今回こそは釈明じゃない雑談配信
その日の夕方、俺は特別隔離棟の病室で、ベッドの上に座りながらスマホを眺めていた。
午後のワーウルフとの検証を終えたあとも、俺はまだここに隔離されたままだ。どうやら、身体の変化については分からないことが多すぎて、すぐに隔離を解除するわけにはいかないらしい。
とはいえ、ずっと検査ばかりというわけでもない。今日は今のところ特に予定がなく、暇を持て余していた。
「……退屈だな」
俺はそう呟きながら、病室の机に置かれた配信用の機材を見る。
今日の検証について、協会からは「詳細を話すのは控えてほしい」と言われている。検証の具体的な手順や施設の設備、モンスターの管理方法など、口外できないことはいくつもあった。
だが、検証そのものとは関係のない雑談まで禁止されたわけじゃない。自分の身体に起きたことも、話せる範囲でなら説明できるだろう。
それなら――。
「……まあ、雑談でもするか」
俺は機材を確認して、配信を開始した。
「よし。こんにちは」
数秒もしないうちに、コメントが流れ始める。
『お、今日は昼配信』
『こんにちは』
『珍しい時間だな』
『今日ダンジョンじゃないの?』
「今日は無理」
『体調悪い?』
「体調は問題ない。まだ隔離されてるだけだ」
『まだ病院なの!?』
『特別隔離棟だっけ?』
「そう」
『今日の検査?』
「まあ、それ」
『何かあったの?』
「その話をするための雑談だよ」
コメント欄が一気に加速した。
『なんだなんだ』
『何の検査?』
『また変身した?』
「……まあ、変身した」
『したの!?』
『また!?』
「今日は、モンスターを相手にしたとき、俺の身体がどう反応するのかを調べる検証をしてな」
『それ前から言ってたやつ?』
「そう」
『で、どうだった?』
「……ワーウルフと戦った」
一瞬、コメントが止まった。
次の瞬間――。
『は?』
『ワーウルフ!?』
『なんで病院でワーウルフと戦ってるんだよw』
『検証の規模おかしくね?』
「俺に言われても困る」
『協会何してんの』
「俺も最初はそう思った」
実際、普通ならそんな検証は簡単にはできないだろう。
ただ、俺の身体がモンスターの種類によって反応し、勝手に変化するのだとしたら、ゴブリンやスライムだけで確認して終わりにはできない。これからダンジョンへ戻れば、もっと強いモンスターと遭遇する可能性もある。そのとき身体がどんな機能を生み出すのか、そして俺自身がそれを扱えるのか。そこが分からないまま隔離を解除するほうが危険だ、と協会は判断したらしい。
今回のワーウルフは、Sランク数名からなる捕獲班が苦労して生け捕りにした個体だった。検証区画には強化された壁や複数の隔壁、異常があれば中断するための制圧装置も備えられていたという。
それでも、実際に対面してみれば、そんな準備だけで安心できる相手ではなかった。とにかく速く、こちらの動きを見極めては一気に距離を詰めてくる。新しく生み出された機能を試す余裕すらないほど、何度も攻め込まれたのだ。
事前に捕獲経緯を聞かされたとき、俺は研究員に思わず尋ねていた。
「……それ、本当に俺の検証に使って大丈夫だったのか?」
俺の問いに、研究員は少し黙ったあと、真剣な顔で答えた。
「安全を確保できると判断したからこそです。むしろ、あなたの能力が今後もモンスターとの接触によって変化する可能性がある以上、危険性を把握しないまま隔離を解除するほうが問題です。事実、今回も新しい機能が現れたでしょう」
「……まあ、それを言われると何も言えないな」
そう答えるしかなかった。自分の身体が何をするのか、俺自身にさえ分からないのだから。
『で、勝ったの?』
「勝敗はついてない。途中で検証が中止になった」
『そりゃそうだろ』
