↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/15

第14話 同名の二つの高校、受話器越しの見知らぬ声、そして十年の隔たりがもたらす喪失感

卒業式の日の午後12時45分——令和8年(2026年)3月初旬。

C棟へと続く渡り廊下に沿って、暖かな春風に乗ってクルクルと舞い落ちる薄紅色の桜の花びらの雨の下で、二十八歳になった俺の心臓は、手に抱えた花束までその拍動に合わせて微かに震えるほど、激しく打ち鳴らされていた。

わずか五歩先の正面には、担任の沢渡先生が微笑みながら立っており、その隣には、卒業証書の入った筒を手に持ち、講堂での卒業式を終えたばかりの十八歳の女子生徒が立っていた。

その子は俺に背を向けて立っており、府中高校の生徒には見慣れた、伝統的な濃紺のセーラー服を着て、長い黒髪を肩に下ろしていた。

十年。

二年生の夏に彼女を必死に探してC棟を走り回ったあの夕暮れから、2016年の3月の朝に静まり返った3年B組の教室で茶色いノートを抱えて号泣したあの日から、そして2023年にノートのタイムラインを乱さないために彼女に近づきたい気持ちを抑え込んだこの三年間から……これらすべての長い待ち時間は、たった一つのこの瞬間のためだったのだ!

昨晩、鏡の前で練習した最高にカッコいい態度を取り戻すため、俺は大きく息を吸い込んだ。

左手で桜とひまわりの花束を抱え、右手で冷たいメロンソーダが十缶入った保冷バッグを提げ、俺はその女子生徒の背後へと足早に近づき、最高の笑顔を浮かべ、十年分のすべての想いを込めて大声で呼んだ。

「あおいちゃん! 待たせたね……。君の軍師長、翔太が迎えに来たよ!!」

その声が終わるやいなや、沢渡先生の前に立っていた十八歳の女子生徒はビクッとしてバッと振り返った。

俺の顔の輝かしい笑顔は……瞬時に凍りついた。

目の前に立っているのは、ぽっちゃりとした可愛らしい顔立ちで、丸く大きな目を驚きで見開いている女子生徒だった。彼女のセーラー服の胸には、三つの漢字がはっきりと刻まれた名札が付けられていた。「町田葵」

彼女は俺の頭から足先まで——パリッとしたネイビーブルーのスーツ、手に抱えた巨大な花束、そしてメロンソーダ十缶の入ったバッグを見て——まるで校庭に墜落した宇宙人にでも遭遇したかのように、完全にぽかんとした表情で瞬きをした。

「えっと……? おじさん……誰ですか?!」

春の風が廊下をビュンと吹き抜け、俺たち三人の間の死のような静寂を横切って、数枚の桜の花びらを巻き上げていった。

「え、えっと……?」

俺の声は完全に裏返り、両足はタイルの上で石のように固まった。「君……君は3年A組のあおいで、一年生の時は1年A組だったよね?! 俺は……鈴木翔太だよ! 三年間ずっと、君と一緒に窓際から四番目の机の中で茶色いノートを書いてて、君に水色のお守りをプレゼントした鈴木翔太だよ!!」

町田葵という名前のその子は、俺の話を聞けば聞くほど、目をさらに丸くした。彼女は沢渡先生の背中の後ろに半歩下がり、目の前のスーツ姿の男のパニックになった哀れな様子に戸惑いながらも、思わずクスクスと笑い出した。

「えっと……私は確かに3年A組の葵ですけど。でも私、ひどい近視だから高校三年間ずっと教卓の真ん前の最前列の席で、窓際から四番目の席になんて座ったこと一度もありませんよ! 茶色いノートも水色のお守りも持ってないですし……。さっき沢渡先生が言ってたように、おじさんは私の母方の従兄なんだと思ってました!」

「な……なんだって?!」

俺の手にあった花束が、もう少しで地面に滑り落ちそうになった。

すぐ隣では、担任の沢渡先生が腕を組み、俺と卒業したばかりの教え子との間のちぐはぐな会話をじっと見ていた。先生は銀縁の眼鏡を鼻筋に軽く押し上げ、目を細めて、悪戯っぽい皮肉な笑みを浮かべて俺を見た。

「ねえ、ちょっと鈴木翔太くん……。三年前、あんたが学校に戻ってきて『母の遠い親戚のあおいって子』のクラスの様子を聞いてきてくれって私に嘘をついたのは、実は他の女の子の情報を探るための口実だったってわけ? それにちょっと待って……『翔太が迎えに来たよ』って何よ? 翔太くん、最近広告代理店で働き出してから、卒業したての女子高生に何か変な趣味でも持ったの?!」

