功した。


視点を戻したタクトが、ベッドの上で目を閉じた。

「さぁ、目をあければ、最後の日が始まる。」


翌日、ホソウクラン侯爵令嬢が謁見の間に入場し、陛下へのあいさつを無事に終えた。


「では、陛下、失礼いたします。

本日の晩餐を楽しみにしております。」

ホソウクラン侯爵にエスコートされた侯爵令嬢が意気揚々と謁見の間の扉の前に来ると、観音扉の大きなドアがいきなりバンッと両側に開いた。


「きゃ、キャー!」

謁見の間にいた貴族たちから悲鳴が上がった。


元近衛騎士の二人が先陣を切って中に入ってきて、入口近くのホソウクラン侯爵に気がついて叫んだ。

「ここに、ホソウクラン侯爵がいる!

拘束しろ。

逆らえば切り殺せ!」


「な、なんだ、お前たちは!」

自分の名を呼ばれた上に、切り殺せとまで言われた侯爵はなすすべもなく、次に入ってきた兵士に拘束された。

侯爵令嬢も拘束されたが、先ほどまでの意気揚々さが消えただ呆然としている。


後に続く、銀の甲冑の元タクト殿下の兵士たちは、二本の白い線が入った赤い上着を来た精鋭である近衛騎士達を果敢に切り付けていく。

その後には、隣国の兵士たちが続き、意表を突かれて喚きたてるだけの貴族たちを次々と拘束していった。

その中には、スイーツクラン侯爵、カイコクラン侯爵もいた。


その混乱する様子を階段上の玉座からタクト陛下が眺めているといった様子だ。

「みんな、なんだかんだと、おとなしく拘束されてるな。

設定のわりには、血が流れないよな。」


最後に、ブラン、スカイ、クラウド、双子の従者が入ってきた。

玉座に向かって真っすぐに走ってくるブランの後にスカイ、クラウド、双子の従者がつづいている。


「この世界の時間的には、ずいぶんぶりだよな。

皆成長したな。」

タクトは感慨深く5人を見ていたが、すぐ隣にいた宰相がいないことに気がついた。

タクト陛下が座っている玉座の背もたれは豪華で大きい。

この無駄に大きい玉座の背もたれ部分は空洞になっており、人が一人隠れることができる。

宰相はそこに隠れているのだ。


ここに座るタクト陛下ごと、ブランの王家の剣で玉座を切らせればそれでクリアだ。

「だけど、宰相と一太刀での心中みたいになるのは、鳥肌ものだよな。」


ブランは銀髪を振り乱しながら階段を駆け上がり、剣を構えながらタクト陛下の前に進み歩いた。

スカイと従者がブランの周りを固め、クラウドがタクト陛下の背後に回った。


「陛下、お久しぶりです。」

ブランは、構えていた剣を下げて、丁寧にお辞儀をしている。

父上と呼んではくれなさそうだ。


「そうだな。」

タクト陛下は、ブランに笑顔を向け、二人の従者にも笑顔を向けた。

二人の従者も、ブランと同様に丁寧にお辞儀をしている。


「陛下、その玉座から下り、この国の窮状を作った罪の裁きを受けてください。」


「わかった。

私はいつも一人では何も決められないから。

おまえがそう言うならそうしよう。

最後に抱きしめてもいいか?」

両手を前に出して、丸腰であることをアピールすると、ブランは戸惑い迷った様子だったが、頷いてくれた。

それをスカイ、元従者二人も見守っている。


玉座から立ち、2歩すすみブランの両腕にそっと両手を添えた。

「ブランとスカイが、ここでかくれんぼしていたとき、この玉座の周りでうろうろしていて宰相にひどく叱られていたな。

覚えているか?」


「・・・はい。

この後におよんで、昔話ですか?」

ブランの両腕に沿えていた両手をそのまま背中に回し、抱きしめるとブランの鼻の位置がちょうどタクト陛下の肩にあたる位置にきた。


「玉座の後ろに、かくれんぼに最適な場所があったから、宰相はひどく怒ったんだよ。」

そうタクト陛下が耳元でささやくと、ブランはハッとしてタクト陛下の後ろにそびえたつように大きな玉座を見た。


「クラウド!

玉座を切れ!