『無茶すんなよ』
「俺だって好きでやってるわけじゃないんだって」
俺は苦笑した。
『ワーウルフってそんなに強いの?』
「かなり速かった。今の俺じゃ普通に厳しかったな」
『元Sランクでも?』
「元、だからな」
『でも戦えたんでしょ?』
「そこは経験が残ってるから。ただ、身体のほうが思いどおりに動いてくれるとは限らなかった」
俺は少し肩をすくめてから、戦闘中に起きたことを話し始めた。
「まず、変身したあとに背中と脚からブースターみたいなのが出た」
『また生えたの!?』
『ブースター!?』
『もうロボじゃんw』
「俺に言われても困る」
『飛べるの?』
「飛ぶというより、加速する。ただ、細かい方向転換は苦手らしい」
『じゃあ強そう』
「直線では速かったよ。でも、ワーウルフが横へ避けたせいで、そのまま突っ込んでいって――」
『まさか』
「壁に激突した」
『wwww』
『やっぱりw』
『黒瀬さんwww』
「笑うなって」
『身体が勝手にブースター付けたの?』
「そう。俺が頼んだわけじゃない。どう使えばいいのかも分からないまま、身体が勝手に加速したんだよ」
『それは怖いな……』
「怖いよ。速くなったところで、使いこなせなきゃ意味がないからな」
ブースターは俺の意思で出したものじゃない。身体が勝手に作り出し、勝手に使った機能だった。自由に扱える日が来るのかどうかも分からない。
「そのあと、今度は右腕が変形して、砲みたいになった」
『またロボじゃんw』
『何を撃つの?』
「施設のコンクリート」
『は?』
「自分で壊した壁からコンクリート片や瓦礫を取り込んで、それを弾にしたんだ。圧縮した空気で撃ち出す仕組みらしい」
『どういう身体してんだよ』
『めちゃくちゃ物騒』
「俺が聞きたい」
自分の身体の説明をしているはずなのに、口にすればするほど、自分でもおかしなことをやっている気がしてきた。
『で、当たった?』
「……避けられた」
『またw』
「狙いはつけたんだよ。ただ、一発撃ったらすぐには次が撃てない。弾を作るのにも時間がかかるし、発射間隔も長いんだ」
『じゃあ速い相手には相性悪いのか』
「そういうこと。使いどころは考えないといけないな」
そこまで話したところで、配信画面の隅に通知が表示された。セナからメッセージが届いている。
『まだ配信してる? ちょっと話したいことがあるんだけど』
何だろうと思いながら返信する。
『してるけど、どうした?』
『配信を見つけて、少し聞いてたの。今日の検証の話をしてるみたいだから、私も入っていい?』
『いいよ。話せる範囲ならな』
すぐに返事を送ると、セナから了承のスタンプが返ってきた。
少し待つと、配信画面に別の映像が追加された。そこに現れたのは、見慣れた顔だった。
「こんばんは。星宮セナです」
『…………は?』
『セナち!?』
『えええええ!?』
『なんでセナちがいるんだよ!』
『黒瀬の配信にセナち!?』
『まさかのコラボwww』
さっきまでとは比べものにならない勢いでコメントが流れ始めた。
そりゃそうだ。セナは登録者数が百万を超える人気配信者で、探索者としてもAランクに認定されている実力者だ。俺の配信に突然現れたら、驚くやつも多いだろう。
「おいおい、コメントがすごいことになってるぞ」
俺が苦笑すると、セナも自分の画面を確認し、困ったように笑った。
「私もびっくりしてる。黒瀬さんの配信を見てたら、ちょうど今日の検証の話をしてたから」
「それで、何か話したいことがあるんだって?」
「うん。私、今日の検証を見ていたでしょ? 黒瀬さんが失敗したところばかり話しているから、実際にはどんな戦いだったのか、少し補足しておきたいと思って」
セナはそこで一度言葉を切り、真面目な表情になった。