「ち、違いますよ沢渡先生!!」

俺の顔は今や真っ赤から血の気のない真っ青へと変わっていた! 俺は町田葵ちゃんの方を向き、人違いをしたことを九十度頭を下げて平謝りした。彼女が口元を覆ってクスクス笑いながら校庭の同級生のグループの方へと手を振って走っていくのを見送った後、俺はパニックになりながら自分のカバンをガバッと開け、四隅が擦り切れた茶色いクラフト表紙のノートと半分のハートのしおりを取り出し、沢渡先生の目の前に真っ直ぐ突き出した。

「沢渡先生、俺は先生に嘘なんかついてませんし、からかってもいません!! 先生が高校二年生と三年生の時に俺が書いてるのを見たことのある、あの茶色いノートですよこれ! 最後のページを開いて読んでみてください!!」

両手がガタガタと震え、額に冷や汗を浮かべている俺の絶望的な表情を見て、沢渡先生の唇のからかうような笑みは完全に消え去った。

彼女は俺の手から茶色いノートを受け取り、裏表紙のすぐ手前にある最後のページを開いた——そこには、十年前に俺が青いボールペンで書いた文字のすぐ上に、あおいが丸い黒インクで書いた文字があった。

【3年A組からの最後の返事 — 令和8年(2026年)3月に記入】……翔太さんが卒業したのは平成28年(2016年)の3月……そして今日、私がこれを書いて、卒業証書を手に持っているこの日は、令和8年——2026年の3月なんです!! この机は、翔太さんの2016年の3年B組と、私の2026年の3年A組を繋いでいたんです!……

沢渡先生の銀縁眼鏡の奥の目は、2016年の時間で色褪せたページの上に書かれた「令和8年(2026年)3月」という文字——この世の誰も「令和」という二文字をまだ知らなかった時代の文字——を見た時、限界まで見開かれた!

「これって……あおいって名前のこの子の字は、令和という元号が発表される前の2016年の時点で、本当にあんたのノートに現れてたってこと?!」

沢渡先生は、ページにある十年前の乾いた涙の跡にそっと指を触れ、その声は本気で震えていた。「2015年の頃、あんたが3年B組でこの黒インクの文字を読んでるのを、私もこの目で確かに見たわ……。じゃあ、机の中を通じた目に見えない絆の話は、全部本当だったってこと?!」

「はい!! この最後のページで、あおいが3年A組で2026年3月に卒業するって書いてたから、2023年の4月に俺は学校に走ってきて、一年生の名簿を先生に調べてもらったんですよ!!」

俺は頭を抱え、極度の混乱で声が詰まった。

「でも沢渡先生……どうして2023年に先生が学年全体の名簿を調べた時、さっきの町田葵ちゃん一人しかいなくて、しかもその子は俺と一緒にこのノートを書いたあおいじゃなかったんですか?! もしかして……もしかして2023年に俺が学校に戻って先生に尋ねたせいで、無意識のうちにバタフライ効果を生んでタイムラインを変えてしまって、俺のあおいを2026年の府中高校から消し去ってしまったってことですか?!」

「ちょっと待って、落ち着きなさい翔太!」

沢渡先生は眉をギュッとひそめ、茶色いノートを二年生や三年生の頃のページに裏返し、あおいが書いた文章を一行一行注意深く読んだ。

「あんたが様子を聞いたくらいで、現実に存在している人間が戸籍から突然消えるなんてことあり得ないわ! この2026年卒業の学年の名簿は、入学試験の願書提出の時から私が直接管理してるの。今年の全校生徒の中で、さっきの町田葵ちゃん以外に『あおい』って名前の生徒は絶対に一人もいなかったって、百パーセント断言できるわ! この子が学校についてノートに書いたことをもっとよく見てみましょう……」

俺が廊下で心臓をバクバクさせながら足を震わせて立っている間、沢渡先生はあおいが一年生から三年生までに書いた日記のページをパラパラと素早くめくった。

国語の教師である彼女の鋭い視線は、二年生の初めに「学校が西校舎を改修する」ためにクラスを移動したことについてのページや、三年生の初めに彼女が毎日放課後「学校から三億円事件の通りを抜けて十分以上歩いて北口の駅の近くのデッサン教室に通う」ことについて書かれたページをなぞり、そして彼女が「ブレザーの制服」のポケットにお守りを挟んだことに触れた段落でピタリと止まった!

