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第一話 青年



「あのー、ルリアさん、この赤いキノコって食べれるんでしょうか」


 薄暗い森の中、竹籠を背負った青年が上空に向けて声を発した。青年の周りには人影は無く、彼が見上げた先にも人影はなかった。しかし、


「話しかけないで下さいと何回言えば分かるんですか。私は物言わぬ王の目なのです」


 木々の隙間から少し怒った声が返って来た。青年はそのやり取りが楽しくて仕方がないのか「あはは」と笑いながら言葉を返す。


「すみません、ルリアさん。そういえばそうでしたね。忘れてました」


「ほんと、あなたみたいな間の抜けた人が勇者だなんて、私は未だに信じられません。それなのにカロン様は絶対に目を離すなって言うし」


「ルリアさん、物言わぬ王の目、"物言わぬ"王の目ですよ」


「黙って下さい! さっさとその毒キノコでも食べて死んで下さい!」


 怒鳴り声が青年のすぐ後ろから発せられた。しかし、そこに人の姿は無い。


「ありがとうございます、ルリアさん。これ、毒キノコだったんですね」


 青年はゆっくりと振り向き、誰もいないはずの空間に向けて礼を言った。

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