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第4話

第4話です、今回はあゆみさんのお話です。


佐々木 孝章 

       物語の主人公、家族に愛されず基本ほぼ全てにおいて負け組。

       周りからは変態と言う認識が強く、趣味はAV鑑賞。

       プロローグで沙港高校を退学させられた。


本堂 祐樹 

       孝章の幼馴染で、孝章を煽る事も多いが基本的には良き友人。


二ノ宮 真衣 

       父親が大会社社長、母親がPTA会長のお嬢様。

       孝章を下着泥棒事件の犯人と告発したが自作自演だった。


二ノ宮 剛三 大会社カップラーメンやインスタント食品で大もうけした

       『ニノミ屋』の社長、真衣は娘。


佐々木 千尋 

       孝章の事を照れ隠し等一切なしで本気で嫌って避けている妹。


佐々木 早苗

       孝章の母親、夫を亡くしている、依存症の毛があるがそのくせ他人を信用できない人物。


 フォールンアントラーズの仲間達


霧崎 優実 フォールンアントラーズのリーダー的ポジション。

      気配りの利く人物で、二ノ宮剛三にはめられ家族を失った。


月守 聖  酒ばっか飲んでる美人だが汚い女、女子高生。

      喧嘩と麻雀が強く、麻雀倶楽部で働いている。


鈴木 次郎 フォールンアントラーズのチーム名の命名をした男

      プロのハッカーで、理屈っぽく、テンプレと言う言葉がよく似合う。


燈山 卓 とあるバーでウェイターをしている。

     体育会系でノリが良い男。


野木 あゆみ 水商売をしている、美人で巨乳でのんびりした女の人。

母親と言う言葉がよく似合う人。


第4話


結局この後聖の酒に付き合わされ。

酒に慣れていない俺はビール缶3本程で酔って眠りについてしまった。

ちなみに起きた時の捨てられた缶の数からして聖は軽く倍以上は飲んでいるだろう。


結局ソファで寝てしまったので、起きるとすぐ鈴木の嫌味が聞こえてきた。

聖はソファでずっと寝ている。

俺にはまだ仕事はないので夜の街の仕事を色々と見て回りたいのだが

霧崎さんは忙しそうだし、鈴木もPCの事務作業があるらしく

聖自身は暇そうだが肝臓が忙しそうなので。

今日は一人で夜の街を見学しようと思っていると。

「あっ~、孝章君こんばんわぁ~ふわぁ~」

扉を開いて欠伸をしながら挨拶してきたあゆみさんの姿だった。

正直小動物が欠伸をしている様でとても可愛らしい姿である。

別に女性の中では背が低い訳ではないと思うが、それが小さく見えてしまうくらいの可愛らしさであった。

「昨日はお疲れのようでしたから、誘いませんでしたけど~

 今日こそ私の働いてる風俗店へ見学に行きませんか~」

風俗店...俺が裏社会で働く候補で最有力だった候補。

そしてここに行くのは小学校6年からの夢だったのだ、いや本当に、マジで。

「良いんですか、連れてってくださいお願いします」

「おっ~張り切ってますね~じゃあ今日は私の風俗店に行きましょうね~」

「は~い」

俺は既にあゆみさんの飼い犬の様に、後ろをとことこ付いていく気満々だった。

そんな俺の姿を見て、一人が起き上がって大きな独り言を言った。

「すっかりビッチに飼いならされやがってこれだから男は!」

それを聞いていたあゆみさんは、にこやかにこう返す。

「あらあら~、聖さん嫉妬しちゃってますね~

 聖さんも普段張り詰めてばかりいると糸は切れてしまいますから

 孝章君と一緒に寝て優しくして貰えば緩むんじゃないんですか~」

「なっ........よっ..余計なお世話だ!!