突然、ページをめくっていた沢渡先生の手が完全に止まった。

「西校舎の改修……ブレザーの制服……それに、学校から三億円事件が起きた通りまで歩いて十分?!!」

沢渡先生はバッと顔を上げて俺の目を真っ直ぐに見つめ、その声は息が詰まるほどの衝撃的な発見で震えていた。

「この大バカ鈴木翔太!! タイムラインなんて少しも変わってないわよ!! 最初からあんたが探す場所を間違えてたのよ!! 広島県にある私たちの府中高校には、設立以来『西校舎』なんて呼ばれる建物はないわ!! それに、この子が毎日午後に歩き抜けている、昭和の歴史で最も有名な『三億円事件』の現場は広島じゃないわ……。その現場は、首都・東京の府中市にあるのよ!!」

ドーン!!

雲一つない春の空の真ん中で、目に見えない雷が俺の頭頂部に直接落ちたかのようだった!

俺はその場で呆然とし、両耳はキーンと鳴り、すべての呼吸が胸の中で硬く詰まった。

「府中市……東京の……?!」

「そうよ!!」

沢渡先生はスーツのポケットからスマホをサッと取り出し、その指は画面上で数秒のうちに素早く検索を終え、スマホの画面を裏返して俺の目の前に突きつけた。

「目を見開いてよく見なさい!! この日本には、全く同じ二つの漢字で書かれる『府中市』という名前の都市が二つあるのよ。一つは私たちの広島県の府中市、そしてもう一つは、首都東京の西側にある府中市よ! そしてその東京の府中市にも、『都立府中高等学校』という名前の公立高校があるの——三億円事件の歴史的現場から北へ徒歩ちょうど十分の場所にあり、二年前に西校舎の改修プロジェクトが行われていて、生徒たちはうちの学校のような伝統的な学ランやセーラー服ではなく、ブレザーの制服を着ているのよ!!」

俺は、沢渡先生のスマホの画面にはっきりと表示されている、都立府中高校——東京——の校門の写真とブレザーの制服の写真をじっと見つめた。

その短い瞬間に、十年の時間の隔たりに気づいた時でさえ完全に説明がつかなかった、最後の矛盾したパズルのピースのすべてが、突然、背筋が凍るほど完璧に噛み合ったのだ。

なぜ広島の俺の机には右隅に五芒星の傷があり、あおいの机には左隅に四芒星の傷があったのか?!——学校が十年後に机の天板を新しいものに交換したからではなく、最初から八百キロ以上離れた二つの学校にある、二つの全く別の学習机だったからだ!!

なぜ彼女のC棟には東側と西側の両方のロビーに自販機があり、俺の学校には東側にしかなかったのか?! なぜ彼女はブレザーを着ていて、俺は学ランを着ていたのか?! そしてなぜ、この三年間、二人のうちの誰も場所について疑わなかったのか——なぜならノートの中で、二人とも自分の学校をただ「府中高校」としか呼んでいなかったからだ!!

「十年の時間だけじゃない……」

俺は一歩後ろへ下がり、この世で最も奇跡的でありながら、最も皮肉な真実を悟って、震える手で額を覆った。

「あの時の木の机は……広島の府中高校の2016年の3年B組と……東京の府中高校の2026年の3年A組を繋いでいたんだ!!」

そしてまさにその時、沢渡先生はスマホの画面にある東京の府中高校のホームページのイベントカレンダーを見て、悲鳴のような声を上げた。

「翔太くん!! 今日、東京の府中高校でも卒業式が行われているわ!! 今はもう昼の12時55分——つまり、あのあおいちゃんが東京のC棟の東側ロビーであんたを待ち始める午後1時まで、あとたったの五分しかないのよ!!」

「午後1時だ!! 彼女は今この瞬間、東京のC棟で俺を待ってるんだ、沢渡先生!!」

俺は沢渡先生の手から茶色いノートをひったくり、それ以上一言も発する余裕もなく、ただ元担任の先生に深く頭を下げて感謝を示すと、ノートと花束をきつく抱きしめ、元バスケットボール部の最狂のスピードで、広島の府中高校の校門から飛び出した!!

