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討伐される暴君作成ゲーム  作者: かさのした
11/48

11.二人の従者

ゲーム内で10日ほどが過ぎ、婚約式の3日前になった。


書類仕事に衣装合わせ、陛下のお見舞い、そして、イベントの確認と忙しく動き回った。


ゲーム内の世界では、この国の数十年ぶりの王族の婚約式でお祭り騒ぎになっている。

あちらこちらから観光客が集まり、商人が集まり、大道芸人が集まり、特に王都の中央広場が賑わっていた。


王城から王都の中央広場を通り、その反対側にある聖堂までの道がきれいに飾られ、その近辺を多くの甲冑を着た兵士が巡回している。

王都の夜の治安の悪さが少し改善されたようだが、その分王都から少し離れた町や村にしわ寄せが行っていると言う噂も流れている。


そして、4週間前に行った会議で「婚約式に参加される貴人が通りやすい道路を作ります」という宣言通り、ホソウクラン男爵による舗道の突貫工事が人海戦術で行われ、隣国から王城までの道、約300kmが整備された。

本格的な整備は領地内の100km、そこから王都近くの整備された道までは、街中を通ったり整った道も多いため、主に途中、途中の未整備の道を修復したようだ。

それでも、約2週間ちょっとで整備するなんて、どれだけの人と金をつぎ込んだのか、明細は分からない。

その道を通ってきただろう地方領地の諸貴族、隣国の貴賓が続々と王都に入り、そして入城している。


そして、いくつかのフラグからのストーリーも進行した。


クラウドがレアリアのプロポーズを受けた場面に出くわした。

と、言っても、分かっていることなので、忙しい中そのイベントを見るために、愛馬であるソードの様子を見に行くとこじつけて、従者二人を無理に伴い厩に向かったのだ。

厩に向かう途中の人気の少ない場所で二人のそのイベントが行われていた。


「クラウド様。

私に手を出したのですから、責任取ってください!」


「わかった。」


そう言って二人が手を取り合っていた。

回り一面に派手に花々が咲き誇っているのが見えた気がした。

イベントが発生するということは分かっていたのだが、タクトは二人がこんな様子だとは思わなかった。

かわいらしいメイドと王子殿下の私室の警備を行うほどの腕を持つ兵士との真面目なイベントだと思っていたのだ。


「手を出した、わかった、って。

おまえたち、このゲームストーリー自体は年齢制限設けてないからな?

プレイヤーから見える場所でやってないだろうな?」

思わずNPCである二人に注意したが、よく考えたら、シキがそんなヘマをするはずがないと思い至った。


「で、殿下!