 おまえは今日も男に媚でも売ってろ、そして孝章は三回死ね!」

お...おまえ二回じゃねーのかよ....。

あゆみさんのおかげで勝手に聖が怒ってしまったようだ。

男に尽くすあゆみさん、男は屈服させるものだと思ってる聖。

同姓のMとS、二人の仲がそこまで良くないのは分かる気がするな。

昨日仲間の証として握手と酒を飲み交わした相手だが今日はあゆみさんに付いて行くとしよう。

だって風俗店が待ってますから。


段々見慣れてきた夜の街を二人で歩く。

あゆみさんの後ろを付いて行くとあゆみさんが思い出したように振り返り。

「そういえば私店での名前があるんですよ、シェリルって呼んでくださいね~」

「ど....どこの歌姫ですか」

「まぁ一応あるって事だけです~、あゆみって呼ぶ人がほとんどですし

 後輩は野木さんって呼びますから~、孝明君はあゆみって呼んでくれて大丈夫ですよ~」

それ店の名前の意味はあるのだろうか。

あゆみさんの事だから自己紹介の時うっかり本名を言ってしまい

店が用意した名前よりも本名の方がしっくりとくると言う事で皆そう呼んでいるのだと

勝手な想像をしていると、何時の間にかあゆみさんの風俗店に着いていた。

「おっ!あゆみが来たぞー、あれ今日は男連れ.....」

店に入るなり、おじさんが酒で顔を真っ赤にしてこう言った。

しかし本物の酔っ払いの親父を見ると聖の酔っ払っている姿など可愛く見える。

元がよければ崩れてもそこまで悪くはならないが、元も悪くて崩れたら最悪と言う事だろう。

「えっー!野木さん男の人連れてきたんですかー、えっかなり若い!この人とどういう関係ですか!」

すぐに、あゆみさんの後輩と思われる風俗嬢が顔を出す。

「この人は同じマンションで暮らしている方なんですよー、最近引っ越してきて職場に困ってるので

 ここを見学させてあげてくださいねー、御代は頂かない事にしていますから私が何とかしまーす

そう言うと少し前まで余所者である事が分かる俺を、すぐに歓迎して。

椅子に座らせて、今回はサービスでワインとつまみが運ばれてくる。

ちなみにこれはあゆみさんの驕りらしいのでよくお礼を言った。

「ここはー男性客と女性客用の店があってここは男性客用の店なんですよー

 孝章君が働くなら女性客用の店ですねー」

「それで孝章君は彼女いなくて童貞なのー可愛い!

 ここだとおっさんとかヤリなれた女たらししか来ないから 

 孝章君みたいな初心な子食べてみたいんだよね」

「えっ....は..はい?」

「やばい!やばい!この反応!イイ!!」

俺はあゆみさんの一生懸命な講義が右耳から左耳に流れて行き。

あゆみさんの後輩の風俗嬢に食べられそうになっていた。

「こらー!孝章君が困ってるしまだ食べちゃ駄目ー!

 孝章君はあくまで見学で来たんだよー!

 それに体を合わせるのはどう考えても私の方が先ー」

あゆみさんフォローしてくれたと思ったら、最後の一言で台無しに。

しかしそれが何故か効いたのかこの場だけは。

「ちぇっ....まぁ野木さんがそういうなら...二番出汁を!」

「変な事言うなら、別のお客様を相手してくださいー!」

といった感じでゆっくりと仕事やお店のことを話しながら

こんな感じの会話が続いた。

聖はどちらかと言うと同姓と接するような感じだが。

基本女性慣れしていない俺は、楽しくはあるが緊張する時間だった。r


「最後はルームに行きましょう」

ルームと言うのはこの風俗店の性行為をする場所の事だ。

別にあゆみさんと行為をするわけではなく、あゆみさんが言うには一応案内として行くだけ......