「早く走りなさい、翔太くん!! タクシーを拾って駅に直行しなさい、二度と約束を破るんじゃないわよ!!」

背後から響く沢渡先生の応援の叫び声は、舞い散る桜の花びらでいっぱいの坂道を全速力で走る俺の足に、さらに火をつけるようだった。

◇

広島県の府中市から、首都東京の府中市へ向かうには、八百キロ以上もある。

町を猛スピードで抜け出すタクシーの後部座席に座り、俺は荒い息を吐きながら、時計の針と競争するために可能な限り最速の移動手段をスマホで狂ったように検索した。

「飛行機か、新幹線か?!」

交通マップアプリの画面には、冷酷で残酷な計算結果が表示された。広島から東京までの飛行時間は一時間二十分ほどだが、広島空港は町から遠く離れた山の上にある——空港まで車で向かう時間、次のフライトの待ち時間、搭乗前の保安検査、そして南の海岸沿いにある羽田空港から東京の西側にある府中市まで電車で一時間以上戻る時間を合わせると……飛行機で行っても丸々四時間かかってしまうのだ!

一方、俺の府中高校から一番近い新幹線の駅まで直行して、すぐに「新幹線のぞみ」——十五分間隔で出発し、搭乗手続きの待ち時間もない日本最速の高速鉄道——に飛び乗ったとしても、東京の府中高校までの全行程には約三時間五十五分かかる!

空を飛ぼうが地上を疾走しようが、同じ名前を持つ二つの都市の間にある四時間という時間は、どうしてもそれ以上短縮できない物理的な限界なのだ!

俺が改札にカードをタッチして駆け抜け、東へ向かう一番早い新幹線のぞみに飛び乗った時、車両の電光掲示板の時計は午後1時30分を指していた。

◇

午後5時55分、俺は東京の府中高校の正門前でタクシーを降り、校庭を突っ切ってC棟へと走った。

東側の階段のロビーは空っぽだった。夕闇の中で赤く光る自販機と、その足元に散らばった数枚の枯れた桜の花びらだけが残されていた——そこは、蒼が三時間俺を待ち続け、二時間前に立ち去った場所だった。

俺の手に提げられたメロンソーダ十缶の保冷バッグは、いつの間にかすっかり生温かくなっていた。十年前、同じC棟のロビーで、冷たさを失った二缶のソーダを手に、俺は自分が見捨てられたと思っていた。今、俺は誰よりも真実をはっきりと理解しているのに、その感覚はあの時と全く同じだった。

「お兄さん、学校はもう閉まりましたよ」守衛さんが俺の方に懐中電灯を向けた。俺は頭を下げて謝り、静かに門の外へと歩き出した。

街灯の下の冷たい石段に腰を下ろし、俺は茶色いノートの最後のページを開き、少し茶色く変色した蒼の黒インクの文字を再び見つめた。

……私がこの教室に入れるのも今日が最後……

彼女の言う「今日」とはいつのことだろう? これらの言葉が書かれたノートは、2016年の3月末の月曜日の朝に俺の机の中に戻ってきた。三年間続いた隔週の法則に従えば、それは卒業式の直後の月曜日の朝——卒業生が最後に書類を受け取るために学校に戻ってくる朝——に書かれたはずだ。

つまり、三日後、蒼は俺の後ろにあるこの学校に戻ってくるということだ。

その夜、俺は府中駅の近くの小さなホテルに部屋を取り、会社に電話をして休暇を延長してもらった。俺のカバンには、午後の新幹線の車内で急いで書き殴った東京への転勤願いがまだ残っていた。

◇

2026年3月初旬の卒業式の日の午後、まさにあの時のように、十八歳の高橋蒼は、答えのない絶望の中で、正午から午後4時までC棟東側ロビーの自販機の前で三時間立ち尽くしていた。

翌週の月曜日の朝、蒼は原本の書類を受け取るために3年A組の教室に戻った。彼女は机の中にノートを見つけ、翔太の最後のページを読み、五行の返事を書き、そしてそれを元の場所に戻した。教室を出る時、彼女の手に残っていたのは、最後のページの写真を撮ったスマホだけだった。彼女はその写真を、青いボールペンの線がぼやけた四角いピクセルになるまで拡大した。三年間。百週間以上。残されたのは一枚の写真だけ。

事務員が2016年度の卒業生名簿をめくった後、「鈴木翔太って生徒はいないわね、高橋さん」と首を振った時、蒼はまるで奈落の底に突き落とされたように感じた。もしかして、すべては自分の想像だったのだろうか? しかし、指が画面を滑り、スマホの画面に映る「鈴木翔太 — 2016年」の文字に触れた時、記憶の温もりが彼が実在したことを思い出させてくれた。