失礼いたしました。」

手を取り合っていた二人が、急いで手を離すと横並びになり、慌てて膝を折って頭を下げた。


後ろにいた長髪の従者が、コホンと咳払いをし、真顔で右側から耳打ちをしてきた。

「現在、先ほどのレアリアの言葉が、巷でプロポーズの言葉として流行っているようです。

なので、内容自体に事実が入っているかどうかは、本人たちしかわからないかと。」


タクトの表情が抜け、顔の前に、スンっと擬音が入ったような気がした。

「なんだ、その設定。

それ、絶対、将棋倒しのイベント考えた奴の構成だろう。

不具合として報告しておくことにしよう。」


短髪の従者も、コホンと咳ばらいをし、こちらも真顔で左側から耳打ちをしてきた。

「タクト殿下とブランシュ姫にあやかって、お二人の婚姻式の後に婚姻を上げようというものが多いようです。」


両側から、目の下に相変わらずクマがあるとはいえ、見目麗しい金髪の従者に挟まれて、両側がキラキラとしていることに気がついた。

「そう言えば、2巻の冒頭で悪役令息が双子の従者に挟まれていたな。

性別が違うけど、シチュエーションはいいんだけど。

だから、俺に二次創作は無理だって。」


二人の従者はそのまま、声をそろえて同じことを言った。

「「何事も人にまかせていらっしゃる殿下が、ご存じないのは無理のないことか。」」


タクトは思わずため息をついた。

「優柔不断設定だから仕方ない。

もう少しの辛抱だとは言え、奇麗で優しかったやつらに言われたらしんどいな。」


タクトのため息を吐く音を聞き、レアリアとクラウドがさらに頭を下げた。

「も、申し訳ございません。

殿下をお守りする身にありながら、このように腑抜けた場面を、、」


そんなクラウドの必死な言葉をさえぎって、手をひらひらさせた。

「いいよ。

おまえらの子どもが生まれたら、俺の子の遊び相手にでもなってやってくれ。」


「「そ、そんな。恐れ多いです。」」


声を揃えて恐れ慄く二人を背に、タクトは厩に向かった。

ここで断られても、ゲーム的にはいずれそうなるから問題はない。


厩に続く回廊の屋根や厩番の小屋に遮られて、タクトの執務室からソードのいる厩は見えない。

だが、その上の陛下の執務室からは、建物の隙間からちょうどその場所が見える。


タクトはソードの小屋に入る前に、頭を半分だけ振り返らせ、後ろにいる二人の従者の隙間から陛下の執務室の窓を窺うように見た。

陛下は寝室で寝たきりで誰もいないはずの執務室に、誰かいる。


「ここで、少しずつ腹黒さが現れてくるところか。」


もう1つのイベントも無事に発生しているようだ。

品の良い服を着た老年の宰相とピンクでふわっとした髪のメイドがこちらを伺っているのを確認できた。


ここでは気がつかないふりをして、近寄ってきた馬番に案内され従者二人と一緒に厩に入り、ソードと戯れた。

イベントの進行を確認しつつ、ストーリーを進めていると夜になっていた。


食事後、いつものようにタクトの寝支度を整えた従者二人は、扉の前に並んで立ち一礼と挨拶をして出ていった。


「視点変更」

二人が出ていったすぐ後、早速、外側から王子の私室の外壁が見える位置に視点を変更する。


王子の私室と横につながる寝室の方は、しっかりとカーテンが閉められており、私室の方は明かりが少し漏れている。

自分自身がいるのだが、カーテンが厚いため中の様子は見えなかった。


隣の従者の控室にはカーテンが無く、窓とは反対の廊下に出る扉付近で椅子に座っている長髪の従者の姿が見えた。

従者の私室の方もカーテンはついていないが、明かりが消えているので中の様子はわからなかった。


王子の寝室の隣は王子妃の寝室で、そこから王子妃の私室に繋がっているが今は誰も使っていない。

ブランシュ姫は今はまだ客間を使用しているからだ。

だが、カーテンの隙間から明かりがチラチラと漏れているのが見える。


「視点変更」

王子妃の私室に視点を変更すると、明かりのランプを持ったメイドがいた。

ランプの明かりがチラチラと揺れていたようだ。

メイドは、衣装扉を開け、ドレスの確認をしている。

婚姻式の後にブランシュ姫が使用するようになるので、こんな遅くまで用意をしているのだろう。


「ピンクの頭のメイドじゃないな。

そうだな。

このタイミングで、この部屋では何もなかったはずだから、通常業務をこなしている感じか。

それより、従者の部屋が暗くて見えないのが気になるな。

見えないのは仕方ないか。

時間も無駄にしたくないし、寝よう。」


タクトは視点を戻し、寝室のベッドに横になって眼を瞑った。

すぐに夜が明けたが、朝方にしては、差し込む日が短い。

日が高く登っているということだ。


いつも起こしに来る従者が来ていない。

「やっぱり、昨日の夜にイベントが発生してたのか。」

ベッドの横に置いていたシャツとズボンに着替え、私室へのドアを開けるとすぐに宰相が立っていた。


「殿下、おはようございます。

今朝はゆっくりだったようですね。

2日後には婚約式が行われますので、緊張されて眠れませんでしたか?」

にこやかに、穏やかに、優しそうな笑顔を向ける宰相だったが、その笑い顔が腹黒さから出ているのを知っている。


「宰相、どうしてここに?

俺の従者たちはどうしたんだ?」


老年で品の良い服を着た宰相が、にこやかな顔を悲しそうな表情に変え残念そうに答える。

「実は、馬番が、殿下の愛馬がいきなり泡を吹いて倒れたと知らせてきました。

あの者たちは、昨日殿下の愛馬のソードに毒を盛ったようなのです。」


タクトの表情が抜け、顔の前に、スンっと擬音が入ったような気がした。(2回目)

「そんなことはないとは知っていても、ストーリーを進めないといけないんだろうな。

まあ、ここまで、お笑い系の理由じゃなくてよかったよ。」


宰相は、悲しそうな顔を作り、首を左右に振った。

「信じられない気持ちは理解いたします。

殿下が幼いころから仕えてきた従者ですから。

しかし、馬番があの者たちがソードに何かを舐めさせていたと証言しています。

そのようなものを殿下の近くに置いておく訳にはいきません。

陛下が、今、あのような状態であるときに、殿下の身に何かあっては大変です。」


タクトがじっと宰相を見つめると、宰相は再び笑顔を作り優しげな声をだす。

「殿下を一番に心配されているのは陛下です。

その陛下にこれ以上の心配をかけることは成りません。

そのため、殿下の従者二人を今朝拘束いたしました。

今は、地下牢に入れております。」


「地下牢に?二人とも?」


「はい。

二人共です。」


「私が、理由を聞く。

地下牢に案内してくれ。」

宰相の横を通り私室のドアに向かおうとすると、宰相に肩を掴まれて止められた。

自分の肩を掴む宰相の手を見て、そこからさらに宰相の顔を見上げる。


宰相は、にっこりと微笑みを返した。

「あのような、名もなき者たちを、殿下が気にかける必要はございません。」


「名もなき者、か。」

従者二人が冤罪で地下牢に入れられるこのイベントは、プレイヤーが従者の名前を一度でも呼べば発生しないイベントだ。

最短ルートを通るためには、いずれ従者二人にも敵に回ってもらわなければならない。

そのためには、二人にはこのタイミングで一旦途中退場してもらうのが最善だ。

わかっていた、ゲームストーリー的に。


「ああ、そうだな。

俺は今まで、一度も従者たちの名を呼ばなかった。

最短ルートのために仕方なかったんだ。」

従者の名前はプレイヤーが自由につけることができる、最初に名を呼べばその名になるが、このイベントのために我慢していたのだ。


「しんどいばかりじゃ、ストーリーを進められないな。

途中でお笑い要素があるのは仕方ないか。

でも、あのプロポーズの言葉は不具合報告するけど。」

タクト殿下が肩を揺らすと、宰相がゆっくりと掴んでいた手を離した。

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