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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
14/48

14.断罪する

「ゲームの前半はぬるかったな。

わりと好きに進めていても、めったなことではゲームオーバーにはならないし。」


タクトは少し憂うつ気味にゲームをスタートさせていた。


婚姻式の後、病床の陛下が死に、プレーヤーが君主になると君主タイプが確定する。

これが転機となり、確定された君主の性格から外れた行動と判定されると、アウト判定となりゲームオーバーのイベントが発生するようになる。


「最短ルートの優柔不断な君主で来てるから、仕方ないことだ。

ストーリーも、あのバグ修正後にだいぶ進めたし。

それにしても、婚姻式の後のブランシュ姫の初夜の夜着姿もかわいかった。

ベッドに入って、明かりを消して暗くしたら、すぐ明るくなって次の日だったけど。

年齢制限していないゲームだからしかたないよな。」


年齢制限をしていないと言っても、ゲーム機器システムの使用は脳への影響を考慮されていてR15指定になっている。

そのため、そのシステムを使用するゲームもR15指定ではある。


「優柔不断な君主確定後だから、やらなければ、やられるだけだ。」


前半は君主のタイプを決めるためにゲームを強制進行するトラブルや専用キャラが発生していた。

だが、転機をすぎると、ストーリーを強制進行するためのトラブルがなくなり、そのためのキャラが一切出てこなくなる。

実は、お助けキャラ的存在だった彼らが出てこなくなるため、横道にそれるとゲームオーバーの率が高くなる。


特に王子という跡継ぎが生まれてからは、もっと注意しなければならない。

何故なら、暗殺イベントが発生しやすくなり、ゲームクリアが難しくなるからだ。


例えば、婚約式前に、ピンク色の髪のメイドが盗んだ印象は宰相に渡っていたりする。

宰相は、偽造した様々な書類に本物の印象を押して、膨大な金額の国の予算を着服するが、これを見逃さなければならない。

下手に正義感を出して宰相を問い詰めようとすると、宰相の罠にはまり暗殺されゲームオーバーとなる。

真面目に政務をこなせばおかしいことに気づくが、優柔不断な君主は気がつかないので、プレイヤーはそれを演じなければいけない。


これは、他の貴族でも同じだ。

宰相の言いなりになって、王都民や各貴族の領地の税金をあげて、懐を肥やしていく。

これも、好きにさせなければ、ゲームクリアが遠のいていく。


そんな中、難関だったのが、ピンク色の髪のメイドの裏切り行為をスルーすることだった。


姫から妃となったブランシュを、更に熱い目で見る青い髪と緑の目の近衛騎士は、ピンク色の髪のメイドに利用される。

何回も何回も甘い言葉で、ブランシュ妃を誘惑するように誘うのだが、そのシーンを目撃しないようにしないといけなかった。

それなのに、やたらと、行く先、行く先で、その手のやりとりを行っているので、城内、外出先とどこに行くにしても注意する必要があったからだ。

目撃してしまうと、焦った近衛騎士に階段から突き落とされたり、ばれると自分の命が危ないピンクの髪のメイドに毒を盛られたりして、ゲームオーバーになる。


最終的に、プレイヤーの陛下が息子の王子に討伐され無ければいけないので、そのどちらが欠けてもゲームオーバーとなる仕様だ。

そのためには、回避できないイベントを乗り切る必要があるのだが、これからロードして行うイベントがタクトを憂うつにさせていた。


<<ポイントがあります。ポイントを選択しますか?>>

<<はじめから>>

<<セーブポイント1婚姻の選択前>>

<<-----:------>>


<<セーブポイント7大広間の説明会>>

<<セーブポイント8婚約式の後>>

<<セーブポイント9婚姻式の前>>

<<セーブポイント10陛下の死の前>>

<<セーブポイント11優柔不断な君主確定>>

<<セーブポイント12姫とのトラブル後>>

<<セーブポイント13王子が生まれる前>>

<<セーブポイント14王子の名づけ>>

<<セーブポイント15王子3歳誕生日イベント前>>

<<セーブポイント16王子のともだちイベント前>>

<<セーブポイント17近衛騎士の横恋慕イベント前>>

<<セーブポイント18宰相の策略の前>>

<<セーブポイント19断罪前>>


「セーブポイント19断罪前 を選択する。」


<<セーブポイント19断罪前 をロードします。>>

<<よろしいですか?>>


「ロード」


足元から光が広がり、舞踏会場の扉の前に立っていた。


「無実とわかっていながらも、断罪しなければいけないことはわかっている。

分かっているけど、泣かせたくない。」


舞踏会場の大きな扉の前には、宰相と男爵から家格が上がったホソウクラン伯爵がいた。

その周りには甲冑を着た兵士が数人いる。


舞踏会場から楽し気な音楽が流れているが、まだダンスは始まっておらず皆歓談しながら陛下になってから10年がたったタクトを待っているはずだ。

そして、その中には、エスコートされずに一人で舞踏会場入りをしたブランシュ妃もいる。


セーブポイント19断罪前 で、ブランシュ妃は宰相の罠にはまったのだ。


断罪前のセーブ前、タクト陛下の周りに、宰相、ホソウクラン伯爵、カイコクラン伯爵がいた。


タクトは私室に向かっているのだが、この三人は当然のように周りに侍っていた。

君主になったタクト陛下は、王子用の私室ではなく、君主用の私室を使用するようになっていた。

王子の部屋は現在9歳になる王子が使用いている。


「即位十周年のパーティーのために、我々は多くのものを献上をさせていただきました。」

白をベースに金の刺繍、ボタンには高価な宝石を使用した裾が太ももまである豪華なジャケットを着たカイコクラン伯爵がにこやかにタクト陛下に喋りかけてきた。


「そうか。

カイコクラン伯爵が献上してくれた生地で奇麗なドレスができたと、ブランシュも喜んでいた。」


「そうでございましょう。

最上級品をお持ちしておりましたので、おや?」


「どうしたんだね?

