第211話 オフ会(?)
さ、最悪だ。
サングラスを掛けた不審者に絡まれてしまった!
「あ、あの、正門から入った方がよろしいかと思いますぅ……」
「気を遣ってこっちから入ってるんだって。ほら、このチケット。自分の名前を書かなくちゃいけないじゃん? 絶対これ渡した時騒ぎになるじゃん。今なら驚くのはキミ1人で済むじゃない」
なにを言っているのかよくわからない……。
「よっと」
不審者は門を飛び越え、僕の前に着地する。
「そそそ、そういうのダメだと思うんですけど……!」
ていうかこの人、身体能力高い……。
に、逃げよう。僕では対処できない問題だ……!
「なんで臨戦態勢? ちょ、落ち着いてよ。この顔見たら事情わかるからさ」
不審者は帽子とサングラスを外し、顔を見せる。
す、凄い……アイドルみたいに綺麗な人だ。
だけど……なんか、危険な香りがする。蜜のような香りの中に危険なものを感じる! 小動物の勘が近づくなと言っている!
「え? まさかわからない!? この私を知らない女子高生だってぇ!?」
あれ? この人どこかで……。
「あ!」
「お? ようやくわかった?」
思い出した! この人は……!
「こ、この前見た映画で、千尋ちゃんに食われていた主演の――」
言葉を言い切る前に頬っぺたをつままれてしまった。
「ひたいっ! ほっへたつままないでくだはい~~~~っ!?」
「誰が誰に食われてたってぇ~~~? あっちは本業の女優で、こっちは副業の女優。多少の差はあって当然でしょうが~。まぁいずれは抜かしてやるつもりだけどねぇ~~~~!!!」
「ひ~た~い~!」
「んん!?」
不審者の女の子はパチン、と僕の頬から手を放し、考え込む。
「ちょっと待った。キミの声、聞いたことがある」
不審者の女の子は僕に近づいてきて、頬を両手でサンドしてきた。
「むぎゃっ!?」
「確信。やっぱりその声……シキちゃんでしょ!」
「え……?」
「ほらツバサだよ。神灰ツバサ!」
あ――
「あああああああっっ!?」
そういえば同じ声だ! 同じ雰囲気だ!
いつものツインテールじゃないからわからなかった。
「へぇ~。シキちゃんってリアルだとこんな感じなんだ~」
ツバサさんは両手で長方形のフレームを作り、僕をフレームに収める。
「ん~? 髪型は全然違うけど、顔立ちはほぼ同じだ。前髪邪魔じゃない? なんで切らないの?」
「ま、前髪あると、緊張がちょっと薄まるので……じゃなくて、そんなことどうでもよくて。つ、ツバサさん……なんでここに?」
「共演者の活躍を見に来たんだよ。良いトークのネタになりそうだし、暇だったからね。シキちゃんはここの生徒なんだ?」
「は、はい。そうです」
「えぇ!?」
背後から悲鳴に似た声が聞こえた。
振り返ると、さっき挨拶した梓羽ちゃんの友達……えっと、虎福院ちゃんだっけ? が立っていた。
「シキ……!? いま、シキって言った!?」
虎福院ちゃんは手に持った未開封の缶ジュースを落とす。
「はい……?」
なぜ虎福院ちゃんが驚いているのかわからない。
「あ~、その声、ニコちゃんでしょ。ましゅまろスマイルの」
「アンタはツバサね。まぁアンタはすぐわかるわ」
え――
「ええぇ!!? に、ニコさん!?」
「その反応、その声、その呼び方、そのムカつく困り顔……やっぱり、アンタがシキ……」
ニコさんは全身に汗をかく。運動している僕より凄い発汗量だ。
顔も真っ赤で、熱中症になったのかと疑いたくなる程だ。
「え? じゃあ、シキが梓羽の姉……? 私が探していたのは、シキ……? あれ、あれれ……それじゃ、それじゃ……梓羽がゲームを横流しした相手が、シキ!?」
「え……あ!?」
ニコさんは所属している学校の生徒会長に恋心を抱いている。
で、その人にゲームを渡して、それを姉に横流しされたんだよね。
……あれ?
「アンタがゲームを始めた時期って、そういや私が梓羽にゲームを渡した時期と同じ――」
梓羽ちゃんと、ニコさんは同じ中学。梓羽ちゃんは、生徒会長……あれぇ!?
