第278話 最終決戦②
分身はフリッカー・スナイプを当てれば簡単に消える。手ごたえは風船のようだ。
だが数は122。しかもシラホシの脳波で動いているため、動きも個々で『思考』を持っている。全てを捌くことはできない。何体かは拳レーザーの弾幕をすり抜ける。
「……シラホシは残像と位置を入れ替えることができる。まさかとは思うが……!」
そのまさかだった。
PPPの背後を取ったシラホシの分身が、剣をPPPに当てる刹那。シラホシの本体が消え、分身の瞳に光が入った。力の乗った斬撃がPPPのウィングを刻む。
「やはりそうか!」
ウィングの左羽2枚が斬り落とされた。スラスターの性能が2割減少する。
「この分身全てと自在に位置を入れ替えることができるわけだ! しかも……」
実体が移動したのに、分身が消えていない。
残像の時と違い、分身との位置交換は分身を消費しない。
「分身は消えないと。ははは! 面白いな! お前の∞アーツも!!!」
2人は小細工無しの戦いを始める。互いに真っすぐ前に飛び、剣と拳を交える。
宇宙を飛び回り、激しい格闘戦を繰り広げる両者。
PPPは絶妙なスラスター捌きで無数の分身に対しベストな間合いをキープ。シラホシ本体をいなしながら、ついでと言わんばかりに分身を全て殴り倒す。
「なんだ?」
PPPは寒気を感じ、距離を取った。
シラホシの両手の双剣が、白光を発した。
「私の∞アーツ、ゴッド・アクセルは、私の脳波数値が一定量上がる毎に新たな能力を解放する」
シラホシは戦闘時間が長い程能力を上げる『スロースターター』の特性を持つ。時間が経過する程に反射速度・思考速度・思考深度・テクニック・脳波全てが上昇する。
そしてゴッド・アクセルは、使用者の脳波数値が高い程に新たな力を解放する。
つまり、時間経過に合わせてシラホシは新たな武装・能力を得る。
戦う程に、加速していく。
「神剣」
シラホシは双剣を振り下ろし、Xの剣閃を作る。PPPは剣閃の直線から逃れる。PPPの背後の星が――Xに切断された。
「能力は、斬撃範囲の拡張」
PPPは今の破壊力を見せつけられても物怖じせず、シラホシに近づく。
「近づけば意味は無いな!」
「あなたの拳も同じでしょ?」
PPPは拳を引き絞る。
「馬鹿が! 近い方が威力は出る!」
「それはこっちも同じ」
白銀の星と、黄金の星が、宇宙の闇を裂いて縦横無尽に動き回る。
シラホシは斬り、PPPは殴る。両者の剣と拳がぶつかる度、余波で周囲の岩塊が吹っ飛ぶ。
これが∞アーツを所有する者同士の戦い。
両者の衝突に、周りの物質は耐えることができない。
これだけの高速戦闘、目で追うことができる者はごく1部。身を投じることができるのはさらに少数。――この激しい戦いの中、笑うことができるのはゲーム内に五指と居ないだろう。
「ははははは! 楽しいなぁシラホシ! お前も私と同じ性質だろう!」
PPPは大きく笑う。
一方でシラホシの口元も緩んでいた。
「常に頂点で在れと、プライドが叫ぶ! だが、己が野生はこう叫んでいるのさ! 絶対的なクイーンなど、至極つまらんとなぁ!!!」
PPPの左拳が、シラホシの右手の剣と衝突。宇宙を震わせ、両者は衝撃の余波で吹っ飛ぶ。
「好奇心が叫ぶ! 『自分の全力がどれ程か教えてくれ』と! しかし、全力など1人で出せるものでは無い。相手が必要だ。全力を出せる相手が!」
両者は加速し、剣と拳を合わせる。
互いの強さを確かめるように合わせる。
「お前は何を望みこの宇宙に来た! 現実では満たされぬから、この宇宙に潤いを求めたのだろう!? 違うかぁ!!!」
両者の魂が燃え上がる。
「絶対的、ゆえに渇く! 魂が乾く! この渇きを潤しにこの世界に来たのだろう!? 私と同じでなぁ!!」
「だとしたら?」
「ようやく念願叶うというわけだ。今日、ここで!」
PPPは後ろへ飛び、距離を取る。シラホシは距離を取るPPPに対し、無数の斬撃を飛ばし、追撃する。PPPは左拳の連打で斬撃を打ち落とす。
「これで終わり」
シラホシはまた大量の分身を展開した。
中距離での分身の展開。PPPはあっという間に分身に囲まれる。PPPはジャブの連打と、ジャブから放つ散弾で正面の分身を瞬く間に排除。しかし背後を1体の分身に取られる。シラホシはPPPの背後の分身と入れ替わり、双剣を振るう。
「終わりはお前だ」
PPPが、黄金のオーラを纏った。
「!?」
シラホシの双剣がオーラに弾かれる。
「これが我が∞アーツの秘奥、『絶光』!!」
生きている分身は居ない。飛ぶことはできない。分身を生成している間は幻影粒子は分身に注がれるため、残像も無い。
PPPは剣を弾かれて怯んでいるシラホシに迫り、右拳で胴体を捉える。
「効果は、数秒間の『無敵』だ」
右拳の先から黄金のレーザーが放たれた。