カイコクラン伯爵。」


「宰相様。

いつも陛下の部屋の扉前には近衛騎士がいるのではないのですか?」

凝った木彫りで装飾された大きな観音扉のあいた隙間を指さしながらカイコクラン伯爵が答えた。


確かに私室の前にいつもいるはずの近衛の姿がなかった。


「もちろん、いるはずだ。

だが、どうしたことだ。

誰もおらず、陛下の部屋の扉が少し開いているではないか。

我々の中で一番若いホソウクラン伯爵が、先に入って様子を見てくれ。」

宰相の口調はまるでシナリオを読むような口調だ、いや、シナリオ通りなのだろう。


「わかりました。」

そう言うと、ホソウクラン伯爵は観音扉の間の隙間に手を添えてそっと押し中を覗き込んだ。


「宰相様。

誰もいないようですが、どうしますか?」


「中に入ってみましょう。」

宰相がそう言うと、まずホソウクラン伯爵が先頭に立ち、宰相がタクト陛下の背を押す形で後に続き、その後ろにカイコクラン伯爵が続いた。


私室の中は薄暗く、隣の寝室から少しだけ明かりが漏れているのが見えた。


前陛下の死後、君主用の私室を改装し、寝室を隣に移し王妃との兼用にしてある。

寝室の隣は王妃用の現在ブランシュ妃が使用している私室となっている。

この3つの部屋は中で繋がっている。


「誰かいるようです。」

寝室につながる扉から明かりが漏れているが、よく見るとその扉の前に誰かがおり、すき間から中を覗き込んでいるようだった。

4人が足を止めると、扉の前の人影が振り向いた。


ブランシュ妃付きのピンクの頭のメイドだった。

「へ、陛下。

こ、こちらに来られてはいけません。

お願いいたします。

その、ブランシュ妃が誰も入れないで欲しいと。」

メイドは小声で話ながら、焦って膝をついてピンクの髪の頭を床につけた。

タクトには、このメイドが下を向いて悪そうに笑っているのが予想できた。


メイドがひれ伏したため、扉の隙間から少しだけ中の様子が見えた。

そこには、青い髪の近衛騎士が、緑の瞳を切なそうに細めて、ブランシュ姫の寝ているベッドに座り寄り添っていた。


「なっ!」

声を出そうとしたところを、宰相が自分の手でタクト陛下の口を塞いだ。


「大きな声を出してはいけません。

大きな声を出すと、他のメイドや侍従が集まってくるかもしれません。

そうなりますと、ブランシュ妃のみならず、陛下の威厳が損なわれるかもしれません。」


実際には、ピンクの髪のメイドにそそのかされた近衛騎士がブランシュ姫の寝顔を覗き込んでいるだけなのは分かっていた。

分かっているのに、ここで騒ぎ立てると、後々宰相に傀儡にもなれない君主として暗殺されゲームオーバーとなるので我慢するしかない。

「ゲームが落ちたときの次くらいには辛いな。」

宰相が塞いだ手の中で、呟いてみたが、宰相は何の反応も示さなかった。


かわりに、後ろにいたカイコクラン伯爵が、後ずさりながら 部屋から出ましょう と提案してきたので、5人は私室を出て、観音扉を閉めた。

観音扉の前で、メイドがしきりにピンクの頭を下げていた。


「申し訳ございません。

近衛騎士様とブランシュ妃様は以前から逢瀬を続けられていて、お二人に命令されて逆らえずに見張りをしておりました。」


そんなわけはない。という言葉をぐっと飲み込んだのだが、そんなタクト陛下の様子を憐れむ目で二人の伯爵は見ていた。

そして二人は示し合わせたように言うのだ。

まぁ、前もって示し合わせていたのだろう。


「もうじき、陛下の即位十周年祝賀パーティーがございます。

そこで、皆の前で、このことを追求されたらいかがでしょう?」


「それはよい考えです。

下手に証拠を集めて長々と裁判をするよりも、皆に分かりやすく、罰もすぐに下せます。