「それに、私も気になっていることがあるんだ。あの二丁の銃について、黒瀬さんの話を聞いておきたくて」
なるほど。そういうことか。
俺の失敗談を訂正したいだけなら、わざわざ配信に参加する必要はなかったかもしれない。だが、彼女も今日の検証で見たものを気にしていて、俺が何を考えているのか聞きたかったのだろう。
「分かった。じゃあ、その話もするか」
『セナち、今日の検証を見てたの!?』
『ワーウルフと戦ったって本当?』
『黒瀬さん、セナちもいたのかよ!』
「うん。今日の検証には立ち会ってたよ。ただ、詳しい内容は話せないから、そのあたりは勘弁してね」
「そういうわけだ。話せる範囲でしか説明できないからな」
『了解』
『それでもワーウルフは気になるw』
セナはコメント欄に軽く手を振ってから、俺のほうへ視線を戻した。
「まず、あのワーウルフは本当に速かったよ。普通のモンスターと同じ感覚で相手をしたら危険だと思う」
『セナちが言うなら相当だな』
「私が見ていた範囲でも、黒瀬さんは何度も攻撃を受けそうになってた。新しく出てきた機能をすぐ使いこなせなかったのは仕方ないけど、相手がそれだけ危険だったことも忘れないでほしいな」
「……まあ、確かにそうだな。俺も必死だったから、自分がどこまで対応できていたかなんて、冷静には考えられなかったよ」
加速できるから速い相手にも対応できる、というほど単純な話じゃない。直線で速く動けても、相手が進路を変えれば追いつけない。身体が勝手に機能を生み出したところで、それを使いこなせなければ意味がないのだ。
『でもセナちなら勝てる?』
そんなコメントが流れると、セナは少し考えてから答えた。
「正直、今の私が一人で倒せって言われたら、かなり厳しいと思う」
『えっ』
『セナちでも?』
『Aランクでも厳しいのか……』
「攻撃を見て、ある程度避けながら戦うことはできると思う。でも、あの速度の相手に有効打を入れられるかは別の話だからね。こっちが一度でも動きを見誤れば、反撃を受ける可能性もあるし」
セナは慎重に言葉を選んだ。
「戦うなら、地形を利用するとか、援護を受けるとか、何かしらの工夫が必要だと思う。少なくとも、真正面から一対一で倒せると簡単に言える相手じゃないよ」
『Sランク複数人で捕獲したって話だしな』
『黒瀬さん、よく生きてたな……』
「俺もそう思う」
思わず本音が出た。
「実際、かなり危なかったからな」
セナは頷いた。
「黒瀬さんが生き残れたのは、これまでの戦闘経験も大きかったと思う。でも、身体が勝手に機能を作り出す以上、次も同じように戦える保証はないでしょ?」
「……ああ。俺が好きに出せるわけじゃないからな」
「そう。だから、今回の結果だけで次も何とかなるとは考えないほうがいいと思う」
厳しい言い方ではあったが、否定する気にはなれなかった。
そもそも俺の身体は、俺の意思を無視して変化している。今回はたまたま生き残れたとしても、次に同じような相手と遭遇したとき、何が起きるか分からないのだ。
「それで、もう一つ気になっているって話だけど……二丁の銃のことか?」
「うん。あの反応は、やっぱり普通じゃなかったと思う」
俺は両手に握ったときの感触を思い出した。右手に現れたのは、火炎爆裂弾を装填した大型のリボルバーマグナム。名前はイグニス。左手には、氷結拘束弾を装填した大型のオートマチックマグナム――グラキエース。どちらも人間が使うには大きすぎるほどゴツかったが、変身した俺の手には妙なほどしっくりとなじんでいた。
「砲もブースターも消えたあと、今度は右手にイグニス、左手にグラキエースが出てきたんだ。名前も弾の種類も、握った瞬間に頭に浮かんだ」
『名前まで分かるの?』
『属性付き二丁拳銃w』