彼女はノートに書かれていた090-38xx-7159の電話番号にかけてみたが、何年も前に解約された番号に電話をかけてきたと、見知らぬ男に怒鳴られただけだった。

高校三年間、蒼は常に北門——北府中駅に最も近く、デッサン教室への近道でもある門——から登下校していた。その月曜日の昼も、彼女の足はいつものように自然とそちらの方向へ向かった。

◇

正門の側で、俺は朝の七時から日が沈むまで門柱に寄りかかり、ブレザーを着た生徒のグループが出てくるのを一人一人見つめていたが、誰の名前も呼ぶ勇気はなかった。俺は彼女の顔を知らない。一度も見たことがないのだ。

東京中の美術大学をシラミ潰しに探して、「あおい」という名前の大学一年生の女子学生を見つけることもできたはずだ。しかしその夜、狭いホテルの部屋で、俺は東京への転勤願いを破り捨てた。彼女は十八歳で、自分の人生の第一歩を踏み出したばかりだ。もし三十歳近い男が、この学校のロビーから別の大学の講堂まで彼女を追いかけ回したとしたら、たとえどんなノートを持っていたとしても、それはもう愛ではない。彼女には自分で選ぶ権利がある。俺はただ一つの道だけを残すことにした。一年に一度、卒業式の日に、彼女が約束した場所へ戻ってくることだ。

火曜日の朝、俺は一番早い新幹線に乗って広島へ戻った。

◇

その後の数日、三月の終わりまで、蒼はそれでも東京の府中高校の正門前に立ち続けた。彼女がそこに立ち始めるちょうど一日前に、一人の男が朝から晩まで全く同じ場所に立っていたことを、彼女は知る由もなかった。

◇

夏が過ぎ、2026年の初冬の寒さがやってきた。美術大学の講堂で、蒼は相変わらず自分の世界に閉じこもっていた。クリエイティブなプロジェクトについて楽しそうに議論する友人たちを見て、彼女は翔太の励ましに満ちた日記のページを思い出した。心の中の空虚さは日に日に大きくなっていた。

十一月の雨の降る午後、彼女はこの秘密をもうこれ以上一人で抱えきれないと決心した。

北府中駅近くの馴染みのカフェに座り、蒼はテーブルの上にスケッチブックを開いた——その中には、あの日翔太に送った、メロンソーダと半分のハートを描いたしおりの原画が挟まれていた。彼女の目の前では、由佳と隼人が心配そうな目で彼女を見ていた。

「由佳、隼人くん……。二人に話したいことがあるの。もしかしたら二人は私が狂ったと思うかもしれないけど、これは事実なの」蒼は大きく深呼吸をし、茶色いノートのこと、十年の隔たりのこと、そして卒業式の午後に彼が来なかったことなど、すべてを震える声で語った。

最初、由佳と隼人は、まるでSF映画の脚本でも聞かされているかのように呆然と彼女を見つめていた。しかし、蒼が泣き出し、そのスケッチと日記のページを撮った写真を見せた時、彼女の目の中にある真実味が二人を納得させた。

「なんてことなの、蒼!」由佳は親友に飛びついて抱きしめた。「どうしてそんなに長い間、私たちに隠してたの? ずっと一人でこれに耐えてきたのね……。心配しないで、これからは私たちが絶対の味方だから! 絶対に翔太さんを見つける方法を考えてあげる!」

隼人は眼鏡を軽く押し上げ、考え込むように言った。「僕をあんなにきっぱりと振ったのは、心の中に他の誰かがいたからだって疑ってたんだ。まさかこんなに不思議で切ない物語があったなんてね。うちの学校の2016年の卒業生名簿を調べるのを手伝うよ」

そしてその日から、由佳と隼人は、どんなに希望が薄くても、翔太を探す蒼の旅における最も頼もしい味方となった。しかし、学校の同窓生ネットワークやSNSをどれだけ探しても、2016年に都立府中高校を卒業した鈴木翔太という人物は見つからなかった。

同じ頃、広島では、親友の健二——今は多忙な体育教師になっている——が、学校への通勤や時々あかりとドライブするために、ピカピカの大型バイクを購入したところだった。健二は、毎年三月になると翔太が落ち込んでいることをずっと不思議に思っていたが、翔太はただ寂しそうに笑って話題をそらすだけだった。

誰も知らなかった。「C棟」という名の時限爆弾が、静かに最後のカウントダウンを始めていることを。


お読みいただき、ありがとうございます!

いよいよ明日19時20分、最終話を更新します。

二人の物語の結末を、ぜひ最後まで見届けてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。