第5話
高知に着いた僕は空港で彼女の両親に迎えられた。
「井上梨紗の父です。娘から真君の事は聞かされていました。
若いのに将来のことをしっかり考えていて、娘のことをいつも
大切にしてくれる心優しい青年だと。私も今日会ってそう感じました。
娘のためにこんな遠くまで来てくれたのだから・・・」
お父さんはそう言うと目に涙をにじませた。お母さんはただ涙を流していて
何か言おうとしても言葉が出ない状態だった。
僕達は挨拶もそこそこに墓地へ向かった。
無言でお父さんが運転する車から彼女の生まれ育った町並みをぼんやりと
見ていた。四万十川が流れる自然の豊かな町だった。
途中で花を買った。墓参りには場違いだが彼女が大好きなピンクのスイートピーだ。
墓地に着いて霊前に立ち線香をあげた瞬間僕のすべての思いが涙になって溢れてきた。
「梨紗、ただいま・・・。ごめんな。一人ぼっちにしちゃって。」
それだけやっと言うと梨紗が眠っている墓石にそっと手を置き涙が枯れるまで泣いた。
後ろでずっと見ていたお父さんが僕の肩に手を置いて、
「私達は家に戻っているから梨紗と二人で話しなさい。落ち着いたら電話くれれば
迎えに来るから落ち着くまで家にいると良い。」
そう言い残すと彼女の両親は去っていった。
それから何時間が経っただろう。辺りはすっかり日が落ちていた。
僕はお父さんに連絡して彼女の実家に向かった。
夕食と入浴を済ませて両親に彼女の使っていた部屋を案内された。
その部屋はまだ誰か使っているのかと思うくらい整理されていた。
「私達もまだ梨紗がいつか帰ってくるんじゃないかと思って片付けられないで
いるのだよ。」
言われたとおり看護師になるために勉強して使い古された参考書なども残っている。
僕はその時思った。彼女が死んで一番辛いのは僕ではなくて一人娘を志半ばで失った
家族なんだと。
「これ、梨紗が息を引き取っても肌身離さず身に付けていたものなんだが、妻とも相談して
ぜひ真君に持っていて欲しくて。どうかな?」
そう言ってお父さんが差し出したのは、クリスマスに買って
留学前に交換したペンダントだった。
僕はそのペンダントを受け取り強く握り締めた。
そのペンダントを手に僕は翌日両親に別れを告げ高知を去った。