「それも分からない。どうして名前が分かったのかも、何で俺の身体がそんな銃を作れるのかも謎だな」
俺はそこで一度息をついた。
「ただ、それを出した瞬間、ワーウルフの様子がおかしくなった」
『どういうこと?』
「それまでずっと俺に向かってきてたんだよ。ところが、二丁が出た途端、急に動きを止めた。耳を伏せて、毛を逆立ててさ。さっきまでの勢いが嘘みたいに、じりじり後ろへ下がっていった」
『怖がってる?』
「たぶん」
『何それ』
『その銃が怖かったの?』
「そう見えた。俺は銃を向けたわけでもないし、一発も撃ってない。それなのに、ワーウルフは明らかに怯えてたんだ」
セナも真剣な表情で頷いた。
「私も、そこが気になった。コンクリートの弾を撃ったときは、攻撃の軌道を見極めて避けていたでしょ? でも、二丁が出たときは違った。銃が出現しただけで動きを止めて、そのあとも距離を取ろうとしていたから」
『撃ってないのに怖がったってこと?』
『何か本能的に感じたのかな』
『モンスターにとって天敵とか?』
「可能性はあるかもしれない。でも、なんでそうなるのかは分からない」
ワーウルフは、俺が銃を下げても警戒を解かなかった。検証の中止が決まり、扉の向こうへ戻されることになったあとも、あいつは一度こちらを振り返り、俺の手元を気にしていた。
あの反応は、ただ武器を警戒しているというだけには見えなかった。
『その銃、撃ったらどうなるんだろうな』
「それも分からない。結局、一発も撃たなかったからな」
俺は二丁の銃を思い出しながら、少し言葉を選んだ。
「ワーボアと戦ったときにも思ったんだけど、俺の身体が作る武器って、単純に相手を傷つけるだけじゃないのかもしれない」
『どういうこと?』
「例えば、火なら熱、氷なら冷気だろ。弾そのものの威力だけじゃなくて、相手にとって不利な環境まで、そのまま身体に叩き込むような仕組みなのかもしれないってこと」
『なるほど』
「だから、シルバーバレットみたいなものなのかもな」
『銀の弾丸?』
『ワーウルフだから?w』
「いや、そういう意味じゃない。相手にとって嫌なものを、直接送り込む弾って意味でな。もちろん、実際に撃ってない以上、ただの想像だけど」
『でも、それだと銃が出ただけで怖がった理由は分からなくね?』
「……そうなんだよな」
思わず頷いた。
仮に俺の考えが正しかったとしても、弾を撃ち込んで初めて効果が出るなら、撃ってすらいない段階でワーウルフが怯えた理由は説明できない。あいつは銃口を向けられて恐怖したわけでも、攻撃を受けて危険を察知したわけでもないのだから。
「そもそも、あいつが銃の何を感じ取ったのかすら分からないんだ」
「今は無理に答えを出さなくてもいいと思う。協会の検証で何か分かるかもしれないし、分からないことを分からないままにしておくのも大事だから」
セナはそう言って、少し表情を和らげた。
「私も、今日のことをもう一度整理してみるよ。今の自分に何が足りないのかも含めてね」
「セナは十分強いと思うけどな」
「強さだけで解決できない場面もあるでしょ?」
その言葉には、冗談めいた響きはなかった。
俺は少し考えたあと、頷いた。
「……確かに、それはそうだな」
「できることを増やしておけば、いざというときに選べる手段も増えるでしょ? 今すぐ何かを変えると決めたわけじゃないけど、少し考えてみようと思う」
セナはそう言って、いつもの笑顔に戻った。
今すぐ何かを変えると決めたわけではない。ただ、今日の戦闘を見て、自分の力だけでは対処しきれない相手がいることを実感したのだろう。
その経験が、いつか彼女の選択につながるのかもしれない。
俺がそんなことを考えていると、コメント欄に別の話題が流れ始めた。
『ところで黒瀬さんって、今は神代さんに監視されてるんだよな?』