玉座の中に宰相がいる、そのまま切って捨てろ!」

タクト陛下を横に押しのけながら、玉座の背後にいたクラウドに大声で命じた。


クラウドは、剣を上に大きく振りあげて玉座の背もたれの後ろ部分を斜めに、ザッ と、真っ二つに切った。

ガンッ、ドスンッ、ガンッ、ゴッ、ゴッ、


切られた台座が崩れる音、それに続いて肉塊が倒れ転がるような音がタクト陛下の後ろで響いた。

タクト陛下からは、ブランの背に遮られて見えないが、宰相は声を出す間もなく、恐らく切られたことに気がつく暇も無かっただろう。

あっけない幕切れだ。


「プレイヤーにできるだけ血をみせないようにする仕様なんだよな。

後ろを見なければ、心中みたいなやられ方を回避できるかと思ったら、その通りだったな。

とりあえず、回避できてよかった。」

タクトがうんうんと頷いていると、ブランが向きなおっていた。


「陛下。

私が、この城を出るきっかけになった日に、王族しか知らない隠し通路を刺客が通っていました。

隠し通路を宰相に教えたのは陛下ですか?」

違うと言って欲しいと、ブランの目が訴えているようだったが、ここで嘘をついても仕方がない。


「そう。

暗殺者から逃げ切るための唯一のルートだったから、うっかり教えてしまったかな。」

ブランの顔に影が落ちる。


「陛下、スカイに従者部屋の使用を許可していただいて有難うございました。

騎士職の息子であるスカイの身分を理由に遠ざけようとする宰相の言葉を、いつもはどっちつかずな陛下に退けていただいたとき、どんなに嬉しかったか。」


「そう、それがもう1つの条件だったから譲れなかったんだ。

スカイが隣の部屋にいて、クラウドが私室の警備、そして暗殺者が天井裏の通路を通る。

暗殺イベントから生き残るための唯一の条件を揃えるために頑張ったんだ。」


「陛下も、苦しまれていたのですね。

だけど、だけど。」

グレーの瞳に涙をためている姿は、ブランシュを思い起こさせた。


気がつくと、タクト陛下とブランの周りにはスカイ、クラウド、元従者の双子、そして隣国の兵士に囲まれていた。


「さっきも言ったが、私は、自分では決められないんだ。

どうしたら皆のためになるのか、決められないからブランが決めてくれ。

大丈夫、お前が主役だから。」


そう言ってブランから数歩離れると、意を決したブランが王家の剣を振り上げた。

それが振り下ろされた瞬間、強制的に視点が変更され、王の謁見の間の王座から一番離れた正面入り口に固定された。


兵士に囲まれて様子は見えないが、玉座のすぐ前でブランが倒れた父王を前に倒れ込み泣きながら話をしている声が聞こえた。


「母上は、ずっと父上のことを信じていました。

婚姻の招待状を見たときも、父上の意志ではないからと、泣きそうになりながらも笑顔を作られて。」


「うん。

泣かせたくないし、そんなことはしない。

強がる姿が姫らしくて、可愛くてかっこよかったよね。

聞こえないと分かっていたから何度も大丈夫だと伝えたよ。」

今はNPCに聞こえないと分かっていても、伝えられずにはいられない気持ちだった。


「昨日、式の準備に積極的だったようで驚いたのですが、やはり、私の誤解だったんですね。

いつも、母上は父上からグレーの瞳がお揃いだと言われて嬉しかったと言われていました。」


タクトはやはりブランシュ姫は最高だという思いを改めて強くしていると、謁見の間の景色が遠のくように小さくなって行き、360度シアターのように回り中に映像が飛び散り出した。


「ああ、エンディングがスタートしたのか。」


城を制圧し勝どきをあげるシーン、

城から出て、王都、領地を抜け隣国に帰り母であるブランシュに迎えられるシーン

荒れた土地は元に戻らず、そこに住む人たちが殺戮を繰り返すシーン


最終的には、ブランを筆頭にスカイ、双子の元従者、クラウドなどを引き連れて傭兵団が結成され、荒れた国の中で生きていく。

殺伐とした戦いのシーンの中、エンディング曲が流れ、制作会社、制作に関わった代表者たちの名前がスクロールされた。


<<ゲームをクリアしました。>>


いくつかのシーンが停止した状態で、白い文字が点滅した。


<<1つのストーリーをクリアしたので、ミニゲーム ティールームが楽しめるようになりました。>>

<<ゲーム終了後、VR用の機器に付け替えてゲームをロードするとミニゲームが選択できます。>>


<<ゲームを終了します。>>


体の感覚が戻ると、いつものようにヘッドセットを外してローテーブルに置く。


「ゲームクリア。

さて、チェック項目の入力にもう一仕事かな。」

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