こうして、このメイドと我々という証人もおりますし、なんといっても陛下ご自身が目撃されております。」


「タクト陛下。

私もその案がよろしいかと思います。」

宰相のシナリオ通りに展開されたようだ。


そして、今、舞踏会場の扉の前に立っている訳だ。


宰相が兵士に頷き、扉を大きく開けさせると、音楽がやみ、静寂が広がった。

観音扉の向こうは広めの半円の壇上になっており、そこから下に続く広めのステップの段が10段続く階段がある。


壇上の中央に進み出ると、階段のすぐ下にいるブランシュ妃が不安そうな顔をしてこちらを見ていた。

銀の髪は後頭部の下側で飾りのある網の中に包み込まれており、両耳側ではおくれ毛が揺れている。

潤んだ薄いグレーの瞳がタクトを見つめているのが、とても痛々しい。


そんなブランシュ妃を少し離れた位置で貴族たちが囲むように立っているのは、断罪パターンでおなじみの配置だ。


「間違いだらけの世界だ。

だが、しかたない。

いや、こんな事はしたくない。

推しを断罪するなんてしたくないんだ。

だが、言わなければいけない。」


壇上の中央から数歩進むと、すぐ後ろにいた宰相と、その両後ろにいたカイコクラン伯爵とホソウクラン伯爵も後に続いた。

タクト陛下は階段の一歩手前まで来て叫んだ。

「ブランシュ妃、あなたとは離婚する!」

大声で叫んだ後、小声でつぶやく。

「・・・ああ、言ってしまった。」


ブランシュ妃はもともと色白だが、顔から血の気がぬけて、青白くなっていた。

気丈にも涙をこらえているが、立つのがやっとという感じだった。


「陛下、何故、そのようなことを。」

やっとのことで絞り出した声だとよくわかる。


「本位じゃないんだ。

ゲームオーバーを避けるためには仕方ないんだ。

近衛騎士とあなたが一緒に寝室にいるのを目撃した。

メイドが二人は何度も逢瀬を重ねていたと証言もしている。」

タクトは苦し紛れにとりあえず本音と断罪の言葉を混ぜながら説明を加える。


「「我々も目撃しております!

言い逃れはできませんよ!

ブランシュ妃!!」」

後ろにいたはずのカイコクラン伯爵とホソウクラン伯爵が前に出てきて、叫びながら階段を数歩おりていた。


この流れだと、あの二人がブランシュ妃を押さえつけそうだと感じだタクトは二人より先に階段を駆け下り、ブランシュ妃の前に立った。

周囲の貴族たちが固唾をのんで成り行きを見守っている。


「ブランシュ妃、あなたに国外追放を言い渡す。

すぐにここから立ち去りなさい。

いや、本当はずっと一緒にいたいんだけど。

ごめん。」


ブランシュ妃は眼に涙を貯めながらタクト陛下に近づくが、そこに二人の兵士が両側に割り入り、ブランシュ妃の前で剣を交差させた。

カッチーンッッッッ

面白いくらい冷たい金属音が響く。

ブランシュ妃の瞳に溜まっていた涙が、堪えきれずこぼれ落ちた。


「俺も泣きたい。

でも、連れていってくれ。

丁寧にだ。

乱暴はするな。

荷物もできるだけ多く持たせるように。

近衛騎士は青い髪の奴以外が警護するように。

馬車は一番大きなものを使うんだ。

専用のメイドはピンクの髪じゃない方をつけるんだ。

それから。」

連れていかれるブランシュ妃の後ろ姿に、しつこく声をかけるタクト陛下に、階段から降りてきた宰相が声をかけた。


「陛下、罪人に情けは不要です。」


罪人はお前なんだが。という言葉を飲み込んで肩を落としたが、周りの貴族たちをみて態勢を整えた。

ここで、泣きわめいたり、怒りを表すようでは、ゲームオーバーまっしぐらになる。

「宰相、音楽を流すように伝えて、ダンスを始めるように。」

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