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国外追放されたお人好し勇者と魔王の子  作者: 十兵衛


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第六話 ルリア



 コンコンと、フラウのボロ屋を誰かがノックした。

 といっても、フラウの家を訪ねるのは道に迷った旅人か野盗。あるいは、アストリアから派遣された騎士くらいのものだった。そして、今回に限ってはその訪問者もある程度は絞られていた。


「ルリアさんですか? それとも、まさかカロンさん?」


 フラウは殴られた右頬を手で抑えながら答えた。


「ルリアです。先程の件について確認したいことがあります」


「分かりました。だけど、能力は解除してくださいね。あと、武器もしまってください。リリィが驚くので」


 そう言ってからフラウは戸の方へ歩いて行った。その様子を見ていたリリィは、先程とは打って変って強気な表情で扉を睨んでいる。


「こんにちは、ルリアさん」


「挨拶は不要です。中に入らせて貰います」


 戸の向こうには銀髪の少女が立っていた。年齢は十八くらいだろうか。凛とした佇まいの中に少しだけあどけなさが残っている。身長が高く、髪の毛は肩の辺りで切り揃えられていた。


「あなた、名前は?」


 ルリアは真っ直ぐにリリィの元へ歩いていき、冷たく問いかけた。


「ルリアさん、ちょっと待って下さい。話なら僕が――」


「あなたには聞いていません。黙っていて下さい」


 フラウが慌てて割って入るが、ルリアはそれを鋭い言葉と視線で封殺する。


「ヴァンシエト・リリシア」


 フラウの心配を他所に、リリィは息を吸うように偽名を名乗った。


「出身は?」


「ケオロス」


「先程の話では彼に父親を殺されたと言っていましたね? 差し支えなければ詳しく聞かせて貰えませんか?」


 再びフラウが割って入ろうとしたが、リリィの視線がそれを止めた。


「三年前、勇者フラウが私の町に来た、じゃなくて、来ました。目的は、魔族の侵攻を止めるため、です。それで、王国の兵士だった私の父も勇者フラウと一緒に戦場に送り出されました。だけど、こいつは私の父を見殺しにしたんです。数百人といた王国の兵士が皆、その命を賭して戦ったというのに、勇者フラウはただ一人だけおめおめとケオロスに帰って来たのです」


 リリィはそこまで言うと、大きな瞳を潤ませた。


「嘘を吐いてるようには、見えませんね。それに、大した反応も無いようです」


 ルリアが小さく言うと、彼女の右手の薬指に青い宝石が装飾された指輪が姿を現した。フラウはその指輪に見覚えがあった。たしか、魔力検知の魔道具だ。


「約束と違いますよ。能力は解除して欲しいと伝えたと思うんですが」


「すみません、これも仕事ですので」


 ルリアは悪びれた様子も無く淡々と言うと、フラウに向き直った。


「この子どもが言ったケオロスでの事件は私の記憶にもあります。どうしますか、この子どもは王国の方で引き取りましょうか」


「いえ、大丈夫です。話したい事もありますし、彼女が納得するまでここにいて貰います」


 フラウはリリィの顔色を伺いながら言った。どうやらリリィもこの提案に文句は無いようだ。


「わかりました」


 ルリアはそう言うと、再びリリィを見た。その表情は先程よりもやや柔らかい。


「先程はすみませんでした。驚かせてしまいましたね」


「いや、別に」


 リリィは少し顔を引きつらせていた。この短い時間でルリアに対して苦手意識がついてしまったのかもしれない。


「彼を憎む気持ちは分かります。私たちのような力を持たない者から見れば、彼は全知全能に見えますからね。でも、彼は人なのです。それを分かってあげてください。そして、いつの日か彼を許してあげてください」


 ルリアはそう言うと、リリィの髪を優しく撫でた。

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