だと思う。

「野木さん私が案内しても良いですか?」

「だから駄目ー!貴方の事だからそのまま一晩中孝章君のことを食べるに決まってるからー」

「うそー!私の完璧な策がバレるなんて!!」

とりあえず野木さんの後輩は俺の事を食べようと必死になっているので。

身の危険を感じて、俺はあゆみさんとルームに入っていった。

ルームはラブホみたいな内装になっており、天井には大きな鏡が張ってあり。

回転ベッドになっている、中々面白い内装だ。

俺が面白がって飛び跳ねる事でベッドを回転させていると、あゆみさんは優しく笑う。

「私の後輩も言ってましたがやっぱり孝章さんは可愛いですねー

 普通のお客さんはベッドや鏡でここまで喜んでくれたりしないから何か嬉しいです

 そこでくつろいでてください、おやつを持ってきますのでー」

今日一日は身の危険を感じる事も多いがとても楽しい1日だ。

俺はやはりここで働くことが向いてるのかもしれない。

そんな浮かれた気持ちもあって、俺がベッドで飛び跳ねていると。

「はい、おはぎです」

「風俗店のおやつがおはぎってのも斬新ですね....」

「駄目でしたか、別に裁縫針なんて入ってませんよー」

「どこの田舎の村の話ですか.......」

味は中々美味だった、勿論最初から針が入ってるなんて思ってもいないし入っているわけがない。

俺はおはぎを食いながら、あゆみさんにふと気になった事を質問した。

「あゆみさんはどうして俺にも優しくできるし

 客の男の人全てに平等に優しくできるんですか?」

正直踏み込み過ぎかもしれないが、どうしても聞きたかった事だ。

「そうですねーあれは二ノ宮家に私がはめられてしまった時の事ですね

 私にはこの世で一番愛していると言える男の人がいました私の婚約者です。

 彼も私の事を好きでいてくれると言ったから婚約しました

 私はニノミヤで働いていたので結婚を理由に辞表を提出しようとしました。

 しかし私は重要な企画のメンバーでしたので抜ける事を企画の終わる3年後まで待って欲しいといわれましたが

 婚約者に俺と仕事どっちが大事なんだ、そう投げかけられると私は迷いなく

 無理を押し通して辞表を提出しました。」

突然過去のことを語り始めるあゆみさん。

俺は黙って彼女の話に耳を傾けていた

「しかしそれでもう一人企画のメンバーがいなくなる事になり、その企画は潰れてしまいました。

 それに少し罪悪感を覚えましたが、私には婚約者しか見えてませんでした。

 今思うとそれがいけなかったんでしょうね。

 最後の出勤日、忘れもしません。

 次の日何故かもう一人の抜けた企画のメンバーの男の人が私と不倫をした事が噂されていて

 しかも抜けた男の人は不倫を認めていて使ったラブホテルのレシート張ってありました。

 勿論全てが捏造です。

 幸せにしてくれるはずの一番愛した婚約者は私の言葉に耳を傾けず婚約を破棄し私を捨てました」

質問からそれた事を言っているが俺はそれを指摘せず黙って聞いていた。

俺、霧崎さん、聖、そしてあゆみさん。

この全てに通じるのは二ノ宮に人生を潰され、近しき人に信じて貰えないと言う事だ。

しかも相手は婚約者で自分が愛していた人に裏切られた、ショックは俺よりも大きいだろう。

「それから霧崎さんに拾ってもらってこちらで働くようになりました。

 孝章さん、私自身は二ノ宮家を憎んでいるわけではありませんよ

 この世界には私や私以上に色々な物を抱えた人がやってきます。

 皆辛いんです、そんな時私は何も言わずただ抱きしめてあげたい。

 体を重ねる事や私が抱かれる事で落ち着くならそうしてあげたいんです。

 私はここの皆のママになりたいんです、皆の悩みを消すことはできないですが

 包んであげる事はできるはずだから....本当はあの人に尽くしてあげたかったですけど彼は私を必要としませんでした。

 でもここに来る方は私を必要としてくれる、私もこの街の歯車として必要とされている

 だから私はここの皆に優しくしたいんです」

俺はあゆみさんの話を聞いてさっきまで考えていた

自分は風俗に向いていると言う考えを撤回した。

確かに表の世界から見ればあゆみさんはビッチと悪い名で呼ばれてしまうかもしれない。

けど彼女はその仕事に誇りを持ち、自分の考えをしっかりと持っている。

しかし俺はそんなものは一切なく、自分の事しか考えていない。

自分の甘さに落ち込んでいると、あゆみさんは突然俺を抱きしめて。

「孝章さんも、ここに来るまで辛かったですよね

 今なら誰も人はいませんから泣いていいんですよ

 今日の事は私の胸にしまって置きますから」

学校を追い出され、家を追い出され、友人との関係もなくなり。

2日間飯も食わずさまよい続け、気づけば表の世界から裏の世界へやって来た。

色々な事が起こり過ぎて、頭も混乱し今まで泣く余裕もなかったが

気づけば俺はあゆみさんの胸で泣いていた。

声を出して馬鹿みたいに泣いた、普通男が泣くなんて引いてもおかしくない状況だが

あゆみさんは優しい笑顔で俺の頭をそっと撫でる。

この人は俺の...いや皆の母親なんだ。

俺はあゆみさんの胸で泣いている間は、まるで子宮の中にいる赤子の様に安心していた。


次の日の夕方、夕日がカーテンの間から差し込むと俺は目覚める。

隣にはあゆみさんが寝ている。

俺にとって初めての女の人と過ごす夜は、思い出してもやましい気持ちは生まれず

ただただ心が暖かくなる夜だった。


第5話へ続く

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