『セナちまで来たら神代さんはどうするんだw』
『Sランクの神代さんにAランクのセナち……黒瀬さん何者だよ』
『いや、セナちが男の配信にわざわざ出なくても……』
『今日の検証に立ち会ってたんだから普通だろ』
『仕事の話だろ。何言ってんだよ』
……おいおい。何だか、妙な方向に話が流れ始めたぞ。
セナもコメントを読んだらしく、一瞬だけ困ったような顔をした。
「えっと……神代さんは黒瀬さんの監視役だから、仕事として一緒にいるんだよね? 私は今日の検証を見て、話しておきたいことがあったから参加しただけだよ」
「そうそう。神代は俺の身体の状態を確認する役目があるし、セナは今日の検証を見ていた。理由があるから一緒にいるだけだ」
『そりゃそうか』
『まあ、そうだよな』
『またコラボして!』
『神代さんもそのうち来てほしいw』
どうやら、普通にコラボを喜んでいる視聴者も多いらしい。とはいえ、一部にはまだ納得していないコメントも混じっている。本人たちにはそれぞれの事情があるのに、外からは好き勝手に解釈されてしまう。人気配信者というのも、なかなか面倒な立場だな。
『仲良いなw』
『てぇてぇ』
さらにコメントが流れ、とうとうこんなものまで現れた。
『セナち、黒瀬のこと好きなの?』
「ちょっと待て。何でそうなるんだよ」
思わず画面に向かって突っ込むと、セナは一瞬きょとんとしたあと、困ったように笑った。
「いや、普通に話してるだけだからね?」
『残念w』
『早とちりしたわ』
「お前ら、好き勝手言いやがって……」
俺は頭を掻いた。セナも苦笑しているが、変に気まずそうにする様子はない。いつもの彼女らしい自然な態度だった。
『じゃあ今日のご飯は?』
「病院食」
『ツナマヨじゃないのか』
『黒瀬さんのツナマヨ成分が足りない』
「今、病院だぞ。けど、うまいよな、ツナマヨ。安いし」
『退院したら食え』
「それはそうする」
思わず笑ってしまう。こうしていると、いつもどおりの配信に戻ったような気がした。身体のことも検証のことも、まだ分からないことだらけだが、画面の向こうには変わらずコメントを送ってくれる人たちがいる。
「……まあ、今日はこんなところかな」
『もう終わり?』
『セナち、もう行っちゃうの?』
「私もそろそろ戻るね。今日は話せてよかったよ」
「おう。わざわざ来てくれてありがとな」
「ううん。私も気になっていたことを話せたし。それじゃあ、みんなもまたね」
セナが手を振ると、画面には彼女へのコメントが流れた。
『セナち、また来て!』
『コラボ待ってます!』
『お疲れさま!』
『黒瀬さんもお大事に!』
ゲスト画面が消え、いつもの配信画面に戻る。
「……さて、俺もそろそろ終わるか」
『ワーウルフの話もっと聞きたい』
『変身の話も』
『また配信してくれ』
「全部そのうち、な」
そう言って、俺はカメラを見る。
「今日は休む。明日も検査になるかもしれないけど、何か話せることがあればまた配信するよ」
『待ってる』
『無理すんな』
『お大事に』
『明日も見る』
「ありがとな」
俺は軽く手を振った。
「じゃあ、また」
配信を終了すると、画面が暗くなった。
「……ふう」
俺はベッドに身体を預け、今日のことを思い返す。
ワーウルフ。俺の身体が勝手に生み出したブースターと砲。そして最後に現れた、二丁の巨大なマグナム。
とりわけ、ワーウルフが銃を見た途端に怯えたことが頭から離れなかった。俺が何もしていないのに、あいつはまるで正体を知っているかのように、二丁の銃を恐れていた。
「……本当に、俺は何なんだろうな」
小さく呟く。
答えはまだ出ない。けれど、あの二丁の銃がただの武器ではないことだけは、少しずつはっきりしてきた気がした。