「じゃあ、ニコさんが好きな人って……!?」
「わああああああああああああっっ!!?」
「んぐぅ!?」
僕は虎福院ちゃんもといニコさんに口と鼻を両手で塞がれる。
「べ、別に恋じゃないって前にも言ったでしょ!」
「もがっ!? もががぁっ!!?」
僕は大きく頷く。
「ね~、なになに? ツバサにも詳細聞かせてよ。なんか面白い話してるでしょ。ねぇねぇ」
「うっさい! あっち行ってろ!」
(し、しぬぅ……!? 窒息死……す……る……)
---
奇妙なことになった。
「日本って狭いねぇ」
「ほんっと、狭すぎっ! ありえないっ!」
「あはは……」
僕達は同じテントで競技の進行を見ていた。テントの下、用意された鉄パイプの椅子に並んで座っている。
まさかリアルのツバサさん、ニコさんと体育祭を見ることになるとは。一体誰が予想できたことでしょう。
「てか聞いたよシキちゃん……じゃない。こっちだと名前なんだっけ?」
「レイです。古式レイ」
「レイちゃん。シーナちゃんに宣戦布告されたんでしょ?」
この前の通話のことを言っているんだろうね。
「そんな大それたものでは……」
「敵に手の内明かすとか、アイツも馬鹿よね」
「えっと、虎福院さんも参加するんですよね?」
「ニ叶でいいわよ」
じゃあニ叶さんと呼ぼう。
敬語のままでいいよね。こっちの方が楽だし、ニ叶さんもあっちの話し方になってるし。
「アンタと戦える良い機会だと思ってね。アンタ、チーム作る気配無いし。代理戦争逃したらもう戦えないと思ってさ」
「あ、チームなら作りました」
「え? マジで?」
「へぇ~。思いがけず良い情報♪ レイちゃんがどんなチームを作ったか、ツバサ気になるなぁ~」
ツバサさんは僕の右腕に胸を当ててくる。
「あ、あの……!」
「私も気になるわね」
左からは二叶さんが迫ってくる。
「えぇっと……今はまだ言えません。訳アリでして!」
「なぁーんだ。残念」
ツバサさんは僕から離れ、肩を竦める。
「早く上がってきなさいよ。ぶっ飛ばしてやるから!」
「が、頑張ります。でもまずは代理戦争ですね」
僕は恐る恐るツバサさんの横顔を覗く。
「あのぉ……ツバサさんは……ま、まさか、出ませんよね?」
「出ないよ。開会式ではちょっと歌ったけど、それで終わり。シーナちゃんが指揮するチームとか、絶対嫌だしね」
相変わらず素直じゃないなぁ……。
「でも、ツバサの代わりに厄介なのが出てくるよ」
「厄介……?」
「あ~、アイツね。アレは厄介だわ」
「え、その人の名前は?」
あのツバサさんとニコさんが厄介と言うプレイヤー、気になる。相当な強敵だろう。
2人は同時に口を開く。
「ペテル」「ガーネット」
あれ? 同時に違う名前を言われた。
「へぇ。ニ叶ちゃんはそっちの方がキツいんだ」
「アンタはペテルの方なのね。まぁ、ウザさで言ったらあっちが上か」
「えっとぉ……?」
どちらも知らないんですが……。
「シキちゃんはさ、去年のアンリミテッドシリーズの優勝チームは知ってるでしょ?」
「ツバサさんやシーナさん、六仙さんがいたユグドラシルですよね?」
「そ。で、準優勝がレッドプラネットっていうチームだった。最後はユグドラシル対レッドプラネットの対決になってさ、ギリギリの戦いだったよ。間違いなく、ツバサ達のライバルはレッドプラネットだった」
ツバサさんは僕を横目で見る。
「ガーネットちゃんとペテルちゃんはそのレッドプラネットの所属プレイヤーだよ」
元ユグドラシルの人達は皆さん一流だ。その人達が苦戦するなんて……。
「ふふっ! 懐かしいわね、あの戦い。中継で見てたわよ」
二叶さんが笑うと、ツバサさんはムッと唇を尖らせた。
「決勝戦のアンタ、傑作だったわね。足止めくらってエリア外ダウン……!」
「なぁに? 喧嘩売ってるのかなぁニ叶ちゃん?」
エリア外ダウン? ツバサさんがそんなミスをするなんて信じられない……。
「あの、どちらかはレッドプラネットのエースだったりするんですか?」
「ううん。ガーネットちゃんはレッドプラネットのナンバー3、『花火師』の異名を持つボマー。ペテルちゃんはレッドプラネットのナンバー5、『仕事人』の異名を持つ、ツバサに次ぐガードナーだよ」
「なんか凄そうなボマーに、ツバサさんに次ぐガードナー……」
これに加えてシーナさん、ニコさん、クレナイさんか……。
「ペテルちゃんはキミにとっては本当に面倒な相手かもね」
「な、なぜですか?」
「ちょっとアンタ……それ以上は」
フリーパーチの選手であるニコさんは、自チームの情報を漏らそうとするツバサさんに良い顔をしない。
「どうせ調べればわかることだよ」
「……程々にしなさいよ」
「はいはい。じゃあちょっとだけ。ペテルちゃんにはねぇ、欲がない。それが非常に厄介」
「欲がない……?」
「そ。たとえ餓死寸前で目の前に極上の焼肉があっても、指示が無ければ飛びつかない。『無欲の強さ』……ツバサはあの子からそれを学んだ。キミとは真逆の精神性かもね」
あまり言っている意味がわからない……。
「あとは戦って確かめてね。きっとシーナちゃんはシキちゃんにペテルちゃんをぶつけると思うから」
「はい。そこまでね。代理戦争の話はおしまい」
ニコさんが話を打ち切る。すると、
『次は2年生による借り人競争です。選手の方は東門に集まってください』
とアナウンスが流れた。
「あ、これ僕出るやつだ!」
いつの間にか時間が過ぎてる!
「じゃあね~。応援してるよ」
「私は梓羽のとこに戻るかな」
「は、はい! それではまた!」
僕は慌ててテントから飛び出し、門に向かう。
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